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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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ラウリル硫酸ナトリウムはどのくらい洗浄力が強いのか
浅葉さんからご質問をいただいたのですが,いつものように長くなったのでエントリにします。

> 最近こちらのブログにたどり着いたのですが、科学屋さんとして意見を伺えますか。

科学屋と言うほど知識の幅が広くない単なる化学屋ですが,がんばって回答させていただきます。

> シャンプー解析ドットコムの管理人さんは、ラウリル硫酸ナトリウムがベースのシャンプーは洗浄力が強すぎるのでよくないとおっしゃっています。これを示すような実験結果などはあるのでしょうか?

この手の話で「ラウリル硫酸ナトリウムは洗浄力が強い」根拠として良くあげられているのが,ラウリル硫酸ナトリウムが石油系の汚れを取り除くためにも使われている,と言う話です。こんな話を聞くと「そんなすごい汚れを取り除けるんだから,なんて強力な洗浄力を持っているんだろう。きっと皮脂なんてあっという間に全滅だ!」と思ってしまいそうになります。

しかし,忘れてはいけないのは

洗浄力は汚れと下地の性質により大きく異なる

という事実です。

ですから,一概に工業製品(=金属表面)に付着した油汚れを落とす能力が高いからと言って,皮膚上の汚れに対して高い洗浄力を発揮するとは言い切れないのです。この辺は,先日の歯磨きのケースでも出てきた「(伝える側にある何らかの事情により)あえて伝えられていない事実」です。

さて,このような事実をふまえた上で,一般的な洗浄能力についてもう少し考えましょう。洗浄という作業において界面活性剤が重要な働きをするのは,「浸透」「拡張」「分散・乳化・可溶化」などと言われております。今回の問題では皮膚上の汚れを落とす場合に皮脂を落としすぎるかどうかがポイントだと思いますので,主に汚れを固体表面(今回の場合は皮膚にあたります)から汚れを分離する「拡張」過程に焦点を置きます。ちなみに「浸透」は布の内部などに洗浄液が染みこんで内部の汚れに接触する過程,「分散・乳化・可溶化」は一度固体表面から引きはがした汚れを洗浄剤ミセル中に取り込んで再付着させない過程を指します。

さて,本題に戻ります。「拡張」過程とは具体的にどういう状況かというと,下地と汚れの間に界面活性剤が入り込み,汚れと洗浄液の間の界面張力を低下させる過程です。界面張力というのは,それぞれの物質の間に存在する「接触面積を小さくしようとする力」を指します。つまり,二相間の界面張力が小さくなるということはその両者が「よりなじみやすくなる」ことになり,この界面張力を低下させる働きが強いことを「界面活性能力が強い」と表現します。

洗浄液と汚れとの間に存在する界面張力が,汚れとその汚れが元々ついていた下地との間の界面張力よりも小さくなると,汚れは下地上から引きはがされて洗浄液の方に引きずり出されます。引きずり出された汚れは,界面活性剤が作るミセルの中に取り込まれ,洗浄液中に拡散されます。これが,大ざっぱな洗浄のシステムです。

さて,ここでラウリル硫酸ナトリウムとステアリン酸ナトリウム(石鹸の主成分)界面活性能を比較してみましょう。いろいろな条件にもよりますが,実は界面活性剤単独を比較すると,ラウリル硫酸ナトリウム水溶液よりもステアリン酸ナトリウム水溶液の方が小さな表面張力を持ちます

ついでに言うと「拡張」過程の次のステップである「可溶化」の能力もアルキル鎖の長いステアリン酸ナトリウムの方が大きいことが期待できますし,可溶化に必要なミセルのでき易さを示すCMC(臨界ミセル濃度)もステアリン酸ナトリウムの方が圧倒的に低い値(ラウリル硫酸ナトリウム 7~8 mM, ステアリン酸ナトリウム 0.34 mM)を示します(参考資料:新版 界面活性剤ハンドブック)。ということで,ステアリン酸ナトリウムの方がラウリル硫酸ナトリウムよりも,秘める可能性としてはより強い洗浄力が期待できるのです。

もちろん,これらのパラメータはかなり理想的な条件での測定値であり,実際洗浄が行われる場面でこのような能力をフルに発揮できるかどうかはわかりません。また,共存する「ビルダー」と呼ばれるものの存在により,洗浄力が飛躍的に増大することも良くあります。というか,様々な状況に置ける洗浄力の強弱はビルダーの種類や量に依存すると言っても過言ではありません。

たとえばこのような実験結果があります。こちらでの結論は「合成洗剤と石けんの比較は無意味。異なる種類の合成洗剤の間の洗浄力の差や異なる種類の石けんの洗浄力の差の方が、合成洗剤の平均的な洗浄力と石けんの平均的な洗浄力の差よりも大きいため。」というものです。ここで使われた合成洗剤の成分について詳細はわかりませんが,中性の合成洗剤であればラウリル硫酸ナトリウムが使われている可能性は高そうです。

つまり,これはどういうことかというと

主原料の界面活性剤の種類だけで製品全体の洗浄力は類推できない

ということです。

ラウリル硫酸ナトリウムを使用した洗剤の方が石けんよりも広く利用されているのは,「洗浄力の強弱が水の状態に依存しない」ことが大きな理由となります。ご存じの通り石鹸は硬水中ではほとんど洗浄力を発揮しないのに対し,ラウリル硫酸ナトリウムなどは硬水中でも十分な洗浄力を発揮します。また前述の通り金属表面の油汚れに対してもラウリル硫酸ナトリウムは大きな効果を発揮するでしょう。

しかし,人間の皮脂汚れであれば,条件さえ整えば石鹸の洗浄力も充分大きいです。特にタンパク質汚れなどは場合によってはアルカリ性の石鹸の方が強いかもしれません。要するに洗浄力の強弱なんて言うものは使い方しだい,対象しだいと言うことです。

もしどうしても気になるようであれば,シャンプー解析ドットコムの管理人さんにそのような記述をした根拠を伺った方が話が早いかもしれません。もし教えていただけた場合には,私にもその内容を教えていただけると助かります。

私の力不足で,大した回答が出来ずに申し訳ありません。他にも何かあればお気軽にどうぞ。
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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 16:00:56 | Trackback(0) | Comments(4)
コメント
専門家も認める?石油系界面活性剤の害
ぷろどおむさん、こんにちは。

石油系の合成界面活性剤(いい加減こういう適当な名前の付け方はやめてもらいたいんですけどね--;)は肌に良くないという話は自然派の方々の中では一般的な話かと思うのですが、そのことについて調べていたらリーブ21の体験談のページで以下のような記述を見つけました。

>石油合成系の界面活性剤が人の体に及ぼす影響は、百害あって一利無しといったことが、多くの学者によって指摘されています。
http://www.datumo.jp/taiken-shampoo.html

「多くの学者って誰じゃい」といちおう質問してきました(笑)が、こういうことって言葉を濁されることも多いので他の専門家の方にお伺いしようと思いまして^^
この記事の内容は理解したうえでさらに何かご存知でしたら教えてください、という旨のちょっと困ったさんな質問ですので真剣に探さなくても結構です。ただ、あればあったで知っておきたいので質問しました。

すみませんが何か情報をお持ちでしたらお願いします。
2009-06-01 月 15:16:52 | URL | むいみ [編集]
Re: 専門家も認める?石油系界面活性剤の害
むいみさん,いつもコメントありがとうございます。
最近仕事が立て込んでいて,コメント遅くなってすいません。

しかも,大変申し訳ありませんが,ご希望に沿うような情報の持ち合わせもございません。

個人的には,「人の体に及ぼす影響」なんて曖昧な境界条件で話をする学者は,その分野の専門家ではないんじゃないか,とか思ってしまうわけで,「学者」とか「専門家」とかいうキーワードを信用する人は世の中まだまだ大岩家なんですが,「どの分野」の学者で「何の」専門家なのかがわからなければ,信用出来ないのは当たり前なわけです。

というわけで,何のお役にも立てず申し訳ありませんが,この辺でご容赦ください(^^;
2009-06-09 火 14:11:46 | URL | ぷろどおむ [編集]
シャンプーの「原液」をマウスの皮膚に塗布して「放置」した実験なら、昔学研から出ていた雑誌ウータンに載っていた記憶があります。
シャンプーと石鹸の比較記事の一部で、その頃のウータンは色々な危機を煽っていたので、いかにシャンプーが危ないかを言いたかったのでしょう。
もう15年ぐらい前の事です。

まあリーブ21自体、
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1243052264
こんな会社ですから。
2009-06-09 火 15:43:38 | URL | 元洗剤屋 [編集]
>ぷろどおむさん

いえいえ大丈夫ですよ。
リーブ21の方からもまだ返事をいただいていませんし、そもそもそんな危険性があったら界面工学や生理学あたりの専門家からクレームがついていそうです。
返事をいただいたら記事を書く予定ですのでそのときはまたお知らせしますね^^


>元洗剤屋さん

>シャンプーと石鹸の比較
たとえばこれですね。
http://www.asyura2.com/kaminoke.htm
根拠がこれだったら本当にがっかりです。

波動系ニセ科学であり合成物批判で……何か同じところに落ち着くような遠心力でも働いているんでしょうか…。
2009-06-09 火 16:40:48 | URL | むいみ [編集]
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