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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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ラウリル硫酸ナトリウム「取り扱い上の注意」の読み方
さて,突然ですが,以下の文章はある試薬についてのMSDS(製品安全データシート)の内容を抜き書きしたものです。みなさん,これはいったいどんな試薬について書かれた文章だと思いますか?

2, 危険有害性の要約
【危険有害性情報】
●飲み込むと有害のおそれ(経口)
●軽度の皮膚刺激
●眼刺激
【注意書】
【救急処置】
・気分が悪い時は、医師に連絡すること。
・眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
・眼の刺激が続く場合は、医師の診断/手当を受けること。
・皮膚刺激が生じた場合、医師の診断/手当てを受けること。
・取り扱った後、手を洗うこと。
4, 応急措置
○ 吸入した場合:新鮮な空気と安静。必要な場合には人工呼吸。医師に連絡。
○ 皮膚に付着した場合:汚染された衣服を脱がせ、水と石けんで皮膚を洗浄。医師に連絡。
○ 眼に入った場合:先ず数分間、多量の水で洗い流す(できればコンタクトレンズをはずす)。医師に連れて行く。
○ 飲み込んだ場合:意識あるなら、口をすすぎ、2-4杯の牛乳か水を与える。意識なければ、何も与えない。医師に連絡。
8, 暴露防止及び保護措置
通気:換気装置を用いて、ミスト、ほこり、蒸気濃度を低く保つ。
暴露限界:規制値は設定されてない
設備対策
局所排気装置
保護具
- 防塵マスク。送気マスク、空気呼吸器等。
- 不浸透性保護手袋。
- 安全ゴーグル。
- 不浸透性保護衣。
13, 廃棄上の注意
中身及び容器の廃棄は、都道府県知事の許可を受けた産業廃棄物の処理業者に依頼する。


なんか怖いですよね。保護具をつけて扱えなんて指示があるんですから,これは相当危険そうな試薬のような気がしますね。いったい何なのでしょう。

答えは
「塩化ナトリウム(食塩)」
です。

なんで塩化ナトリウムなんて食卓にすら普通に出ている物質ですら,こんな事が書かれているのでしょうか。

あえて身も蓋もない言い方をすれば,この辺りの記述については「お約束だから」というところです。以前にも書きましたが,この世のありとあらゆる物質には人体や健康に対する許容量というものが存在し,塩化ナトリウムや水のように,人間が健康を維持する上で必須の化学物質であったとしても,過剰量摂取することにより健康を害する可能性があるからです。

このことについては,これまでもこのブログの中で再三繰り返して述べてきました。また化学実験に用いる以上,保護具を身につけて実験を行うのは最低限の常識であり,適切な保護具も身につけずに実験を行うなんてのは言語道断なわけです。

と,言ったところをご理解いただいた上で,こちらをご覧下さい。そうです,以前「「危」の標識が意味するところ」のお話の際にご紹介させていただいたページと同じサイトです。

「経皮毒のラウリル硫酸ナトリウム」と題して,いかにラウリル硫酸ナトリウムが危険な物質なのか,と言うことを訴えていらっしゃるのですが,どうも経皮毒の恐ろしさを訴えたいという思いが強すぎるあまりに,ちょっと勇み足が多すぎるようです。

というわけで,一つ一つ解説を。

たとえば、大学の研究室などには原液の入った容器がカギをかけて保管しています(写真が見づらくすみません)。

戦後まもなくとかならいざ知らず,今どき試薬庫に鍵をかけずに保管している研究室なんてありません(^^; たとえ中身が「塩化ナトリウム」や「グルコース(ぶどう糖)」であっても,です。

容器をよく見ると、ばってんマークが付いています(容器によってはどくろマークになります)。

どくろマークの時は違う意味ですが,GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)という国際ルールでは「!」マークです(参考)。実はこのマークはエタノールの瓶にもついてます(^^; まぁ,その程度の意味と言うことです。

取り扱い上の注意として、“・・・防毒マスク、保護手袋等を着用して下さい。・・・”とはっきり書かれています。

これに関して過剰反応しすぎだと言うことは,塩化ナトリウムのMSDSをご覧いただければご理解いただけるかと思います。

動物実験では受精卵死亡の報告がある。

受精卵なんて不安定な状態の細胞をアルカリ性溶液に界面活性のある溶液と接触させたら,そりゃ死んじゃうでしょう(^^; 界面活性+アルカリ性水溶液である石鹸水溶液でも同じ結果が得られると思います。

(追記:090204 ラウリル硫酸ナトリウム水溶液の液性はほぼ中性であるpH 6~7程度です。アルカリ水溶液になると言う記述は私の事実誤認でしたので,訂正いたしました。)

トリエタノールアミンには動物実験で発ガンが見られた。

なんでここでトリエタノールアミンなんて全く構造が違う上化合物が出てくるのか理解できません。(ちなみにトリエタノールアミンに関するIARCの発癌性リスク区分はグループ3「ヒトに対して発がん性があると分類できない。」です)

この基準とは、危険な合成化学物質のため、どれくらい薄めたらいいか確認するために動物実験をしているようです(私は、動物実験とは、安全を確かめるものと思っていました)。

動物実験の意味については,「プロピレングリコールはどのくらい怖いのか」や「動物実験は何のため?」で説明したとおりです。

あと,このサイトは基本的に量的な概念がまったく伴っていません。工業的な原料として用いる量と実際の製品中の含有量,実験用試薬として用いる高純度品と成分として数%程度しか含まれていない場合の性質の違いなどに関する観点がまるっきり抜け落ちています。

私のブログにも毎日「ラウリル硫酸ナトリウム」というキーワードで訪れてくださっている方々がたくさんいます。しかし,Googleなどで「ラウリル硫酸ナトリウム」や「プロピレングリコール」を検索すると,先ほどの「経皮毒.com」の方が上位に来ているんですね。

「経皮毒.com」を見た後で,ここを見てくだされば誤解が解けると思うんですが,あちらだけを見て不安に駆られたまま検索を終了している人がどのくらいいるんだろう,と思うとかなり切ないものがあります。

私も自分の体質の合うシャンプーなどを探すのに苦労した経験を持っていますので,今現在苦労されている方々の辛さも多少理解しているつもりです。しかし,私のように石鹸のアルカリ性や含まれている香料の組み合わせなどが合わない体質の人も必ずいると思います。なので,「大メーカーだから」とか「ラウリル硫酸ナトリウムやプロピレングリコールが使われているから」と言った理由でそれらのものを避け,結果的に自分にあったものにたどり着けない人が出てくることを懸念しています。そして,私のブログを読んでいただいたことで,その様な人が増えることを少しでも防げればと思っています。
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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 20:54:03 | Trackback(0) | Comments(0)
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