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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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放射線が出てくる仕組み その3~半減期
さて,長い間ほったらかしにしてしまいましたが,こちらの続きです。

ずっとコメントをいただいていた方からは,

これでやっとヨーロッパだろうがアジアやオーストラリアだろうがそこの物が不安なく買えると思います。ありがとうございます。


というコメントをいただきましたので,たぶん悩みは解決したのかな?と思っていますが,乗りかかった船ですので,最後までやろうかと思います。

というわけで,今回は半減期の話です。

前回のまとめとして,

放射壊変の起きる確率(=放射線の出てくる頻度)と出てくる放射線の種類は,
それぞれの放射性同位体によって決まっている


という話をしました。

放射壊変という現象は量子力学の世界での出来事ですので,不確定性原理によりある一個の放射性元素の挙動を予測することは不可能です。しかし,数百万個などの集団になった放射性元素がどのくらいの割合で放射壊変を起こしていくか,と言う問題に関しては厳密に求めることが可能です。これは純粋に確率の問題になるからです。

そのため,各放射性元素固有の「壊変定数」と言うものを求めることが可能となります。そのため,t=0の時の全体の数が半分になるまでの時間,つまり半減期も厳密に求めることが可能となるわけです。

ところで,この場合の半減期は「物理学的半減期」と呼ばれる場合があります。それは他のものとの相互作用などを一切考えず,その放射性元素固有の性質のみを考えた半減期だからです。

これに対し,「生物学的半減期」と言う言葉があります。

生物学的半減期とは,生体(主に人体)中にある放射性元素が取り込まれた場合,人体中におけるその放射性元素の量が生体中の作用により半分になるまでの時間のことです。

厳密には,生物学的半減期における放射性元素の減り方に物理学的半減期の要素は組み込みません。生物学的半減期と物理学的半減期の両方を組み合わせ,実際に人体の中に存在する放射性元素の量が半分になるまでの時間は実効半減期と呼ばれます。実はこれこそが,一連のコメントの中でずっと気にされていたものの正体です。

さて,一旦話を生物学的半減期に戻します。

生物学的半減期は生理的な作用により,ある放射性元素が体外に半分排出される時間のことです。生理現象は,大胆な言い方をすれば,すべて体内で起きている化学反応の結果です。つまり,その放射性元素が体外に排出される速度というのは,その放射性元素の化学的性質に依存することになります。

ということは,どういうことかと言いますと

同じ元素で同じ化学形態を持つもの同士の場合,
放射性同位体と非放射性同位体の生物学的半減期はほとんど同じ


ことが期待されるわけです。

なのでトリチウム(3H)ですとか,カリウム40(40K)のように,体内での代謝が早い元素は,他の安定同位体である水素(1H)やカリウム39(39K)と一緒に迅速に体外に排出されます。しかし一方ではストロンチウム90(90Sr)のように,骨組織の中に浸透して体内に長く保存されてしまったり,脂溶性化合物の中に炭素14(14C)が含まれている場合などは,同じ化学形態を持つ他の安定同位体(88Sr,12C)と共に比較的長い間体内にとどまることになります。

そして,一番重要なポイントなんですが,この生物学的半減期(物理学的半減期も同様です)は,最初の量に左右されません。つまり

1万個の放射性元素が5千個に減る時間と
50個の放射性元素が25個に減る時間は等しい


のです。

ですから,人体への影響を考える場合には生物学的半減期を含めた実効半減期について考慮することはもちろん大切なのですが,それより何より

量的な関係を第一に考える


ことが最も大切なことです。

現在報告されている環境放射能の測定値によれば,現在日本で健康上問題になるどころか,自然界における通常の変動幅以上のレベルで放射能が増大しているという測定結果は存在しません。ですから,三陸の魚介類も,青森県を初めとした原子力関連施設のある地域の農作物はもちろん,自然放射線の高い地域の生産物も全て安全であると言えるわけなのです。

もし明らかに自然界ではあり得ないような放射能が農作物や魚介類から検出されたという事例をご存じの方がいらっしゃいましたら,ご一報下さい。そんな大問題が起きていたら大変です。その様な情報は隠さずに大々的に共有していくべきだと思います。

というわけで,とりあえず「放射線が出てくる仕組み」シリーズについては一旦終了させていただきます。もちろんわかりにくいところや間違っているところがありましたらご指摘下さい。

あと,できればせっかくのブログという形でやらせていただいておりますので,コメントを残される場合には,「管理者のみ閲覧可能」ではなく,ぜひ公開指定で御願いいたします。その方が,より多くの方との情報共有が可能ですから,より広い範囲の方との議論が可能だと思います。ぜひご協力をよろしく御願いいたします。
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テーマ:環境・資源・エネルギー - ジャンル:政治・経済

雑学 | 19:34:21 | Trackback(0) | Comments(8)
コメント
こんばんは。
お久しぶりです。
放射壊変について、くわしい説明ありがとうございます。

ですが、難しいので、質問させていただきます。
「ある一個の放射性元素の挙動を予測することは不可能です」ということに関してです。
例として、ヨウ素129の例を挙げますが、半減期は1570万年です。
仮に、ヨウ素129が一個あるとします。
これが放射壊変するのは、1秒後かもしれないし、1000万年後かもしれない、という理解でよろしいのでしょうか。
また、ヨウ素129が壊変する場合、弱いベータ線を出すそうですが、これは、その壊変する瞬間だけベータ線を放出するということでしょうか。
もう一つ。
一つのヨウ素129が壊変する時間というのは、ほんの一瞬なのか、それとも、ちょっとばかり時間があるのか、それについても知りたいです。

以上、質問は3つです。
よろしくお願いします。
2009-01-15 木 21:10:10 | URL | コスモクリーナー [編集]
>コスモクリーナーさん

ごぶさたしております。またおいでいただいてありがとうございます。

>これが放射壊変するのは、1秒後かもしれないし、1000万年後かもしれない、という理解でよろしいのでしょうか。

はい,その通りです。ある一個の原子についてだけ見た場合,その一個がいつ放射壊変を起こすかどうかを予測することはできません。

>ヨウ素129が壊変する場合、弱いベータ線を出すそうですが、これは、その壊変する瞬間だけベータ線を放出するということでしょうか。

こちらもその通りです。放射壊変を起こす瞬間にだけβ線やγ線を放出します。というか,実際はβ線やγ線を出した瞬間こそが,放射壊変が起きた瞬間と思った方がよいかと思います。壊変が起きてβ線やγ線を出し終わった後,出した原子は別のものに変化してしまっていますので。

>一つのヨウ素129が壊変する時間というのは、ほんの一瞬なのか、それとも、ちょっとばかり時間があるのか、それについても知りたいです。

少なくとも我々の時間感覚から言えば,一瞬の出来事と思っていただいて結構です。一発「パシン」と崩壊し,β崩壊であればβ線を一個放出して終了です。じっくりじわじわ時間をかけて起きるようなものではありません。

以上でご回答になりましたでしょうか?また何かありましたらよろしく御願いします。
2009-01-15 木 22:38:43 | URL | ぷろどおむ [編集]
はじめまして。

詳しい説明の上、質問にも丁寧に答えている姿勢は、歓迎されますね。
それでは、私も質問させていただきます。

六ヶ所再処理工場からは、総量としては膨大な量の放射性物質が海へと棄てられます。
例えば2008年11月27日には、トリチウム380億ベクレルが海へ棄てられました。
これは半減期が12.32年です。
ここで質問です。

海へ棄てれば薄まりますが、薄まっても12.32年経てば、確実に半分の量である190億ベクレルになるということでしょうか。
赤い字で書かれている「集団になった放射性元素がどのくらいの割合で放射壊変を起こしていくか,と言う問題に関しては厳密に求めることが可能」という文章から、集団にならずに薄まれば、放射壊変の割合もわからないのかなあ、と考えてしまいます。

管理者さんには、繰り返しのように感じられるかもしれませんが、よろしくお願いします。
2009-01-23 金 16:27:05 | URL | T.Sasaki [編集]
>T.Sasakiさん
ご質問ありがとうございます。

>海へ棄てれば薄まりますが、薄まっても12.32年経てば、確実に半分の量である190億ベクレルになるということでしょうか。

はい,その通りです。一個一個の放射性元素がいつ崩壊するかを予測することは不可能ですが,「排出された集団」がどのように変化していくかは予測できます。その時に排出された380億ベクレル相当のトリチウムは,半減期が経過したあとは190億ベクレル相当まで放射能を減衰させます。

もちろんどの程度の範囲まで拡散し,拡散した先でどの程度の濃度になっているかについてはまた別の議論になりますが,途中で別の核反応などが関与しない限り,その放射性元素の放射能は固有の壊変定数にしたがって減衰していくことには変わりありません。

このような感じでご回答になりましたでしょうか?まだ不明な点があったら,お気軽にご質問いただければと思います。
2009-01-23 金 17:47:21 | URL | ぷろどおむ [編集]
1/実効半減期=1/物理学的半減期+1/生物学的半減期により、ヨウ素131は物理学的半減期は8.04日、甲状腺の生物学的なヨードの半減期は約30日、甲状腺に対する 131の有効半減期は約6.3日、トリチウムなら物理的半減期12年強、生物学的半減期10日、有効半減期は約9日。再処理工場、原発が廃棄する人工放射性物質は、日々の(無害とされている)環境において、近隣の作物にどの程度含まれるかを考える時、多くの人間の不安も、結局農作物や魚介類から体内に取り込んだその日のうちに排泄出来る可能性はないのか。あるのではないかという事になれば全然違っていきます。
頻繁に、やれ近隣のヒラメやほうれん草から○○検出、と発表があっても、普通の食べ物同様、その日のうちに排泄される事もあるのでは?放射性物質は、青森再処理工場や原発密地域に住む方々の日々における程度の量でも、体から出て行く速度は全く実効半減期によりますかね。
私は以前、数百回連続で体が食べ物を消化しないまま即排泄するという経験がありますが、非放射性物質であるカフェインで言えば、1口のコーヒーと10杯では体から出て行く速度は理屈上半減期は同じでも、速く出しやすいという事はあるのかと。
トリチウムやヨウ素だって、六ヶ所村産の農作物食べて、9日だ10日だと体内にありますかね。その日のうちに放射性物質は排泄できている可能性というのもあるのではないですか?
多くの人の、その地域産の放射性物質は無害といえどもその実、いかに、という不安解決にはそれです。

私は原発賛成ではありません。
2009-05-07 木 20:52:06 | URL | 匿名希望 [編集]
Re: タイトルなし
コメントありがとうございます。

ご存じとは思いますが,実効半減期あるいは生物学的半減期というものは物理学的半減期と違って,純粋に理論通り行く話ではありません。従って現在言われている値というものはあくまでもいくつかの実験から推論される予想値であって,個々の事情(便秘がちであるとか,下痢気味であるとか(^^;)が加味されているわけではありません。ですので,仰るとおりその日のうちに全部体外に排出されてしまうような可能性もゼロではないかもしれませんが,普通は消化吸収などにより体内に取り込まれ,代謝系に乗った場合を考えます。万が一被害が生じた場合には,個人個人の事例を把握して治療などを行う必要があるかとは思いますが,今後の状況についてマクロ的な予測を行う場合に平均的な事例から外れた特殊例を一つ一つ検証していくことにどの程度意味があるのかは疑問です。

なお,蛇足ではありますがカフェインのように代謝速度があまりに速すぎるものは,今回の議論には不適切だと思います。あとご存じかと思いますが,トリチウムは有機物の一部として取り込まれたか,水の一部として取り込まれたかによって生物学的半減期がまるで違います。今回出されていた例は水として取り込まれたケースですが,有機物として取り込まれれば実効半減期は約45日に跳ね上がります。もちろん,トリチウムが生体中に濃縮されることはないという実験結果もありますし,トリチウムが出す放射線は非常に弱いβ線ですので,持続的に大量のトリチウムを摂取するようなことがなければ健康被害に繋がることはなく,過度な心配は無用なんですけどね。つまらない蛇足でした。

あと,ヒラメやほうれん草から有意に高い放射能が検出されたという事例は寡聞にして存じ上げないのですが,そのような報告があったのであれば教えていただけると助かります。もちろん他の方からの情報提供も歓迎いたしますので,どうかよろしくお願いいたします。
2009-05-07 木 21:39:46 | URL | ぷろどおむ [編集]
ぷろどうむ様、こんにちは。
去年の11月に初訪問の者です。他にも匿名な方がいるみたいなので、009で。

最近、畑が違う薬品の事なんかだったので読んでいるだけだったのですが、あの、半減期のこれって私が言ってた事そのままですよね。
思った事を書きます。違ったらごめんなさい。
読んでみて、ぷろどうむ様に批判的な文とは違うと思います。

「日々の原子力発電所や再処理工場が出す(廃棄する)放射性物質は、無害であると発表がある。(それに批判するのとは違うが)、放射性物質は検出している。そこで、無害量であるところの、再処理工場HPに廃棄放射性物質一覧にあるとおり、ヨウ素やストロンチウムなどが出ている。そこで例えばヨウ素131なら計算では6日位になるが、無害といっても6日も体にあるのは気持ちが悪い。日頃のチェルノブイリなどの事故がない原発や再処理工場で出ているレベルなら、量が少ないのであればその日のうちに普通の食べ物みたいに排泄できているんではないか。」
という、災害の時などの被害ではなく日頃の事をいっているんだ、と。

それで、カフェインなんかお腹がゆるい体の時には一口のんだのと10杯では、放射性物質と比べたのと違って、皆がわかる日頃の物をたとえて、排泄できる時もあるのではないか、という事かと。

ほうれん草の件、前に私がリンク先書いた福島発表にありますね。これも有意というのではなく、検出はあったと書いていますよね。
ただこれは量が少ないから過去の核実験か原発かはわかりません、とあります。例えば、無害でも検出はある、でも量が少ない、であるなら、その日に出ていく事もあるのではないか、何日もあるなんてなんとなく気持ちが悪い、という意味かと。
ほうれん草も、有意な検出、という意味で書いたのではない事かと。

過去の核実験だったら外国がやったことだから、日本国内で、地域差はありませんよね。
そこに原発があるかどうかが関係ないんですもんね。
九州か北海道かでどっちかが検出量が多いとかはないのですよね?

ひらめはわかりません。ごめんなさい。

何日も体にあるなんて無害でも、嫌ですものね。
2009-05-08 金 08:27:41 | URL | 009 [編集]
Re: ぷろどうむ様、こんにちは。
009さん,コメントありがとうございます。

> 読んでみて、ぷろどうむ様に批判的な文とは違うと思います。

私も批判されているとは思っていなかったのですが(^^; 一部誤解があるかな?と思って書かせていただきました。

>そこで例えばヨウ素131なら計算では6日位になるが、無害といっても6日も体にあるのは気持ちが悪い。日頃のチェルノブイリなどの事故がない原発や再処理工場で出ているレベルなら、量が少ないのであればその日のうちに普通の食べ物みたいに排泄できているんではないか。」
> という、災害の時などの被害ではなく日頃の事をいっているんだ、と。

私がこのブログで常々訴えているのは,この「気持ちが悪い」という感覚には何も根拠がないんですよ,と言うことです。体内に6日間残っていても(正確に言えば,「半減する」だけで無くなるわけではないのですが)微量であれば健康被害は出てこないし,トリチウムが含まれていない水でも,その中に含まれている水素原子の生物学的半減期は10日間です。有機物として取り込まれた水素原子の生物学的半減期は45日程度と言われています。もちろん体調や個人の体質によって多少のずれは生じると思いますが,人体への影響を考えるには「平均的」な実効半減期を考える必要があるのです。

> それで、カフェインなんかお腹がゆるい体の時には一口のんだのと10杯では、放射性物質と比べたのと違って、皆がわかる日頃の物をたとえて、排泄できる時もあるのではないか、という事かと。

このエントリ中にもありますが,個々の特殊事例はともかく実効半減期は最初の量に左右されません。スタートの量が少ないから半減期が短くなるというものではないのです。もちろんスタートの量が少なければ検出限界以下になるまでの時間は少なくなりますが,半減期が短くなるわけではないのです。

同様に,仮に放射性物質を大量に摂取してしまった場合,たとえ半減したとしてもその半減したあとの量が充分大きな量であれば,半減期が過ぎたとしても健康被害を受け続けることには変わりがありません。半減期がどうこうという議論をいくらしても,量的な問題を議論しなければ意味がないのはそう言う意味です。

> ほうれん草の件、前に私がリンク先書いた福島発表にありますね。これも有意というのではなく、検出はあったと書いていますよね。
> ただこれは量が少ないから過去の核実験か原発かはわかりません、とあります。例えば、無害でも検出はある、でも量が少ない、であるなら、その日に出ていく事もあるのではないか、何日もあるなんてなんとなく気持ちが悪い、という意味かと。
> ほうれん草も、有意な検出、という意味で書いたのではない事かと。

単に「検出」されただけであれば話はわかります。ただ,それを「気持ち悪い」と思う感情をどうにかしないことには,やっぱり話は進まないのです。というか,それが気持ち悪かったら,実際問題として世の中生きていけない訳なのです。その辺の誤解をどうすればわかっていただけるのか……。非常に悩ましく思います。

> 過去の核実験だったら外国がやったことだから、日本国内で、地域差はありませんよね。
> そこに原発があるかどうかが関係ないんですもんね。
> 九州か北海道かでどっちかが検出量が多いとかはないのですよね?

海流だったり気流の関係で多少の差は生じるかと思いますが,そもそも気にするようなレベルではありません。たとえこの世に原発が一つもなく,核実験も全く行われなかったとしても,そんなことは無関係に,放射線を一切浴びずに暮らすことは,この宇宙に産まれてしまった以上不可能なのです。

> 何日も体にあるなんて無害でも、嫌ですものね。

残念ですが,どうにかしてその気持ちを何とかしないと,心の平穏を得ることは不可能だと思います。
2009-05-08 金 15:42:42 | URL | ぷろどおむ [編集]
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