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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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コメントへのお返事

いくつかのエントリについてご質問をいただいたので,まとめてお答えします。まずは,このエントリ誤解なのか,ミスリードなのか その2 ~農作物中の放射性物質について)にいただいたコメントから。



安全派の主張はいつも政府の基準を持ち出すけど、そもそもその政府の基準自体が十分信頼に値するかという問題がありますよ。 



わりとこうおっしゃる方々が多いのですが,信頼に値しないという根拠は何なのでしょうか?まさか「政府が決めているから」と言うことではないと思いますが,おそらく



放射能には閾値はなく、浴びる量が少し増えればそれだけ危険が増すという話を聞きました。



という話から,「ちょっとの量の放射線でも危険である」という認識に一足飛びに行かれてしまったのではないかと類推しています。


確かに低線量放射線の人体に対する影響というのは十分に研究が進んでいない分野ではありますが,なぜ研究が進んでいないかというと,低線量放射線の影響だけを抜き出すのが極めて難しいという一点に収束していくのではないかと考えています。低線量放射線が影響すると言われている癌や白血病などには,原子力関連施設から排出される放射性物質の影響よりもさらに大きな影響を持つ様々な要因が世の中にあふれています。その中の一つは,もちろん自然放射線の影響です。


今までのエントリでも散々書いてきたとおり,我々はすでにある一定以上の放射線に被曝しつづけています。日本では,年間約1mSv,世界平均だと約2,4mSvほど自然放射線による被曝をしています。また,世界には年間10mSvの被曝をしている地域もありますが,疫学的に有意差のある健康被害が出ていると言う報告はありません。おまけに,現代日本における医療行為による被曝線量は1mSvを軽く超えています(CTスキャンを一回やったら7mSv程度被曝します)し,年間の平均変動幅も±0.35mSv程度あるわけです。


おそらく一番誤解されている原因がここなのかもしれませんが,一般人に対する線量限度1mSvという値は何の根拠も無しに設定されたのではなく,放射線防護の国際的基準を勧告することを目的として設立された国際委員会(非政府機関)であるICRP(国際放射線防護委員会)が,「自然放射線からの実効線量は非常に変動しやすいラドンによる被ばくを除き約1 mSv/年であり,海抜の高い場所や一部の地域では少なくともこの2倍であるということなどを考慮して1年間の実効線量限度を1 mSvと勧告している」という事実を元にして設定している値です。


決して「ここまでなら浴びても大丈夫」という話を元にして設定されている値ではありません。そのようにして決定されているのは,放射線技術者に対する線量限度(5年間で100mSv)の方だと考えていただいてかまわないと思います。


これ以外にも,タバコやPAH,一部の農薬などの発ガン性を疑われている物質の影響など様々な要因があります。実験室レベルのマウスであれば,それらの要因を意図的にある程度シャットアウトして実験を行うことができますが,実際に生活している我々人間でそのようなことをするのは不可能です。


もし,これらの値を明確に否定する根拠,他の様々な要因を除いても,明確に何らかのリスクが日常生活において発生していると言えるようなものがあるというのであれば,どうやってそれを証明したのか非常に興味があります。ぜひその方法を教えていただきたいと思います。



チェルノブイリ事故の際にも事故の影響で日本人が3人余計に癌で死亡するという統計的予測がありました。 つまり微量だからといって無害とは限りません。もっともこれはほかの物質による大気汚染にも言えることかもしれませんが。 また、ヨーロッパでは現に原子力関係施設の近辺や海流の下流で統計的に有意に癌が増えているという調査結果があります。 安全説を主張されるなら、以上2点についても解説してほしいですね。



この部分については,その統計はどういう条件の予測だったのでしょうか?3人余計に死亡するというのは事故後何年間分の死亡者数ですか?ちなみに他の要因に基づく発ガンリスクの数値はご存じですか?などといろいろ質問したいことが多いです。


ちなみに,様々な死亡要因についてそのリスクを計算された結果がこちら市民のための環境学ガイド)にあります。リスクに関する解説もありますので,ぜひ参考にしていただきたいと思います。


なお,大変申し訳ありませんが,ヨーロッパの状況についてはどの程度の放射性物質が環境中に放出され,その結果どのような統計が得られたのかという情報無しに判断することはできませんので,コメントすることができません。ですので,その統計資料の基になった論文なんかを教えていただけるとありがたいです。


しかし,少なくとも六ヶ所の再処理工場はヨーロッパにおける稼働実績の反省を元に様々な設計や,環境影響に対する試算が行われているのも事実です。過去にセラフィールドなどがどのくらいのレベルのどういう種類の放射能を垂れ流してきたのか。それにくらべて,六ヶ所の基準はどうなっているのか。という辺りを調べられると,面白いかと思います。


次はこちらのエントリ「食べたら死ぬ」ほどの放射能とはどのくらいなのか)にいただいたコメントです。



一般人の年間線量限度 これって外部から被爆する場合では?汚染食品を摂取して内部から被爆が続けばより危険だと思いますが。 チェルノブイリなどで汚染された食品による健康被害が出ていると報道されていますが、あれは嘘なのですか?



いいえ,年間線量限度は外部被曝と内部被曝の和として設定されています(参考)。そして,私が行った計算のほとんどは内部被曝をしたと考えて実行線量を計算しています。ただし,私が行った計算の場合「意図的に半減期を無視」して手抜きの計算をしていますので,実際にはもう少しだけ小さな値になります


もちろん長期的な影響を考えた場合には内部被曝による被害の方が深刻です。チェルノブイリでも,放射能を帯びてしまった食品による被害は深刻な影響を与えました。だから,あえてより実行線量が大きいと考えられる内部被曝の影響のみを考慮して計算しています。その他のパラメータに関しても,できる限り大きな値になるように変更して計算しています。しかし,それでも通常稼働をしている限りにおいては,この程度の値にしかならないのです。


次はこちらのエントリ誤解なのかミスリードなのか その3~セラフィールドの反省は生かされているのか)へのコメント。



数十分の1に減ってもそれが安全を意味するとは限りません。 閾値がないという性質を考えれば、癌や白血病が多少は増える可能性が否定できないと思います。 内部被爆の危険性を考えると、安易に安全と判断するのは危険ではないでしょうか。



これに関しては前述したとおりです。確かに完全なゼロリスクを達成することは不可能かもしれませんが,他のリスク要因と比較して十分に小さなリスクであれば,リスクマネジメント的にはそれ以上のリスク軽減への努力は徒労に終わる部分が大きくなっていきます。


国や原燃の研究者や技術者の人たちが必死の努力を重ねて原発や再処理工場から排出される放射線を限りなくゼロに近づけても,飛行機で海外に一回旅行してしまえばそこにかけた何百億,何千億というコストは水の泡です。


海外に行かなくても,隣のおじさんが吸ったタバコの副流煙を吸ってしまったら,体調不良を感じてCTスキャンによる検査を受けたら,定期健康診断でレントゲン検査を受けたら,ラドン温泉にのんびり入ってきたら,もうそれだけで何の意味もなくなってしまうわけです。


しかし,CTスキャンによる検査は他の様々な病気の要因や軽微な兆候を探し出し,我々の健康に対するリスクを軽減してくれます。レントゲン検査も同様です。海外への飛行機への移動も様々なベネフィットを提供してくれます。我々日本人にとって,温泉浴によるストレス軽減効果は非常に魅力的でしょう。喫煙者の方にとっては,タバコも同様の効果をもたらしてくれるのかもしれません(が,個人的にはタバコに関しては得られるベネフィットに対するリスクは大きすぎると思っています。)。


同様に現在の状況では,原子力発電所から得られる大量のエネルギーは,我々の健康や快適な生活に対して大きなベネフィットを与えてくれています。柏崎原発を失った東電が,17年ぶりに送電規制を行わざるを得なかったというのは,記憶に新しいところです。


我々が真に恐れ,避けなくてはならないのは原子力施設の「大規模な事故」によるハザードです。我々が持っている非常に少ないリソースは,この「極めて甚大な規模を持つハザード」を防止することと,このようなハザードを持たずに同様のベネフィットをもたらしてくれる新技術の開発に振り分けられるべきであって,流言飛語のたぐいを解消するために割かれるコストは無駄以外の何者でもないというのが,私の主張です。


日本の技術者たちのたゆまぬ努力と誠実さにより,柏崎原発は想定の二倍以上という大きな地震災害を耐え抜きました。その頑健さはIAEAの専門家たちを持ってしても「予想の範囲外」と言わしめるほど,その影響を軽微な被害で抑えることに成功しました。これは素直に賞賛されるべきことだと思います。


しかし,IAEAによる視察が入ることが決まった時の大騒ぎに比べて,彼らが「現時点での問題はなし。」とコメントした部分はほとんど注目されず,「将来的にも安全かどうかはわからないから引き続き細かく検査をするように」というコメント部分だけが強調されて報道されていたように感じたのは気のせいでしょうか?同じ技術系の人間として,「より高い安全レベルを求めて検査や監視を続けるのは当然のことであり,ことさら強調すべきことではない」という思いがあるだけに,非常に複雑です。


話が完全にそれました。


私が伝えたいことは,




  1. 現時点で健康被害が発生するような汚染の事実はない



  2. 現時点で通常稼働時の安全性を否定する明確な根拠はない



という二点です。もちろん現在安全だからと言って,未来永劫安全であるという根拠は何もありません。ですが,何度も繰り返し言いますが


現在の安全と未来への不安は別の次元で議論すべきもの


です。


未来の安全に不安を持っている方でも,現在の安全に安心感を持つことはできると思うのですが,頑なにそれを拒否したがる人が多いのはどうしてなのでしょうか?非常に疑問でなりません。

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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 17:31:34 | Trackback(1) | Comments(5)
コメント
こんにちは。

>頑なにそれを拒否したがる人が多いのはどうしてなのでしょうか?非常に疑問でなりません。

あなたは、本当にそう思っているのですか?

放射性物質の地球上の総和は、増加する一方で、プルトニウムなど「1億円の憂鬱」と形容されるくらいです。
そのプルトニウムを燃やすプルサーマル、高速増殖炉から出現する使用済みMOX燃料をどうするかという問題もあります。
一応、使用済みMOX燃料も再処理する云々と、推進したい人たちは言っていますが、そんな先送りの話など信用できるものではありません。
大体にして、核に関する推進側の話は、“科学”ではなく、“政治”です。

遠い将来ですが、化石資源はいずれなくなりますし、核発電は、化石資源なくして動きません。
化石資源がなくなっても、核発電のゴミはなくなりません。
それらは、いくら地下に埋めたとしても、管理していかなくちゃならない。
最悪の場合、それらは放置されうる事態もあります。
また、本来、ほとんど地球上に存在しなかった最悪の毒物プルトニウムも、核発電により、総量はどんどん増加し、いずれは、全地球の人類を簡単に滅ぼすことができる量に達するでしょう(すでに達しているのかな?)。
政治なんてものは、非常に流動的すぎて、何が起こるかわかりませんから、そんな劇毒を“未来永劫”管理できるものではありません。
遠い将来において、プルトニウムの存在は、爆弾も含めて、リスクが大きすぎます。

核発電で生成される物質で、遠い将来、どれほどの人間が死ぬかわかりません。
一方、現在、核発電をやめて、死ぬ人もどれほどいるかわかりません。
この両者を考える時、“あなた”は現在の核を取る人間であり、“拒否したがる人たち”は、自分のツケを将来に回したくない人たちです。
それぐらいは考えてください。

赤い字の「現在の安全と未来への不安は別の次元で議論すべきもの」までは良かった。
しかし、その下の「未来の安全に不安を持っている方でも,現在の安全に安心感を持つことはできると思うのですが,頑なにそれを拒否したがる人が多いのはどうしてなのでしょうか?非常に疑問でなりません。」は余計で、赤い字と矛盾します。



2007-09-02 日 13:20:13 | URL | コスモクリーナー [編集]
どこで誤解されてしまったのか…。自分の文章力のなさを嘆くばかりです。

以前のエントリとかを見ていただければわかるかと思って手を抜いて書いてしまったのですが,私の主張する「現在の安全」というのは,現在存在している原子力関連施設が安全だと言うことではなく,たとえば青森県産の農作物だったり,三陸沿岸の魚介類だったり,あるいは柏崎周辺で捕れた魚介類から問題のあるような放射能が検出された事実はありませんよ,少なくとも今この時点では安全なのですよ。と言う意味です。将来の核廃棄物や原子力関連事業に不安を持つ人でも,今採れている農作物や魚介類に不安を持つ必要はありませんよ,と言う意味です。今ある原子力関連施設は絶対に安全だから無条件に肯定しろなんて無茶なことは言いません。

コスモクリーナーさんのおっしゃるとおり,核廃棄物の問題は非常に重要だと思います。現在は地層処分がメインとして考えられているようですが,確かめようのないことだけになかなか安心することはできません。これらの問題を払拭するためには,当然可及的速やかに核分裂によるエネルギー生産を縮小・停止の方向に持って行くこと,代替エネルギー源を早期に確保すること,すでに発生してしまった核廃棄物のよりよい処理法を研究し続けること,の三点が必要です。

しかし,かけられるリソースは限られています。であるからこそ,無駄な風評被害などを広げて余計なりソースの消費を増やすことなく,本当に必要な部分にこそそのリソースを振り分けてほしいと願っております。
2007-09-03 月 14:02:36 | URL | ぷろどおむ [編集]
こんばんは。

最初にお詫びします。
「1億円の憂鬱」は「1億年の憂鬱」でした。
ごめんなさい。

ぷろどおむさんが、せっかくベネフィットという言葉を使われているので、再処理事業にベネフィットがあるのかどうか、について、少し。

まず、使えるエネルギーシステムというのは、投入するエネルギーよりも産出されるエネルギーが大きくなければ話になりません。
風のないところに風力発電システムを作っても、これは、エネルギーの無駄遣いです。
原子力のバックエンドは気の遠くなるような話なので、そこに使用されるエネルギーは、計算することもできません(推定計算した人もいます)。
再処理により、現在リサイクルできるエネルギー資源は、せいぜい10~15%といわれ、再処理事業には、莫大な資源とエネルギーが消費されます。
リサイクルしたからといっても、ほとんどベネフィットなど存在しないのです。

「かけられるリソースは限られています」といわれても、再処理事業など、資源の無駄遣いとリスクの増大以外の何ものでもないと思いませんか?
2007-09-08 土 19:52:32 | URL | コスモクリーナー [編集]
コメントありがとうございます。

おっしゃる通りだと思います。

再処理工場の最大のベネフィットは,使用済み核燃料からプルトニウムを生産することであり,プルトニウム生産の最大のベネフィットは,有限の資源であり100%輸入に頼っているウランを使う原子炉から,投入した以上のプルトニウムを生産する高速増殖炉にシフトすることが可能になることだ,と説明されてきました。

しかし,もんじゅの事故により高速増殖炉の商用利用計画が大幅に遅れ,現在もその実現に疑問がもたれている現在となっては,この部分についてとてもじゃないですが大きなベネフィットを感じることはできません。それに,そもそも高速増殖炉自体にも,現状の原子炉が持っている極めて大きなハザードは存在したままですので,このようなものに頼らない代替エネルギーの確保をもっと重視すべきだと思っています。ですから,私もコスモクリーナーさんと同じく,これ以上の原子力関連事業の拡充には反対の立場をとっているわけです(なんとなく忘れられている and/or 積極的推進派だと思われているような気がするんですが(^^;;;;;)。

しかし,現在困ったことに,本来副産物的なものであったはずの「高レベル核廃棄物の『体積削減』効果」という部分の持つベネフィットが,最終処分場建設問題に絡んで日に日に大きくなっていると言う現状があります。この問題がこのまま大きくなってしまいますと,再処理工場の稼動を容認せざるを得ない状況に追い込まれてしまいかねません。

この問題についてはいろいろ書きたいことがあって長くなるのは確実だったりしますので,そのうちエントリとして立ち上げたいと思います。
2007-09-08 土 23:18:25 | URL | ぷろどおむ [編集]
こんばんは。

「高レベル核廃棄物の体積削減効果という部分の持つベネフィット」?

それなら今、急いで再処理する必要はありません。
急いで再処理工場を稼動させる理由は、原子力政策のミスにあります。
彼らは、それらを認めないし、国民に謝罪する気持ちもない。

「高レベル核廃棄物の体積削減効果という部分の持つベネフィット」というエントリーを楽しみにしています。
2007-09-15 土 19:27:07 | URL | コスモクリーナー [編集]
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