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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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デマその1:再処理工場は一年間に47,000人分の致死量の放射能を海に排出する

デマその1: 青森県の六ヶ所再処理工場が動き出すと、プルトニウムが分離され、高レベル放射性廃液が海に大量に放出されます。放出される放射能は、1年間で3億3000万ミリシーベルト。これは47000人の経口致死量に相当します。)(引用元


解説: 
高レベル放射性廃棄物の定義が微妙に一般的なものと違っています。後述しますが,今回再処理工場から排出される廃液は全然高レベルではありません。


おそらく,この数字は原燃が出した事業計画書が元になって算出されたものと思われます。シーベルトへの換算や経口致死量の計算自体はこちらのページと同じものでしょう。


まず,この表を読むときに気をつけなければいけないのは,これが「年間でのトータル量」であるということです。つまり,トータルではこれだけの量が排出されるけど,これらの放射性物質は海水によりどんどん薄められていくと言うことです。


ですので,排出口から出てきた排水を全量採取して煮詰めて放射性核種だけをかき集めるなんてことをしない限り,トータル量だけを取り上げて致死量がどうのなどと言うのは全く意味がありません。


また,この表を見てもわかるとおり3億3000万ミリシーベルトのうち,3億2400万ミリシーベルトはトリチウム由来のものです。


トリチウムの出す放射線は非常に弱いベータ線ですので,外部被曝を起こすことはほとんどありません。また,トリチウムが体内に取り込まれたときの代謝についてもすでに研究がなされており,結論から言うと外部から摂取したトリチウムは人体の中にとどまることなく極めて迅速に体外に排出され,元々体内に持っているトリチウム量が変化すると言うことはほとんどありません。


ですので,確かに一度に大量のトリチウムを摂取した場合には健康被害を起こすおそれはありますが,低濃度のトリチウムを長期間摂取し続けたからと言ってどうということはないわけです。


では,次にこれらの放射性物質がどのように拡散するかを見てみましょう。「三陸の海が再処理工場により汚染されている!」という主張の元に反対活動を続けている「美浜の会」というところが,試料としてチラシで配布している海流による放射能の拡散予想図を使って計算します。


この図では毎秒1Bqの放射能が一年間放出された場合,排出された放射能分布がどうなるかを予想しています。図が二種類ありますが,こちらのブログの解説によると,図2の方がより確からしい予想だそうですので,そちらを元に計算します。


まず先ほどの原燃からの申請値1.8E+16Bq/年を365x24x60x60=31536000秒で割ってあげると,毎秒5.7xE+8 Bqの放射能が放出されることになります。先ほどの海洋拡散図から判断して,一番濃度の濃いところでも1Bqあたり25E-10Bq/cm3です。なので,一応多めに見積もってその倍の50E-10Bq/cm3までしか薄められなかったとしても2.85Bq/cm3の割合で放射能が増えた水ができるにすぎないことがわかります。図2では八戸近辺の様子が出ていないのですが,もし図1の通り水色の領域であったとすれば,この1/10である0.29Bq/cm3,黄色だったとしても1/5の約0.6Bq/cm3ということになります。


次に一番人間に大して影響が大きく,先ほどの表でもトリチウムの次に影響が大きく半減期も長いヨウ素について計算しましょう。ヨウ素131も影響が大きいように見えますが,半減期が8日と短いので,年間レベルでの影響を考えても意味がありません。なので,今回は129ヨウ素についてのみ計算します。


先ほどの表から129ヨウ素の排出量は4.30E+10Bqですので,トリチウムと同様に計算すると毎秒あたり約1400Bq放出されていることになります。この時点でこれ以上計算する意味があるのかどうか疑問になってくるわけですが,一応がんばってトリチウムの場合と同様に1Bqあたり50E-10Bqまで薄められたとして計算します。すると,7 μBq/cm3 = 0.000007 Bq/cm3まで薄められていることになります。つまり,実際に129ヨウ素の年摂取限度である9.1.E+03Bq/年分をこの水から摂取するためには1.3E+09cm3,つまり130万リットル飲まなくてはならないということになります。


ついでに,これらの値をシーベルトに換算してみましょう。ベクレルからシーベルトへの換算は(先ほどの表の中にも引用されているようなんですが)文部科学省で出している平成十二年科学技術庁告示第五号(放射線を放出する同位元素の数量等)の別表第1を使いました。


ということで,ここに掲載されているヨウ化メチル以外の化学形態における経口摂取した場合の実効線量係数1.10E-04mSv/Bqを用いて計算すると,0.000007 Bq/cm3 x 1.10E-04mSv/Bq = 7.7E-10 mSv/cm3 という値が出てきます。1立方メートル(=1,000リットル)分かき集めても,0.00077mSvにしかなりません。これは,自然界に通常存在する自然放射線量やその変動誤差とは,正直比べるのもばかばかしいくらいに小さな値です。


排出量の大きいトリチウムの場合でも,先ほどの計算結果から一番濃いところでも増加分は2.85Bq/cm3ですので,1Lあたりの増加分は2.85 Bq/cm3 x 1,000cm3 x 1.80E-08 mSV/Bq = 0.05μSv。つまり,365日毎日この海水を1Lずつ飲み続けてもトータルで0.019mSvにしかなりませんし,そもそもトリチウムが人体中に蓄積されないというのは,前述したとおりです。


もちろんこの値は再処理工場が申請通りの排出量で通常操業を行い,事故などを起こさなかった場合の計算値ですので,申請通りの操業を行っているのか,万が一の事故が起きていないか,事故が隠蔽されていないかどうかなどを監視する必要があります。


しかし,現在様々なサイトで紹介されている数字を元に計算しても,三陸沿岸が放射能で汚染されていると言うことはできません。あまつさえ,三陸産の魚介類がすでに放射能で汚染されているかのような文言を並べ立てるなど言語道断です。このような数字の遊びで,不要な危機感と全く不要な風評被害を増大させるようなやり方は決して許していてはいけないと思います。


本当は生体濃縮についても書こうかと思っていたのですが,長くなりすぎましたのでその辺は次回で。

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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 13:04:12 | Trackback(0) | Comments(10)
コメント
はじめまして。
コスモクリーナーと申します。
出稼ぎに行っていて、このブログが出現したのを知りませんでした。
遅れた話題で申し訳ありませんが、コメントさせてください。

まず最初に、「高レベル放射性廃液」という表現には驚きです。
もうちょっと考えて言葉を選んでもらいたいものです。

ところで、大量の海水で薄まることを前提とすれば、再処理工場は、人体に影響を与えない程度の放射性物質を、どれくらいの量を海へ流すことができるのですか?
ヨウ素129ならば、130万リットル飲むことで、人体に影響が出るようですから、つまり、今よりも130万倍以上放出しないと影響がでないということになりますが。
2007-08-15 水 20:45:25 | URL | コスモクリーナー [編集]
六ヶ所村再処理施設で被爆して亡くなってる方がいるのですがそれについてどお考えてますか?
2008-01-16 水 11:19:35 | URL | お腹いっぱい [編集]
http://www.youtube.com/v/Lt9hXuEfu7w&rel=1

貴殿の言う通りなら問題は無いと言う事でしょう?

上に貼ったのは見られましたか??
2008-01-16 水 11:35:31 | URL | myp☆ [編集]
コメントありがとうございます

>お腹いっぱい さん

そんな事故があったのですか?「被爆」ではなく「被曝」だとは思いますが,死亡に至るような被曝事故があったとしたら非常に重大です。まだ私にはその情報を探せていませんので,ぜひその情報源を教えてください。

>myp☆ さん

そうですね。YouTubeの方も拝見しましたが,出てくる話は全て私のブログ上で検証したものばかりでした。

ですので,それ以上の何か大きな問題や見逃しているポイントがないのであれば,地震による建物の崩壊とかテロによる破壊とか,特別何か大きな事故が起こった場合は別ですが,「通常稼働している場合に限れば」急に何かがどうこうなるような問題は起きないと思います。

ただし,それもこれも現在申請している認可済の放出量を守ってくれていなければ話になりません。その辺についての監視活動は行う必要があると思います。
2008-01-16 水 12:15:41 | URL | ぷろどおむ [編集]
おお、凄いレスポンス早いです。
コメント返しありがとうございます。

まぁ、こんな意見もありますので見て下さいね。

http://mytown.asahi.com/aomori/news.php?k_id=02000310801070002


2008-01-16 水 12:41:47 | URL | myp☆ [編集]
>myp☆ さん
ええ,ちょうど仕事の時間が空いたものですから(^^;

河野さんの意見も拝見しました。こういう意見も当然あると思いますし,こういう議論はもっともっと行うべきだと思います。特に河野さんは政策をいじれる立場にある人なのですから,ぜひ自然エネルギーの普及・開発を促進できるような政策を,もっともっと積極的に進めていっていただきたいと思います。

しかし,他のエントリでも書いていますが,

再処理工場が不必要なことと,風評被害を拡大させることは全く別物です。

河野さんのような議論は大歓迎ですが,ありもしない汚染を,致命的な被害がすでに広がっているかのように喧伝し,あまつさえそれで自分自身が小金を稼いでるような連中は唾棄し,軽蔑すべき存在であって,原子力問題をきちんと考えていく上で邪魔以外の何者でもありません。

こういう連中がバカなことを言いふらして悦に入っているから,推進派につけ込まれる隙がどんどん増えていきますし,反対運動がうさんくさいものと思われてしまう原因になるんです。

地球温暖化を初めとする環境問題,我々が生きていくためのエネルギー問題は,様々な問題を抱えている重要な問題です。現在の生活レベルを捨て,人類を半減させてでも地球を守ろうという意見もあるようですが,そんなのはあまりにハードランディング過ぎます。我々にもっとも必要なのは,どの部分のリスクを避けるためにどの程度までベネフィットを捨てられるのか。どのベネフィットを得るためにどこまでリスクを許容できるのか。そう言う部分についての,早急で真摯な議論だと思います。
2008-01-16 水 13:00:57 | URL | ぷろどおむ [編集]
六ヶ所村や青森の作物、海産物にすでに放射性物質が含まれてると発表されてますが(微量なので大丈夫だそうですが…)微量でも嫌です。こうゆう被害って10年以上先でないと結論はでない気がします。青森には夏に海から吹く冷たい風ヤマセがあり煙突からでた物質が地面に押し付けられたりする現象があるのも心配です。最近ヒラメからも検出されたそうです…
まだ本格稼働してないけどもうすでに影響はでていますよね。微量だから大丈夫という青森県の作物や海産物と他の県でできた作物や海産物…消費者はどちらを選ぶのでしょうか?少なくとも青森産は避ける人は少なくないと思います
2008-06-11 水 09:04:33 | URL | 匿名希望 [編集]
管理人様、こんにちは。
管理人様の六ヶ所村やプルトニウム関連も読ませて頂いたのですが、ちょっとわからない事があります。

http://ja.wikipedia.org/wiki/六ヶ所再処理工場

こちらに、プルトニウムが大気、海洋に放出という記載があります。
次に検索で見つけた

http://oshiete1.goo.ne.jp/qa4798352.html

こちらに、プルトニウムは体外排出がないとあり、そんなわけはないですね。
そこで見つけたが、

http://www.atomin.go.jp/atomin/high_sch/reference/atomic/plutonium_science/index_05.html

とぃう、公的っぽいものです。
このあとみんというサイトで言うと、

>人体には防御機能が備わっていて~大便とともに排泄されてしまう

とあります。これはなるほどですが、その下を見ると

>どの経路であっても、いったん体内に吸収されたプルトニウムは数十年にわたって体内に留まり、排泄は非常に少なく~

とあるんですね。そこで、

http://ja.wikipedia.org/wiki/プルトニウム

も見たのですが、さきのサイトとWikiiと両方見て考えるに、経口と傷口からの摂取は専門従事者の他にはなく、吸入による危険がほとんどである、という事かと思います。

あとみんには、経口で消化吸収率は低く吸入の危険がほとんどであるが、その際にも食道へ追いやって便となりだされる、とあります。
ところが何十年という記載が下記にある。

ただ、プルトニウムWikiには骨や肝臓に行った時に何十年、という記載があるため、あとみんの方の何十年という意味は、「プルトニウムは原発や再処理工場稼動により日々海洋や大気に放出する程度では、大半は肺などに留まる事はなく便となって速やかに排出されるが、されなかったものに関してのみ肺や骨や肝臓へ行った後、何十年も残る。」
という意味なのでしょうか?

それとも、通常稼動では体内に何十年も残る事はなく、速やかに人体からは排泄するが、事故など何か起きた時のみ、それでもほとんどのプルトニウムは迅速に体外へ排出するが、残ったものが何十年も蓄積する可能性がある、という事なのでしょうか?

2009-08-03 月 17:34:29 | URL | 匿名で [編集]
Re: 管理人様、こんにちは。
コメントありがとうございます。

この記述を読み解くキーワードは「吸入」「摂取」「吸収」という一見すると同じ子とを行っているような言葉の違いを理解することにあると思います。

というわけで,最後の段落に書かれていた通りのご理解であっていると思います。つまり,「(呼吸器系に)吸入」したり,「(消化器系などに)摂取」したりしたプルトニウムのうち,ごく一部が「(体内に)吸収」されることがあり,吸収された場合は骨組織などに入り込んで体外に排出されにくくなる,と読むのが理解しやすいかと思います。

ただ,吸収されたとしてもどのような健康被害が現れるかは,やはり量的な問題になってきますので,少なくとも日本において「通常稼働している」再処理工場や原子力発電所から排出される程度の量では,健康被害が起こる可能性はほとんどゼロであると思っても良いくらいです。

センセーショナルな文言に惑わされず,本当に問題視しなければならない部分を見極めることが,今一番大切なことだと思います。
2009-08-03 月 21:42:34 | URL | ぷろどおむ [編集]
返礼
やはり、そうですか。
ありがとうございます。
2009-08-05 水 03:06:31 | URL | 匿名で [編集]
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