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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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日本の安全基準は本当に緩いのか?
<2011/04/12追記:このエントリ中で一部表現に不十分なところがあります。それらについての補足説明などを別エントリに上げておりますので,そちらもご参照下さい>

もるもるさんからコメントをいただきました。ちょっと長くなりそうなので,エントリにして少しずつコメントを付けさせていただきたいと思います。

かなり、ウソが書かれているような気がします。
日本が定めた暫定基準値は、国際指標の緊急時の摂取基準値すら上回っていますし、暫定基準値は平時の基準値と比べれば数百倍といった所です。暫定基準値とは、1日2日ならば影響はないが1年も食べたら影響が出るかもしれないと言う極めて危険な数値です。


ここで仰っている緊急時の摂取基準値とはどこの何という基準値を指していらっしゃるのでしょうか?ちなみにWHOから正式に出ているコメントでは,ヨウ素131についてIAEA の定める原子力危機の際の運用上の介入レベルは3000 Bq/kgであり,日本の基準はそれよりも厳しいものである紹介されていますが,一応元々の文書もご紹介(リンク先PDF P.43)しておきます。これらの値はご指摘の通りこれ以上高い値のものを1年以上摂取し続けると健康にリスクを生じる可能性があるレベルとして設定されている値です。なので,もるもるさんのご覧になっているものと同じ基準から設定された基準値を見ているはずなのですが,このように食い違ってしまっているのは何故でしょう?コメントをいただいた私のエントリは,このIAEAの基準値を参考に話をさせていただいておりますが,もしよろしければもるもるさんご指摘の「国際指標」についてご教示いただければと思います。

ただし,現実問題としてこのエントリで話題にした東京の水道水も一時的に,さきほどご紹介したIAEAの基準値より一桁下の独自基準よりさらに下の乳幼児向けの基準値を超えましたが,翌日にはその独自基準値を下回りました。唯一成人への独自基準値を超えた福島の川俣村も現在では基準値を下回り,すでに飲用可能であるという話を聞いております。ですので,もるもるさんがご心配している「一年以上摂取し続けなければならない」という状況は,今後原子炉が大爆発するような事態がなければ回避されるのではないかと思います。

また,ついでですからご紹介しておきますが,当初「WHOの基準は1 Bqだ」などという話が出回りましたが,こちらはおそらくこの文書の内容が誤解された結果だと思います。こちらのPDFでP.202から先の部分で「ガイダンスレベル」についての説明があり,P.203の表9-3中でI-131は 10 Bq/kgと紹介されております。またP.204では「これ以下では対策を取る必要がない放射線レベル」として「全β放射能1 Bq/L」という値が紹介されています。おそらく最初の話はこの両者がどこかで混同されて伝わった話なのではないかな?と推測しています。しかし,これらの値は最低でも過去一年以内に原子力事故が起きていない場合の基準値,及び核種毎の存在量分析などの特別な対応を開始するための基準値ですので,今回のような事例に適用するのは不適切です。また,今回のような緊急時に用いるべきとされているIAEAのOIL-6という基準ですが,こちらの値についても「この値を下回れば乳幼児、子供、妊婦を含め、誰が飲んでも安全である」と明記されています(P.52 11.36)。また,仮にこの値を上回ったとしても,代替となる安全な食糧,牛乳,水が入手不可能なために,摂取制限すると深刻な栄養失調や脱水症状が起こしまうのであれば,代替となるものが入手可能になるまでの短期間摂取しても良い,という記述(P.52 11.37)があります。そして,このOIL-6の値は全ての食料・牛乳・水が汚染されていることを前提にし,最も弱いもの(乳児,妊婦)などの安全を守るために設定された値であり,これを超えたら全ての人にとってすぐに危険であるとは限らないという意味のことも書かれています(P.52 11.38)。

私は以上のような情報を元に判断し,現時点で流通している食品に関しては十分安全が担保されていると認識しております。ご理解いただけましたでしょうか?

次の話題に移ります。

福島とチェルノブイリを比較した場合、ほぼ同じ量の放射性物質の飛散がありますし、外部被ばくに過ぎない宇宙線の影響と内部被曝のおそれがある放射性物質の飛散を混同することは危険な事です。


この辺りは誤解されている方が多いのですが,外部被曝にしろ内部被曝にしろ「シーベルト(Sv)」という値を使って比較すれば,体へのダメージは数値だけでその大小を表現できます

というか,様々な種類の放射線や被曝形態を比較するために産まれ,活用されているのが「シーベルト」という単位ですので,せっかくシーベルトを単位として使っているのに比較できないと逆におかしい話になってしまいます。もちろんベクレルからシーベルトに換算する際にどのような被曝をしたかを想定したかによって出てくる値も違ってしまいますが,基本的にこのブログでは,食品等に関する放射能(Bq)を当量線量(Sv)に換算する際にはこちらのエントリのように,経口摂取して内部被曝をしたことを想定して計算しています。ですから,これらの値をそのまま比較していただいてかまいません。

最後の話題に移ります。

臨床データが殆どないわけですので、少なくとも半減期が短い放射性ヨウ素の影響が少なくなるまでは安全だと煽る行為は無責任な行為に映ります。安全かどうかわからないので安全だと煽るのではなく、危険かもしれないので自己責任で行動せよと言うのが正しいんじゃないでしょうか?危険かどうか誰もわからないのですから・・・


残念ながら,過去の人類の歴史で発生したいくつかの事例により,それなりの臨床データが存在しています。特に今回参考になるのはチェルノブイリでの事例でしょう。チェルノブイリの場合,福島とは異なり短期間に集中的に極めて大量の放射性物質が爆散しました。その結果,当時周辺で生産された牛乳を飲んだ子供たちの間に無視できない割合でI-131由来と思われる甲状腺ガンが多発したという事例が見られています。これは大変に不幸なことではありましたが,同時にそれ以外の核種が影響を及ぼしたと考えられる事例も今のところ見いだされていないのも事実です(参考記事)。またチェルノブイリ事故で被曝治療に当たった専門家からのこのようなコメントもあります。また多少状況は異なりますが,広島・長崎から得られた知見はこちらを参照して下さい。

最初の参考記事中でも話が出ていますが,低線量被曝の健康影響については今現在確固たる見解が出ていないのは事実です。私も以前低線量被曝に関するエントリを書かせていただきました。もしお時間がありましたらそちらも参照していただきたいのですが,ではなぜ低線量被曝の健康影響についての研究が進んでいないのでしょう?原発を推進したい人たちの陰謀なのでしょうか?それとも研究者たちの怠慢なのでしょうか???

いいえ。それは世の中には放射線以上に健康を阻害するリスク要因があふれているからです。

放射線によるリスクとして最も注目を浴びているのはやはり発がんリスクでしょう。しかし,その発がんリスクとして最も代表的なのは,放射線などではなく喫煙や飲酒です。また排気ガスなどに代表される(放射線以外の)環境汚染も上げられます。もちろん一番無視できない要因は「加齢」ですが,低線量被曝から発生するリスクは,これら我々が生活をしていく上で非常に避けにくい様々な要因の中に埋もれて見えなくなってしまう程度のリスクでしかない,というのは低線量被曝の健康影響を研究している人たちの中での共通認識であると理解しています。

現在国内外問わず,様々なスクリーニングや環境モニタリングが行われています。そして,そこから得られるデータはいずれも,現時点では以前から存在していた様々なリスク要因を大きく超えるほどのリスクは発生していないことを示しています。

もちろん,いつも言っていますが,これは未来永劫大きなリスクが発生しないことを保証するものでは無いことは確かです。しかし,お茶碗からお米を二口や三口分取り除いたからと言ってダイエットには何の効果もないことと同様に,大騒ぎする必要のないリスクを針小棒大に取り上げて大騒ぎしても無駄な風評被害が広がり不必要な苦しみを与えられる人が増えるだけで何のメリットもありません。

現在の状況は,非常に憂慮すべき状態で決して楽観できるものではないという認識については同意いたします。このような状況下では「安心」できないという方が大勢いるであろうことも理解いたします。しかし,現在示されているデータの全ては,「安全」は十分に担保されていると考えるべき範囲のものです。

現状がいろいろな不安に駆られる状況であることは間違いありません。このブログはその様な不安を少しでも解消するための一助となれば,と言う思いで書き綴っております。説明が足りなかったり,表現が稚拙だったりでご理解いただけない部分も多いかとは思いますが,その様な場合には,またコメントいただければと思います。もるもるさん以外の方でもかまいません。私でできる限りの対応をさせていただきたいと思っております。どうかよろしく御願いいたします。


<2011/04/12追記:このエントリ中で一部表現に不十分なところがあります。それらについての補足説明などを別エントリに上げておりますので,そちらもご参照下さい>
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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 12:56:56 | Trackback(0) | Comments(7)
コメント
日本の基準
はじめまして。
ブログ拝見して色々と参考にしております。

被爆が原因での発癌の原因について、よく飲酒や喫煙と比較した記述を方々で拝見します。ただ、それらについては今までの生活環境を前提とした比較の話ですから、不慮の事故が起こり環境が悪化(少なくとも事故前よりは)した今、上記の比較についても見直す必要があるのかなと思いました。

あと、1つ質問をさせてください。

>P.204では「これ以下では対策を取る必要がない放射線レベル」として「全β放射能1 Bq/L」という値が紹介されています。

上記、「これ以下では対策を取る必要がない放射線レベル」に該当する基準は、そもそも日本に存在するのでしょうか?するのであれば、Bq/Lで表すといくらになるのでしょうか?

2011-04-08 金 18:02:46 | URL | yuichi [編集]
お邪魔します。

もるもるさんの代返みたいになりますが、

> (1) ここで仰っている緊急時の摂取基準値とはどこの何という基準値を指していらっしゃるのでしょうか?

WHOでしょう。原文読まれたことありますか?
もし読まれたことがないならば、早急に読むべきです。

> IAEAのOIL-6という基準ですが,こちらの値についても「この値を下回れば乳幼児、子供、妊婦を含め、誰が飲んでも安全である」

原文"during the emergency phase"をわざとスルーしていますか?

突っ込みどころ満載で困っていますが、まずは上記項目についてお答えください。
もるもるさんはやんわりと発言していますが、私は厳しく言います。
科学的根拠の曲解に基づく誤った情報の伝聞は、直ちにやめてください。
あなたの論評を信用した人に不利益が発生した場合、あなたに責任は取れないでしょう?
悪気がないのにこうやって誤った情報を広めるのが、一番最悪なパターンです。
2011-04-08 金 21:35:13 | URL | たろう [編集]
コメント失礼します。

あちこちで3月17日以降緩められた基準値がWHOの300倍、ドイツの600倍、アメリカの2700倍に相当するものだ、という記述を見ます。
基準値はWHOが1Bq/L、ドイツガス水道協会が0.5Bq/L、アメリカは0.111Bq/Lである、とされています。(拡散されていて一次情報がわかりません。)

が、一応WHOの今回の日本の基準値についてのコメントを発見しました。
http://www.who.int/hac/crises/jpn/faqs/en/index8.html

日本語訳はこちら。(英語のものが優先する、とあります。)
http://www.who.or.jp/index_files/FAQ_Drinking_tapwater_JP.pdf

これを読みますと、WHOも通常のガイドライン10Bq/Lは現在の日本において適用すべきものではない、としていますし、300Bq/Lなど他の非常時の基準値でも充分に健康被害に配慮した厳しい値である、としています。

私はこのWHOのコメントを見て今の所大丈夫かな、と考えていましたが、それではダメなのでしょうか?

確かに私たちはこういった情報を判断基準にして行動いたしますが、それでも今回このWHOのコメントを信用し、万が一自分に不利益があったとしてもWHOに責任を求めるつもりはありません。このブログについても同様です。
何故なら、信用するかどうか、行動するかどうかを決めるのは自分だからです。

横レス失礼いたしました。
2011-04-09 土 03:44:19 | URL | パコ [編集]
Re: タイトルなし
たろうさん,コメントありがとうございます。
解りにくい文章しか書けず申し訳ありません。ぜひ,いろいろとご指摘いただければと思います。

> > (1) ここで仰っている緊急時の摂取基準値とはどこの何という基準値を指していらっしゃるのでしょうか?
> WHOでしょう。原文読まれたことありますか?
> もし読まれたことがないならば、早急に読むべきです。

これは本文中でリンクを貼らせていただいた「WHO飲料水品質ガイドライン」(http://whqlibdoc.who.int/publications/2004/9241546387_jpn.pdf)とは別のものでしょうか?だとすれば,まだ見つけられておりません。申し訳ありませんが,ご教示いただけると助かります。ぜひ参考にさせていただきたいと思います。

> > IAEAのOIL-6という基準ですが,こちらの値についても「この値を下回れば乳幼児、子供、妊婦を含め、誰が飲んでも安全である」
> 原文"during the emergency phase"をわざとスルーしていますか?

前述の「WHO飲料水品質ガイドライン」にも,「事故直 後の1年間は、BSS(IAEA, 1996)並びにその他のWHOおよびIAEAの関連刊行物(WHO, 1988; IAEA, 1997, 1999)に記載されているように、食材に関しての一般的アクションレベルが適用される。」と書かれておりますので,現在が正にその"during the emergency phase"だと理解しているのですが,いかがでしょうか?

> 突っ込みどころ満載で困っていますが、まずは上記項目についてお答えください。
> もるもるさんはやんわりと発言していますが、私は厳しく言います。
> 科学的根拠の曲解に基づく誤った情報の伝聞は、直ちにやめてください。
> あなたの論評を信用した人に不利益が発生した場合、あなたに責任は取れないでしょう?
> 悪気がないのにこうやって誤った情報を広めるのが、一番最悪なパターンです。

ご批判ありがとうございます。真摯に受け止めたいと思います。

日頃からなるべく曲解や誤りの無いように努めているつもりではありますが,多分に誤解していたり知識が足りない部分があるかと思います。ぜひ,他の部分についても続けてご指摘いただければと思います。どうかよろしくお願いいたします。
2011-04-09 土 15:55:44 | URL | ぷろどおむ [編集]
Re: 日本の基準
yuichiさん,コメントありがとうございます。

> 被爆が原因での発癌の原因について、よく飲酒や喫煙と比較した記述を方々で拝見します。ただ、それらについては今までの生活環境を前提とした比較の話ですから、不慮の事故が起こり環境が悪化(少なくとも事故前よりは)した今、上記の比較についても見直す必要があるのかなと思いました。

どうでしょうか。喫煙や飲酒は大きな発がんリスク要因ですが,もちろん人それぞれ体質や体調などもありますので,実際に生じるリスクを値で表そうとすれば,必ず上下に変動する幅が存在します。そして,今現在生じている放射線のリスクは,この喫煙や飲酒から受けるリスクが変動する幅以下のものに過ぎませんので,今のままで推移すれば大勢には影響を与えないというのが現状です。あとは社会がその様な規制を受け入れてくれるかどうかでしょうか?もちろん,あえてこれを理由に喫煙や飲酒によるリスクを減少させようというのも手の一つかもしれませんが,風評被害などを考えるとこれ以上放射線を悪者に仕立て上げるのもどうかという印象を持っています。

> >P.204では「これ以下では対策を取る必要がない放射線レベル」として「全β放射能1 Bq/L」という値が紹介されています。
>
> 上記、「これ以下では対策を取る必要がない放射線レベル」に該当する基準は、そもそも日本に存在するのでしょうか?するのであれば、Bq/Lで表すといくらになるのでしょうか?

日本の場合は,文科省が設定している「環境放射線モニタリングに関する指針について」(http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19890330001/t19890330001.html)に基づいて様々なモニタリングが行われておりますが,飲料水についてはスクリーニング抜きで四半期毎の核種分析を行うようにと記述されています。
なので,WHOの基準よりもかなり厳しい基準で測定がされていると言って良いのではないかと思います。

ご参考になりましたでしょうか?他にも何かありましたらよろしく御願いいたします。
2011-04-09 土 15:59:53 | URL | ぷろどおむ [編集]
お邪魔します。

> 過去一年以内に原子力事故が起きていない場合の基準値,

(1)これは本当ですか?ソースを提示願います。
原発事故が起きて1年以内等の緊急事態に限定した場合の閾値が100bq/Lではないんですか?
(WHO Radiation Emergency Guidelines P13 Table 4.)

> 「この値を下回れば乳幼児、子供、妊婦を含め、誰が飲んでも安全である」

(2)OIL-6の意味を理解していますか?
「もう飲んではいけない限界の値」のことなんですが・・・。
個人的には、日本の暫定基準値はWHOの緊急基準値である100bq/Lを採用すべきと考えます。

(3)ちなみに貴殿は、300bq/Lの飲料水指標が年間総被ばく量換算でどれくらいのレベルを想定しているか、ご存知ですか?

> 世の中には放射線以上に健康を阻害するリスク要因があふれているからです。

(4)これも本当ですか?
例えばBEIR VII 報告等は有名ですが、貴殿はこの報告についてどのような見解をお持ちですか?
閾値なしの直線モデルを考えれば、ある閾値をもって安全だとは言えませんが、これについては如何でしょう?

※議論発散防止のため、複数回答が難しい場合は数字の若い順から優先で回答願います。
2011-04-12 火 01:28:34 | URL | たろう [編集]
Re: タイトルなし
たろうさん,引き続きコメントありがとうございます。

いただいたご質問に対する回答を別エントリ「続・日本の安全基準は本当に緩いのか?(http://preudhomme.blog108.fc2.com/blog-entry-153.html)にさせていただきましたので,お手数ですがご参照いただければと思います。

どうかよろしくお願いいたします。
2011-04-12 火 18:42:25 | URL | ぷろどおむ [編集]
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