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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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合成界面活性剤は魚に対して毒なのか
あんなさんからコメントをいただきましたが,いつものように長くなったのでエントリにします。

ご質問なんですが、人体には影響がなくても、水中で生活する生き物への影響は大丈夫なのでしょうか??
娘が皮膚が弱いのもありますが、環境のことも考えて、現在は合成洗剤やシャンプーなどは使っていないんです。
環境への影響もさほど心配ないのでしょうか…。



こちらのエントリでも少し書いたのですが,界面活性を持つ物質は,水生動物に対して毒性を示すことが多いです。これは,物質そのものが持つ毒性ではなく,洗剤に必須な「界面活性」という性質に由来するものですので,合成界面活性剤だけではなくいわゆる「石けん」も界面活性を持つ以上は避けることは出来ません。

ただ,実際の河川(特に下流域)のように,金属イオンを大量に含む水圏中ですと,石けんはいわゆる「金属石けん」となって沈殿しますので,界面活性剤が持つ水性毒性を示しにくくなります。でも,金属石けんというのは要するに「石けんカス」のことですので,以下略。という感じです。

さて,合成界面活性剤というと非常に幅の広いものになってしまいますので,とりあえず悪の権化扱いされているラウリル硫酸ナトリウム(SDS)についてお話しします。

こちらのMSDSによれば,魚毒性は1.8mg/Lとなっております。”Daphnia agna”というのはミジンコのことなんですが,このデータはこの濃度のSDS水溶液中にミジンコを48h(このMSDSでは46hとなっておりますが,通常この手の試験は48hで行われますので誤植かもしれません。参考:ミジンコ急性遊泳阻害試験の項)入れると,半数のミジンコがまともに泳がなくなることを示しています。

普通のボディシャンプーなどにどのくらいの界面活性剤が入っているのか詳しいデータが手元にないのですが,SDSが界面活性を持つために必要な臨界ミセル濃度(CMC)はだいたい8 mmol/L=2.3 %程度になるので,多めに見積もって5 %とします。すると,洗剤として36 mg/Lが,洗剤の遊泳阻害半数影響濃度 EC50となります。

通常,ボディシャンプーの使用量は一回当たり4~5 g程度でしょうか。仮に5g 使ったとすると,EC 50以下の濃度にするために必要な水は約140Lになりますので,一般家庭用の浴槽1杯分弱と言う事になりますから,普通に入浴した際に出てきた家庭排水中で魚を飼うのは無理があるかもしれません。

しかし,家庭排水というものは環境に出るまでに十分に薄められるものですし,マンションなどの集合住宅であったり,下水道がきちんと整備されている状況であれば,途中で浄化処理なども行われています。なので,もちろん,娘さんのお肌の状態が最優先なのは言うまでもないですが,環境のことだけを言えば,それほど過敏になる必要はないかと思います

ところで,環境のためにもお肌のためにもお財布のためにも(^^; 洗剤は使いすぎることなく適切な量を使うのが望ましいのは言うまでもありませんが,環境のことを考えるのであればもっと先に考えなくてはいけないことがたくさんあります。

私は,環境を守る上でまず一番気をつけるべきことは,「ゴミはゴミ箱に捨てて,専門の機関・業者に処理を依頼する」と言う事だと思っています。

本当に簡単なことで,きちんと守れている人はたくさんいると思います。でも,守れていない人はもっとたくさんいるというのは,残念ですが事実です。

産業廃水・産業廃棄物については,厳しい規制が敷かれ,厳格な管理体制が義務づけられています。家庭排水についても,全国に数多く設置されている下水処理場ががんばっていますし,家庭で使われる様々な工業製品も環境負荷がなるべく低くなるような製品作りを目指し,企業は努力し続けています。

もちろん,産業排水・廃棄物は有害物質の濃度も高く,大量でもあるため規制されるのは当然です。家庭排水・廃棄物も有害物質の濃度は低いですが,量的には産業排水・廃棄物にひけは取っておりません。

でも,空き缶やタバコ,プラスチックゴミやその他様々なものが道ばたに,山中に,河川に,海辺に捨てられています。

いくら様々な企業が工場からの排水・廃棄物を浄化し,製品に含まれる有害物を減らしていったとしても,どんなに家庭から有害な物質がなるべく環境中に出て行かないように気をつけても,どんなに自治体が一生懸命に下水処理場を建設しても,そういった廃棄物処理ルートに乗せずに直接環境中にゴミを出してしまったら,何の意味もありません。なにしろ直接環境中に放出されるわけですから,下水道が整備された家庭で合成界面活性剤を使うとか使わないとか,そんなものは完全に誤差に入ってしまうような世界になります。これではいくら細かい努力をしても何の意味もありません。簡単にできるけど徹底できていないことを徹底する。スポーツにおける反復的な基礎練習同様,こういったことが一番大切なんじゃないかな,と思います。

あと,環境負荷と言う問題を考える時に忘れられがちなものに「生産時のコスト」があるのではないかと思います。

環境を気にする方々は一般的に「大企業による大量生産品」を嫌う傾向があるように見えます。曰く「効率最優先であり,環境に優しくない。非効率でも環境に優しい製品を使うべきである。」このような主張をされる方は,非常に数多くいます。

でも,よく考えてみて下さい。安価に効率優先で製品を作るというのはどういう意味ですか?

これは,より少ない原料とより少ない労力によりモノが生産されていると言う事に他なりません。つまり同量を生産する場合,必要とされる環境負荷がより小さいことを意味しているわけです。いくら非効率な生産方法が,機械や電力をそれほど使わずに生産しているとしても,それに携わっている人間は霞を食べて何も排泄せずに生きていけるわけではありません。生産された物品一個あたりに消費されている人間の労力は,大量生産品とは比較にならないほど大きなものです。

もちろん非効率な生産方法では,大量生産は不可能ですので,現実問題としての環境負荷は小さくなるかもしれません。しかし,生産されたものから得られるメリットも極めて限定的になるわけですから,そのような比較は全くフェアではありませんし,非効率な生産方法しか持たない社会では少数の人間しか養うことが出来ないと言う事は,産業革命によりどのくらい人口が増えたかを考えれば,火を見るよりも明らかです。

今の日本の社会がこのように恵まれた環境にあるのは,石油という様々な利用価値を持つ効率的な素材を,高い技術力により最大限有効活用した結果であり,この日本に暮らしている人は,その恩恵にあずかって暮らしていることをもっと意識すべきではないかと思います。正直,こちらのエントリでも少し書きましたが,いわゆる「エコでロハスな暮らし」が,いかにエネルギーを浪費していて,環境に対する負荷も非常に高い贅沢な暮らしであるかと言うことを感じる感覚が,今の日本人には足りていないのではないか,と思っています。

子供が無事に生まれるように様々なお祈りをし,無事に産まれれば神に感謝し,3歳5歳7歳と順調に育てばさらに盛大にお祝いをしたくなる社会。そして,ある程度育った子供は労働力として活用しなければ生きていけなかった社会。30以上での出産なんて考えられず,もっと若いうち(14~15歳)から結婚して出産を意識しなければならなかった社会。出産に伴うリスクを乗り越えてでも,新たな労働力の誕生を期待しなければならなかった社会。人生50年。もしも60まで長生きできたら,親族をあげてお祝いをしたくなる社会。そのような社会と,出産時の事故が一大ニュースとなり,医師に無謬性まで求められてしまう社会。また,餓死や貧困が悲劇としてセンセーショナルに報道され,人口構成の高齢化が社会問題になってしまうような社会。どちらが「生きやすい」社会なのでしょう。

我々は,現代の世界においてすら,おそらくもっとも高いレベルで恵まれている社会の中に暮らしていることを,きちんと自覚しなければならないと思います。
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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 17:55:20 | Trackback(0) | Comments(2)
コメント
ぷろどおむ様
ありがとうございます。
魚などへの影響はさほど心配することはないんですね!川に直接排水を流してるわけじゃありませんもんね(^_^;)
職場では合成洗剤を使っているので、後ろめたい気持ちがありましたが、これで安心しました!私も皮膚が丈夫じゃないので、手袋はめて使用しないとひどく手が荒れちゃいますが(^_^;)
家では合成洗剤だとやはり娘がかぶれてしまうので、洗濯には使えませんが、食器洗いなどは神経質にならなくてもよいとわかり、気が楽になりました。もちろん汚れはしっかり拭き取ってから、ごく少量を心がけてます。
ゴミ…どうしてポイ捨てできるんでしょうね…。やはり小さい頃からの躾が重要ですね!そのゴミがどういう影響を与えているか勉強させることも大切ですね。
私もエコ大好き人間ですιもっと勉強して正しい知識を得なければと思いました(>_<)
今の時代に生きている以上、昔と同じ生活には戻れませんが、便利な恵まれた中で生きているということを忘れないようにしたいと思います。
ありがとうございました。
2009-12-11 金 23:42:21 | URL | あんな [編集]
洗剤の生分解
水道水に洗剤がふくまれているて知ってた。学研の新・水が危ないに載ってたよ。
2010-05-20 木 16:10:18 | URL | kiyodoko [編集]
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