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ぷろどおむ

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元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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毎日新聞 遺伝子組換え作物の連載終了
もうちょっと続くかと思っていたのですが,毎日新聞の連載「食卓どこへ」があっさりと終了しました。

意外と短かったので,この際ですから全部紹介しましょう。

食卓どこへ:遺伝子組み換え/4 消費者に拒否感、不安 広がる反対運動
食卓どこへ:遺伝子組み換え/5止 日本の研究、実用化に壁


全体の構成を見てみると,一応で問題提起,で批判意見,で推進意見を紹介し,全体のバランスを取ったつもりなのかな?と,がんばって好意的に見ることもできるかとは思います。

ただ,全体の論調があまりに偏っているのはとても看過できるものではありませんし,情報の出し方も片手落ちすぎます。

第4弾で議論されている環境への流出という問題は確かに重要な問題なのですが,環境流出の影響を本気で気にしているのであれば,道路周辺にGMO種が落ちているかどうかではなく,道路周辺から拡散しているかどうかを調べなければ意味がありません

現実問題として,道路周辺への落下が防げないとしても,そこの近傍から周辺環境への拡散がなければ特に気にする必要はないのは,ごくごく自明なことだと思います。しかし,この「市民団体」がその様な調査をしているのかどうか,そもそも長年にわたって輸入され,おそらく同じルートを通って運搬され続けた非GMOセイヨウナタネが,この道路からどれほど拡散しているかという状況も調べられているのかどうか。そのような情報すら,この記事からは何一つわかりません。

もし,過去の事例としてセイヨウナタネの拡散がないと言うことがわかっているのであれば,GMOセイヨウナタネでも同様の経過を辿ることが容易に予測できます。現に環境省はそのように予測しているわけですが,それに対してこの記事や市民団体は何ら反証を出すことなく,ただ読者の不安感だけを煽ることに終始しています。

ちなみに農業環境技術研究所が平成18年7月から平成19年6月まで行われた調査の概要が報告されています。

輸入港周辺におけるセイヨウナタネ個体群の調査結果


これによると,セイヨウナタネは周辺群落に侵入した場合でも,競合により他の植物を駆逐して生育域を拡大することはないと考えられる結果が出ています。また,農業環境技術研究所では,毎年度調査結果を公表しており,この調査結果もそれまでの結果に準じた結果が出ているようです。

こぼれ落ちによる運搬路近傍への流出は事実のようです。しかし,これが環境流出問題に発展するかどうかと言うのは,これがさらに拡散するかどうかと言う一点にかかっています。そして,現状その様な事実は確認されていません。この件をさらに問題視したいのであれば,周辺環境へ拡散しているという事実を提示してから議論すべきです。

第5弾は,意外にも全体のほとんどが遺伝子組換え作物肯定派の意見を紹介しています。やはり淡々としたもので,記者の意見や感情などは全く入り込んでいませんが,それでも今現在の日本の状況が以下に危機的なものであるのか,感情的にGMOを排除し続けることでどのような問題が引き起こされようとしているのか,すでに引き起こされているのかというポイントが非常に良くまとめられています。正直,今までの感情的な記事の数々が嘘のように,小気味よく書かれていて,個人的には今までの連載から受けた悪印象が一気に吹き飛んでしまうほどの好印象を持ちました。

だからこそ,最後の一文がなぜこのような文章になったのか,非常に理解に苦しみます。とても残念でなりません。この一文だけで,せっかく抱いた好印象が消し飛んでしまいました。

日本の食卓には輸入されたGM作物の加工品がきょうも並ぶ。研究が制限され、消費者も知らぬ間に、GM開国が進んでいる。


署名がお二人の記者によりなされている記事です。もしかすると,最後の一文と本文を書かれた人は違う人なのかもしれません。だとしても,この最後の一文を書いた記者は,第5弾の本文を読んで何も感じなかったのでしょうか。この文章の後に,この一文が続くことについて,何の違和感も感じなかったのでしょうか。

GMOには,確かに未知の危険性が潜んでいる可能性はあります。しかし,それは新たに遺伝子組換え以外の手法で品種改良された新品種が持つ危険性,さらに言えば長年利用されてきたというだけで,その安全性が確認されたことのない従来種と何が違うというのでしょう。

ふぐのように,一歩間違うと命の危険すらあり得る大きなハザードを持った食品も,適切な処理を行うことで大きくリスクを下げられることを知っている我々日本人は,食品として利用することをためらいません。

欧米人のほとんどが食中毒を怖れて忌避する生卵も,適切な管理をすれば安全であることを我々は知っています。ですから,ごく日常的に食卓に上ります。

毎年のように毒キノコを間違って採集して死亡したり,中毒になる人が後を絶ちません。それでも,食用キノコを正確に選択すればリスクは大きく減ることを知っているため,キノコ取りに行く人が皆無になることはありません。

毎年,貝毒による中毒者が数多く発生しています。牡蛎にあたったという話は,日常的に良く聞く話です。しかし,適切にモニタリングを行い,適切な保存と適切な調理法を用いれば,リスクを大幅に下げられることを我々はよく知っています。ですから,今年もそろそろ店頭に牡蛎が並んでいます。牡蛎の流通を禁止すべきだ,と叫ぶ人はいません。

このように既知のリスクは決して怖いものではないですし,我々もごく自然に数多くの既知リスクを受け入れることが出来ているのです。

また,神ならぬ身の上である我々にとってすれば,未知のリスクは全てのものが内包していると考えるべきものです。第5弾の記事中で宮城大の教授が言っている「どんな食品でも一定のリスク(健康への影響が生じる可能性)があると認識し」というのは,そういうことです。

他の生物から持ってきた遺伝子を組み込んだのが良くないという人もいますが,そう言う人たちは第5弾の記事中にあったような,元々ある遺伝子を利用する形式の遺伝子組換えであれば認めてくれるのでしょうか。こちらのように重イオンビームなどで,元々ある遺伝子を欠損させた形の育種であれば認めてくれるのでしょうか。

GMOは未知の危険性をはらんでいるのは確かに事実です。しかし,同時にほぼ確実に手に入れられるメリットも持っています。

収率の向上,栄養価の向上,塩害や害虫,病気などへの耐性向上,様々なタイプのGMOが研究され,特に発展途上国で利用が進めば多大な効果を上げられることが期待されます。もちろん,日本のように耕地が少なく農業従事者も少ないような状況に対しても大きな効果を上げるでしょう。

第5弾の記事中にもあったとおり,このような未来全てを阻害しているのはすでに「消費者の感情」ただ一点です。技術的な問題,安全性の確認法など様々な部分の問題は,そのほとんどがすでにクリアされてきています。あとは,消費者がその事実を素直に受け入れられるかどうかにかかっています。

現在蔓延しているGMOへの嫌悪感情がここまで肥大してしまった責任は,マスコミの無責任な煽り・報道と,不勉強のまま感情を暴走させてきた一部市民団体,そしてその周囲に群がって小金を稼いできた人たちにあると考えています。

これ以上無駄なコストを支払い続けることを防ぐために,我々は正しい知識を学び,自衛する必要があると思います。
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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 13:20:00 | Trackback(0) | Comments(1)
コメント
小島記者は「誤解だらけの「危ない話」」他多数の著書があり、今の新聞記者の中では唯一といっても良いぐらい科学について正確に報道されています。一方、遠藤記者は多くのメディアに見られるように消費者の不安を煽るだけの記事しか書けていません。
下記のブログでもその無能ぶりが皮肉られています。

【小島正美、遠藤和行】となっているところが泣かせます。小島記者も頭の悪いのを抱えて、ご苦労なことです。
http://www.kenji.ne.jp/blog/index.php?itemid=640

二人の連名で書かれた記事ですが、誰がどこを書いたか一目瞭然です。
2009-11-08 日 10:50:40 | URL | TERPS [編集]
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