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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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例の「あれ」について
 ツイッターの方でも週末に少し書いていたのですが、残念ながら流れていた画像が本物だったと言うことで,もうちょっと長く書くことにして,久々にエントリとして起こしてみました。もちろん話題は、今沸騰中の例の「あれ」です。「あれ」絡みでいろいろ聞こえてきた話についてちょっと思ったことを、思いつくがままに列挙してみます。

1)「鼻血が出たという事実を無視するのか」という批判について
 おそらく、まっとうに批判したり呆れたりしている人の中で、「鼻血が出た」という事実を不認定している人は皆無だと思います。ただ、事故前よりも「有意に高い頻度」で鼻血を出すようになった人が、福島県に「有意な割合で存在する」のかどうかという点が全く明らかになっていないというか、それ以前にそんなデータはどこにもないわけです。

 鼻血がでるという症状が高レベルの放射線を被曝した際に生じるのは事実です。ですが、鼻血なんて言うものの原因はそれこそ山のようにあるわけです。花粉症や風邪などで粘膜が弱くなっていることも原因になりますし,ストレスだって立派な原因の一つです。それを考えれば「鼻血=放射線被曝が原因」というのは、あまりに短絡的な話の展開であって,たとえ「鼻血が出た」のが事実であったとしても,その他の傍証を何も示さずに「被曝が原因」とすれば,批判の対象になるのは当然でしょう。

2)「放射線によるラジカルが原因」という説について
 放射線によってラジカルが発生し,そのラジカルが反応して過酸化水素が発生するのは事実です。そして,人間の体内に大量に水が存在しているのも事実です。しかし,生体内ラジカルの代表選手であるいわゆる「活性酸素」が,通常人体にどのくらいの量存在していて,どのくらいの頻度で発生しているのかという「量的な問題」をちょっと考えてみましょう。

 皆さんもご存知かと思いますが,生物は呼吸を行う際に,細胞内のミトコンドリア内部において自分で活性酸素を生成してしまいます。これは酸素という極めて活性の高い元素を使い,効率よくぶどう糖からエネルギーを産出する機構を作り上げた結果避けることができなくなった,いわば産業廃棄物的なものなわけです。しかし,生物はこれによる悪影響を防ぐための防御システムも獲得していますし,外部から侵入した異物を除去するためのシステム(免疫)に有効利用していたりします。生物って,本当にしたたかですね(^^) まぁ,そういうシステムを獲得できたからこそ光合成細菌による猛毒(=酸素)の大量放出という甚大な環境危機を乗り越え,生物は現在みられるような大きな発展を得ることができたのです。

 一般に,生物の細胞中では様々な原因により活性酸素(酸素ラジカル)が1細胞あたり1日10億個=1E9個程度発生すると言われています。そして,人体が持つ細胞の数は約1兆個/kgと言われておりますので,体重60kgの成人男性であれば約60兆個=6E13個の細胞を持ちます。ということは,活性酸素自体は1E9 x 6E13 = 6E22 個 つまり600垓個発生してるわけですね。

 600垓個と言えばかなり数が大きい気がしてきますが,molに直すと約0.1 molなので実は大した量じゃありません。市販のオキシドール中の過酸化水素の濃度は約3%程度ですので,mol濃度に直せば0.88 mol/kg。先ほどの活性酸素量は体重60kgを仮定してますから,体重1kgに対する濃度で表せば1.7 mmol/kg と,なんと重量あたりの濃度で考えれば500倍も薄いのです。500倍も薄めたオキシドールでは,まともに殺菌ができるかどうか心配になります。逆に言えば,これっぽっちの過酸化水素やラジカルしか処理できないかもしれない,弱っちい防御システムなんか頼りにしちゃっていいのでしょうか??

 では,次にこの量のラジカルを放射線だけで発生させようと思うと,どのくらいの数の放射線が必要かを考えましょう。

 人体の中でも活性酸素が発生し続けていると言うことは,少なくとも同レベルの量までの活性酸素なら,人体は処理してくれそうです。もし「同じ量が余計に加わると全体としては倍の量になってしまうからちょっと心配」と言う方でも1/10000以下くらいなら,少し気が楽になってもらえるかも知れません。

 では,ちょっと計算してみましょう。あいかわらず大ざっぱな仮定の下に粗い計算しかしませんので,ご指摘があればよろしくお願いします。

 さて,とりあえずとっかかりはこちらの資料にします。これを見ると,β線などの低LET放射線を水に当てたときにできるOHラジカルの収率は初期収率で5.6 個/100eV,最終収率で2.7 個/100eV となっています。過酸化水素水の最終収率が0.7個/100eVというデータも掲載されていますが,桁が一つ違います。なので,念のため一番大きな値のセットを使ってしまいましょう。それと,生体内の水に放射線が当たるかどうかや,それまでに皮膚とかで防がれるとかいろんな可能性は全部無視です。やってきた放射線は全部ダイレクトに体内の水分に命中し,ラジカルを発生すると考えます。あと当然ですが,当てられる放射線の強さによって結果として発生するラジカルの数が変わってきますので,今回は一番気になる137Csの値を使うことにします。

 137Csから発生するβ線は,512keVですので,137Cs 1個が崩壊した時に発生した放射線により発生するOHラジカルは,初期段階で28672個,最終段階では13824個となります。生体内で発生する活性酸素が1日6E22個でしたので,これと同じ数のOHラジカルを発生させるためには,初期収率から考えると2.09E18個,最終収率から考えると4.34E18個の137Csがβ崩壊する必要があります。

 次にこのレベルの放射線を出すということはどういうことかを考えますと,今考えているタイムスケールは1日ですので,24 x 60 x 60 = 86400 s で割ってあげます。すると,それぞれ1秒あたり2.42E13,5.02E13個の137Csがβ崩壊していることになります。ところで,1秒あたりに出す放射線の数って,どこかで聞いたことありますよね?そう「ベクレル(Bq)」の定義です。つまり,人体の中で発生している活性酸素と同等レベルのOHラジカルを放射線から発生させようと思ったら,2.42〜5.02 E13 Bq ,要するに数十T(テラ)Bqのオーダーの放射能を持つ137Csが必要だと言うことです。

1/10000としても,10^9 BqつまりG(ギガ)Bqのオーダーです。100 Bq/kgの放射能を持つ食品10,000トン分です。これを一日で1人が食べきるのは,どう考えてもちょっと無理でしょう。かと言って,1 GBq/kgの食品を見つけてくるのはもっと大変そうです。

 次に,いつものを使ってSvに換算しましょう。137Csの経口摂取時の実効線量係数は1.3E-5 mSv/Bqですので,1GBqの137Csの実効線量は13 Svです。めちゃくちゃ大きいですね。当然10 TBqであれば 130,000 Svです。………, とんでもない値ですね。

 この値は経口摂取時の実効線量,つまり食べた137Csが体の中から出て行くまでの間に受ける放射線の影響を示した値ですので,直接較べるのはちょっとおかしい話ではあるんですが,どのくらいの値なのかと言うことをもうちょっと実感しやすくするために,環境放射線と強引に比較してみましょう。同じ放射能を持つ環境中の137Csが出す放射線から受ける影響量は,この実効線量よりはたぶん少なくなるはずなんですが,人体への影響を多めに見積もる分には今回の目的には合致してますので気にしないことにします。というか,そんなささいなズレなんて気にならないレベルで桁がずれてる(^^;; ので,全然問題ないでしょう。

 ということで,考えているタイムスパンを1日から1時間あたりに直すと,10 TBq の137Csの場合で5410 Sv/h, 1 GBqの場合では0.5 Sv/h = 500,000 µSv/hです。執筆時点の東京都の環境放射線量は 0.03 〜 0.07 µSv/h,福島の避難区域内でも数µSv/hのオーダーですから,まるで桁が違う話だというのはご理解いただけるのでは無いでしょうか。もちろん,これが1 sとかのスパンになっても,10 TBqの放射能を持つ放射性物質では1.5 Sv/sですから,このくらいの放射能を持つ放射性物質に瞬間的に遭遇してしまっただけでも,大変な影響が出かねません。1 GBqの場合でも0.15 mSv/sになりますから,あまり長居はできませんね。
 しかも「あれ」に出てきた登場人物のように数時間(?)程度の滞在で13,000 Svなんてのはもちろんのこと13 Svの放射線を浴びようと思ったら,現状の1,000,000倍以上高い空間放射線量が必要なわけですから,どれだけ無茶な環境が必要なのかおわかりいただけるかと思います。というか,13 Svの被曝って普通に即死レベルですけどね(^^;

 ということで,放射線由来のラジカルによる健康被害を考慮することが,いかに荒唐無稽な話なのかということを理解していただけましたでしょうか?というか,放射線によるラジカル発生機構がいかに生体内での反応に較べて非効率なのか,ということにもなるかもしれません。

 さて,他にも幾つかお話しさせていただこうかと思っていたのですが,長くなったので一回切ります。あと,久々のエントリなので,以前にも増して読みにくくなってる気がします。ごめんなさい。というか,読み返してみてもあまりの桁の違いにくらくらしてますが,計算間違いとかしてませんかね?(ぉぃ というわけで,いつものようにご質問やご指摘などあれば,コメントにどうぞ。

追記(2014/5/14)昨日付で続編として「続・例の「あれ」について」を書きました。鼻粘膜に粒子が付着した状況について何となく考察してますので,ご興味があればそちらもどうぞ。

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テーマ:自然科学 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 14:12:06 | Trackback(0) | Comments(12)
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preudhomme_AL

RT @don_jardine: たとえ最初は正義感から行動したとしても、一度「正義の拳を振り上げた自分」を守ろうとすると、そこから「正義」とは何の関係もない自己正当化の泥沼に足を踏み入れてしまう。そしてその泥沼の中で客観性や他者に対する思いやりなどさまざまなものを失ってしまう…
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雑談 | 03:23:33 | Trackback(0) | Comments(0)

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