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ぷろどおむ

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元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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アナログとデジタル,正確なのはどちら?
さて,久々の投稿になるわけですが,今回はこんな話題を少し。

今回の話題をまとめてみようかな?と思ったきっかけは知人との会話の最中に「最近の子供はデジタルな世界になれすぎているせいか,すぐに正確な回答が出てくることばかり求めていて,自分でぐちゃぐちゃ考えるという作業が足りてない。」という発言が出てきたことでした。

一瞬聞き流したのですが,微妙な違和感がぬぐえずにしばらく悩んでいたのですが,その過程でいろいろ考えていたら,ちょっと面白くなったので,頑張ってまとめてみました。あいかわらずそこそこの長文ですが,ご興味があればお付き合いください。

さて,この発言をきっかけに世の中を眺め回していると,やはり世間一般には「デジタルの方が正確」というイメージが定着しているように感じます。でも,その一方でいわゆる「モノ作り」の現場では「職人の感覚」というアナログが高精度な部品や製品の決め手になるなんて言う話も聞きます。ということは,実はぱっと見のイメージとは逆に,意外とアナログの方が正確だったりするんでしょうか?

あ,でも,コンピュータ制御により作られた高精度の金型により部品精度が向上したなんて言う話もやっぱり聞こえてきますよね。それに「デジタル制御」とか「コンピュータ制御」されたものの方が,手作業よりもやっぱり正確なモノが作れそうな気がしますし,そうで無ければ,今現在こんなに普及しているるわけもありませんよね?

さて,なんだか,日頃はさらりと流している部分なんですが,よくよく考えてみるとだんだんわからなくなってきてしまいます。いったいどちらが正確なんでしょう?

では,どちらがどうなのかと言う事を考える前に,まずは「デジタル」って何だろう?と言うことを考えてみましょう。

「デジタル」というと,「0か1か」みたいな二進数的な世界を想像する人が多いかもしれませんが,実質的には「数字」で何かを表現することすべてが「デジタル」であると言う事が出来ます。辞書的な表現だと「離散的な」数値として表現することみたいなことが書かれていたりしますが,ちょっと科学っぽく別の表現で言いかえますと「ある有効数字を持った数値で表現する」という言い方もできるかと思います。

例えばその辺に生えている木の枝の長さを,mmのオーダーまで測ろうと思います。でも,木の枝がきちんと1 mm単位で成長してくれるわけがありませんから,当然ぴったり○○ mmなんて表現ができるわけがありません。ですから,より正確に枝の長さを表現しようと思えば,0.1 mmの桁やそれ以下の桁で表現する必要があるわけですが,どこまで行ってもぴったりそこまでの桁で表現できるかどうかわかりません。もちろん使う道具が定規やメジャーなら0.1 mmの桁が精一杯でしょうし,レーザー計測器なんて使っても必ず最後の桁には正確では無い部分が残ってしまい,きちんと意味を持つ数字の桁はどうしても有限なものになり,厳密な意味で同一化することは不可能です。つまり,程度の差こそあれ,「デジタル化」=「近似」でしか無く,結果的に最後の桁には曖昧さ(=誤差,不確かさ)が残ります。

これに対し,アナログの世界では量は具体的に数値として表さずに連続した量として取り扱います。ですので,ある意味無限の有効数字を持つのに等しい世界になりますから,曖昧さとか「最後の桁」という概念すら無くなります。なのでデジタルのように「近似」ではなく,厳密な意味での「複製」により近いところまでたどり着くことができるわけです。

実際のところ,現実世界に存在するモノが持っている性質のほとんどは連続量,つまりアナログ量です。しかし,アナログの世界では量を数値で表現できませんので,今この値がいくつなのかを表現できません。表現すると言うことはすなわち「デジタル化する」ことです。すなわち「計測する」とか「計量する」という作業は,アナログ量をデジタル量として表現することになりますが,こうしてしまうともはやデジタルの世界です。ですから,アナログの世界の中だけでは前回の事象を客観的に表現することができす,結果的にその再現も非常に困難な仕事になってしまいます。

これに対し,デジタルの世界では(基準さえそろっていれば)0.1と言えば0.1ですから,前回0.1であったものを再現しようと思えば,(ある精度の範囲内で)再現できます。0.1で精度が足りなければ,0.134235…と有効数字を増やしてあげれば,より高い精度で正確に再現することができます。

さて,ここで知らんぷりして重要なキーワードを使わせていただきました。そう「精度」という言葉です。

実はよくよく考えてみると,「デジタルの方が正確だ」といいたくなる場面とは,実はこの「精度」が求められている場面なのです。

「精度」とは,以前にも説明したことがあるかもしれませんが,言い換えれば「どのくらい精密に再現できるか」ということを意味します。

師匠から弟子に伝えられるアナログな「技」の伝授は,残念ながらその再現性に問題があることは感覚的にご理解いただけると思いますが,デジタル的な数値でその技術を表現できれば,その有効数字の桁数に応じた精度によりなんかいでも同じように再現することができます。ですから,ある事象をある一定の精度の範囲内で複製する際には,圧倒的にデジタルの方が「正確に」再現できます。

これに対し,「どのくらい正しく表現できるか」という意味を表す「確度」という言葉があります。有限な有効数字を持つ「デジタル」の世界では,どうしてもある一定以上の「確度」を持つことができません。ある一定レベル以上のところに来ると,「曖昧さ(不確かさ)」の影響が無視できなくなってしまうからです。それに対し無限の有効数字を持つアナログは,無限に真実(正解)に近づくことが可能です。ですから,時に現時点での最高精度を持つデジタル機器を,人間の「アナログ」的な感覚は凌駕し,より「確度の高い」表現を可能にします。

現在国際度量衡委員会において審議されている「キログラム原器を置き換えた質量の再定義」という命題において,その鍵を握るモノの一つである「シリコンの真球結晶」は,ある磨き職人の手による逸品です。現在最高精度を持つどんな工作機械を用いても,彼が磨き上げたシリコン結晶以上の真球度を得ることができていません。つまり,「より確度の高い」真球は,アナログで無ければ作れないのです。

もちろんより有効数字を多くすることにより,いつの日かデジタルがアナログを凌駕することができる日が来るかもしれませんし,すでにデジタルがアナログを凌駕している分野もあります。しかし,デジタルには必ず「曖昧な部分(不確かさ)」が残ってしまうという宿命が存在するため,それを理解した上で扱う必要があることを,我々は決して忘れてはいけないのです。

現実に存在する様々なモノをデジタル化(=数値化)して表現することは,そのモノを理解する上でとても大切な作業です。しかし,中途半端にデジタル化されたことにより「わかったような気分」になってしまうことが様々な弊害をもたらすことは,肝に銘じておかなければなりません。もちろん,一番理解しておかなければならないのは,「デジタル化された数値には必ず不確かさ(誤差)が含まれている」という点ですが,それ以上にどのようにして「デジタル化(=数値化)」された値なのかと言う点を理解することもとても重要です。

「デジタル化」とは,何かを「近似」する作業であると同時に,自然界に存在する事象の一部を何らかの形で「切り取って」表現する作業でもあります。ですから,どのような事象のどのような部分を切り取った時の数値なのかということは極めて重要です。ですから,もしこの点が明らかになっていないと,大きな誤解をしてしまうことが多々あることには注意しなければいけません。

たとえば,最近話題になりやすい例で言いますと,A沼とB沼の底質に含まれる放射性セシウムの放射能を調べたところ,A沼では20,000 Bq/kgと言うデータが,B沼では1,000 Bq/kgであったというデータがあったとします。この時,より除染の必要性が高いのはどちらの沼でしょうか?

おそらく「当然A沼でしょう」と思われる方がたくさん居ると思います。でも,我々がこのような情報を得た時に取るべき正しい判断は,「これだけの情報では判断できないので,さらなる情報が必要である」と言うものなのです。

では,先ほどの情報には,どのような情報が足りていないのでしょうか?

この場合には非常に簡単で,「測定に用いた試料の採取条件」が決定的に足りません。

もちろん測定機器の種類や測定条件なども効いてくるわけではありますが,それよりなによりどういった素性の試料を「デジタル化」しているのかという,一番重要な情報が欠落しているのです。

先ほどの事例でいきますと,実はちゃんと調べてみると,A沼の試料は排水口の出口付近の底質を10 gだけ採取して測定しただけのデータ,B沼の試料は沼底全体から,その表面1 cm程度の底質を100 kg集めて測定した場合だったとすると,どうなるでしょう?

この場合,A沼の試料中に200 Bqの放射性セシウムが含まれていれば「20,000 Bq/kg」という測定値が出てきてしまいますが,じつはその沼に含まれる放射性セシウムはその200 Bqだけかもしれません。それに対し,B沼の場合には,少なくとも採取した試料中だけでも1,000 x 100 = 100,000 Bqの放射性セシウムが確実に含まれているわけです。

もちろんよっぽど恣意的に何かをしたい場合で無ければ,同一の組織や団体がこのような極端に違う測定を行うことは考えにくいわけですが,違う組織や団体が行った測定結果を比較する場合には,こういった部分にまで注意を払わなければ値を比較することなんてできないわけなんですね。

と,すっかり話が(いつものように(^^; )ずれてしまいました。

今回のお話しをまとめますと,最初の「デジタルとアナログの比較」という点については,

  • 自然界に存在する様々なものが持つ量のほとんどはアナログ量(連続量)である。
  • デジタル化とは,そのようなアナログ量をあるレベルで近似した数値として表現することである。
  • 「デジタル」と「アナログ」では求める「正確さ」が違う。

ということになるでしょうか。

また,その次に触れさせていただいた「デジタル化された数値を理解する」ために必要なことと言う話については,

  • デジタル化(計測,計量,数値化)には,かならず曖昧さ(不確かさ)が付属する。
  • 何かをデジタル化する際には,必ず「切り取り」条件が発生している。
  • デジタル化した値の意味を理解するためには,「どのように切り取られ」て「どの程度近似された」値なのかという情報が必要不可欠である。


と言うことになるかと思います。

…………,エントリ二つに分けた方が良かったですかね(^^; まぁ,とりあえず今回はこんなところで。



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テーマ:自然科学 - ジャンル:学問・文化・芸術

雑学 | 13:14:58 | Trackback(0) | Comments(0)

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