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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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0.1 mgの放射性セシウムは致死量にあたるのか
ご無沙汰しております。コメント欄にたくさん書き込んでいただいているのですが,本業が忙しすぎて全然対応できてません。ごめんなさい。ブログを書く時間もそうなんですが,そもそも書くための資料検討をする時間が全く取れません(--) だいぶ前にご紹介いただいた文献も引用されている文献を漁るどころか本文もまともに読めていない状況で,せっかくコメントを書いてくださった皆さんには大変申し訳なく思っております。

ただ,今日はちょっと一点だけ。なんか世の中では「放射性セシウムの致死量は0.1 mg」なんて話が出ているそうなので,その辺について現実逃避に計算してみました。

使う式は,このエントリでも使った半減期と物質量の関係を表す式です。

一般に,ある放射性元素の壊変定数を λ,ある時間 t における放射性元素の個数をNとした時,以下のような常微分方程式が成り立つことが知られています。ですので,tを秒で計算すればそのままベクレルになるわけです。

-(dN/dt) = λN


134CS 0.1 mgは 0.1E-3 g ÷ 134 g/mol = 0.746 μmol 137CSですと,0.730 μmolになります。非常に小さい感じで怖いですね。

では,放射能との関係を計算しましょう。

半減期t(1/2)と壊変定数λの関係は以下のようになりますので,


t(1/2) = (1/λ)ln(A/(A/2)) ≒0.693/λ



半減期2.06年=6.50 E7 sである134CSの壊変定数は1.07 E-8 s^-1。同様に半減期30.2年=9.52 E8 sである137Csの壊変定数は7.28 E-10 s^-1となります。

これを最初の式に当てはめるわけですが,忘れちゃいけないのはこの時のNは「個数」ですので,先ほど計算したモル数にアボガドロ数6.02 E23をかけなければいけません。

ということで,計算すると0.1 mgの134Csと137Csがもつ放射能はそれぞれ

134Cs: 1.07 E-8 x 0.746 μmol x 6.02 E23 = 4.81 E9 Bq = 4.81 GBq

137Cs: 7.28 E-10 x 0.730 μmol x 6.02 E23 = 3.20 E8 Bq = 0.32 GBq


これはなかなかすごい値に見えますね。実効線量も計算してみましょう。実効線量係数はいつものようにこちらの表を利用します。134Csと137Csの経口摂取した場合の実効線量係数はそれぞれ1.9 E-5 mSv/Bq,1.3×10-5 mSv/Bqですので,

134Cs: 4.81 E9 Bq x 1.9 E-5 mSv/Bq = 91390 mSv = 91.39 Sv

137Cs: 3.20 E8 Bq x 1.3 E-5 mSv/Bq = 4160 mSv = 4.16 Sv


大きいですねぇ。確かにこの線量を「一度に浴びれば」死んでしまうでしょうね。特に134Csの90 Svオーバーとか尋常じゃないです。原子炉の中くらいじゃないと,こんな線量浴びるのは難しいのではないでしょうか。

しかし,この実効線量係数は50年間でのトータルの被曝量を示してるものなので,急性被曝を考える場合には,もうちょっと工夫が必要かもしれません。とりあえず最初の1時間で何個くらいのセシウムが放射壊変するのかを計算してみましょう。

ある時点での放射能の強さA(t)はt=0の時の放射能A(0)を用いると以下のように表されることになります。

A(t) = A(0) × e^(-λt)


ベクレルは1秒間に放射壊変する放射性元素の数を表していますので,この式をt=0からt=3600まで積分すれば,何個のセシウムが放射壊変したのかがわかります。

では頑張って計算してみましょう。先ほどの式の不定積分は∫A(t) dt= -(1/λ)A(0) × e^(-λt)と表せますので,t=0から,t=3600までの定積分は(A(0)/λ) x (1-e^(-3600λ))となります。ということで,代入します。

134Cs: 4.81 E9 Bq ÷ 1.07 E-8 s^-1 x (1-e^(-3600 s x 1.07 E-8 s^-1)) = 1.73 E13 個
137Cs: 3.20 E8 Bq ÷ 7.28 E-10 s^-1 x (1-e^(-3600 s x 7.28 E-10 s^-1)) = 1.15 E12 個

結構大きな値に見えますが,元々のBq数が大きいので,このくらい壊変してもたぶん放射能自体は全然減らないと思います。

ちなみにこれらがどのくらいのエネルギーの放射線を出したかと言うことも計算してみましょう。

セシウムが崩壊した時に出す放射線のエネルギーは,こちらの資料(134Cs, 137Cs)によると,

134Cs: β線 0.497 MeV γ線: 1.51 MeV
137Cs: β線 0.551 MeV γ線: 0.662 MeV

となるんでしょうか?正直だんだん怪しくなってきてるわけ何ですが(^^;;; 1 eV = 1.60219 E-19 Jから,それぞれをJ(ジュール)に変換すると

134Cs: β線 8.05 E-14 J γ線: 2.45 E-13 J
137Cs: β線 8.93 E-14 J γ線: 1.07 E-13 J

これに先ほどの崩壊したセシウムの個数をかけると

134Cs: β線 8.05 E-14 J x 1.73 E13 = 1.39 J γ線: 2.45 E-13 J x 1.73 E13 = 4.23 J
137Cs: β線 8.93 E-14 J x 1.15 E12 = 0.102 J γ線: 1.07 E-13 J x 1.15 E12 = 0.123 J

1 kgの物質に1 Jの放射線が吸収された時が1 Gyですから,結構大きな値ですね。はっきり言って,途中の計算にはまったく自信が無いのがあれなんですが(^^; 134Csと137Csが半分ずつ入っている状態だったとしても,こんなすごい放射能を持っている食品が存在していたら,持っているだけで外部被曝により即死とまでは行かないかもしれませんが,なんらかの確定的影響が出てくるのは確かでしょう。

ちなみにすっかりなじみができてしまった線量率 Sv/hに,ごく単純に換算すると

134Cs: 91.39 Sv/50y ÷ 50 y ÷ 365 day/y ÷ 24 h/day = 0.21 mSv/h

137Cs: 4.16 Sv/50y ÷ 50 y ÷ 365 day/y ÷ 24 h/day = 9.50 μSv/h


となりますので,どちらも半減期が50年より短いために初期段階で与えられる線量がその大きな割合を占めていることが良くわかります。

ただ,これが我々の現状に何か関係があるの?と尋ねられれば,これまでにGBq/kgの放射能が検出された食品なんてありましたっけ?????と答えたいと思います。

試しに,現在問題になっている規制値レベル 500 Bq/kgの食品と比較してみましょう。規制値レベルの食品をどのくらい摂取すれば放射性セシウムを0.1 mg摂取することができるのでしょうか。

ということで,先ほど算出したベクレル量を単純に500 Bq/kgで割ってみると,134Csで9520トン,137Csで640トンの摂取が必要という計算結果になります。仮に規制値の1000倍である50万Bq/kgの食品を食べたとしても,それぞれ9520 kgと640 kgの摂取が必要となります。ちょっと非現実的な値ですよね。50万ベクレルの137Csを含む食品の場合一日約1.8 kgずつ一年間食べ続けてやっとです。

ということを考えると,現状とはかなりかけ離れた別世界の話ですね(^^; 正直現状では全く気にする必要の無い話だと思います。まぁ,えいやでやった計算なのでどっか桁を間違えていないかものすごく不安なんですが(^^;;;;; とりあえず致死量の放射性セシウムを放射性物質を直接取り扱う機会の無い我々が摂取する機会は無さそうです。というか,それ以前に

0.1 mgの放射性セシウムには近づけなさそう


です(^^;

でも,素朴な疑問として「なんで0.1 mg」だったんだろう?という疑問は残ります。正直,急性被曝による即死の値としても中途半端ですし,一応セシウムってことで反射的に食品に混入した場合の内部被曝を気にしてるのかなぁ?とか思って計算したりもしたんですが,よく考えたら前述の通り「0.1 mgの放射性セシウムを摂取する」というシチュエーション自体がナンセンスぽいので,実際の文脈では放射性核種を扱う実験とか原子炉内での作業とかそういう場面での気道吸入とかそういう話だったのかなぁ?なんて想像してしまいました。そうなると,値が結構変わってきそうでアレなんですが,今日のところはご勘弁ください(^^;

ただ個人的には,それ以前に何を持って「致死量」と定義したのかがさっぱりわからないのが気持ち悪かったりします(^^;

いわゆる化学的毒性については,半致死量が経口でラットだと2,600 mg/kg,マウスで約2,300 mg/kgというデータがあるようなので全然違うようですし,急性被曝で即死するレベルを「致死量」と言うかって言うとなんかよくわからないし(そもそも値も何か違う気がするし),確率的影響について「致死量」って言う言い方はさらに無さそうですし,いったいどの辺から出た話なんでしょう?これ(@_@) まぁ,完全に憶測なんですが,あんまりこの辺のこと良く知らない専門家じゃない人が何かを勘違いして言っちゃったのかなぁ?なんて失礼なことを考えたりしてしまいました(^^; ごめんなさい。

まぁ,ちゃんと元の文脈たどらないからわからないだけなんでしょうけど,残念ながらそういう暇が無いのでです(--;

って,あぁ,いかん。………,すでに現実逃避しすぎてます(--;;;;; 

もちろん,この話の出所とかどういう文脈で出た話なのかを調べて書くべきかな?とは思ったんですが,前述の通りその辺の時間を取るのもままならない状態で,完全に現実逃避するためだけのエントリです<ぉぃ まぁ,今回みたいに計算するだけだったら何とかなるんですが,裏付けとなる理論やそもそもの話題まで追いかけるのは,ちょっと無理そうでしてごめんなさい。だったらそもそも書くなよというご批判は甘んじて受けますが,放り出しすぎて広告ついちゃったんで,そろそろなんとかしないと(^^; とか思って書いてしまいました。元々の話題とこのエントリの文脈が無関係だったらごめんなさい。

というわけで,なるべく早く本業の方を何とかしてまた更新を再開していきたいと思いますので,その際にはまたどうかよろしくお願いいたします。

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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 16:41:18 | Trackback(0) | Comments(2)

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