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ぷろどおむ

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元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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続々々・日本の基準は本当に緩いのか
たろうさんから,再びコメントをいただきました。

結論から言います。たろうさんが想定されている事態について,

完全に私の理解が間違っておりました


その辺についての詳しい説明としては,たぶん私がぐちゃぐちゃ書くよりもこちらのコラム「基準値の根拠を追う:放射性ヨウ素の暫定規制値のケース」をご覧いただいた方が理解が早いんじゃないかと思います。

そして,私が何を間違っていたのかという点なのですが,「汚染が発生する」という部分についての理解が不十分だったと言うことです。つまり,300 Bqの規制値を長期間超えるような汚染イベントには,大ざっぱに考えても二種類のものがあると言うことに考慮が至っていなかったと言うことです。

その二種類とは,

1) たとえば30,000 Bq/kgを超えるような極めて甚大な汚染が短期間に起きた場合
2) 300 Bq/kg近辺の汚染を生じるようなイベントが連続的に起きた場合



の二つです。

そして,たろうさんが常に危惧しておられたのは後者のパターンであり,今回設定されている基準値が想定しているのは前者のようなパターンであると言うことだったのですが,私がそこを混同し続けていたのが混乱の原因です。

そして,第二の間違いは,そういう混同した状態で無理矢理今設定されている基準値を理解しようとしたために,本来適用すべきでない後者の事態についても適用できると思い込んでいたことです。

というわけで,常時規制値の水を飲み続けた場合に受ける甲状腺等価線量の値は前回のエントリで「これはいくら何でも高すぎるのでは?」と却下した

成人で  300 Bq x 4.3E-4 mSv/Bq x 1.65 L/day x 365 day/year = 77.7 mSv/year
乳児だと 100 Bq x 3.7E-3 mSv/Bq x 0.71 L/day x 365 day/year = 95.9 mSv/year



の方が近いことになります。

年間で乳児が受ける線量が100 mSvに匹敵する値というのは,十分な安全マージンが取られているかというと確かに疑問を持たざるを得ませんので,確かにたろうさんが想定していたような連続的な汚染イベント発生時にはふさわしくない基準であると言えると思います。そして,たぶんこれが前回書いた「飲食物中の放射性物質が健康に悪影響を及ぼすかどうかという濃度基準ではなく,緊急事態における介入のレベル(防護対策指標)として,飲食物摂取制限措置を導入する際の判断の目安とする値である」という文章の本当の意味なんですね。誤解して考えていたようです。

もちろん今現在の状況と比較してと言う話になりますが,幸いなことに4/19現在の実測値を見ると,福島県内でも水道水でよう素131が検出されているところは,ほとんど無くなっているようです。なので,少なくとも現時点では現在設定されている基準が想定しているケースの範囲内に収まっていると考えてよいと思います。ですから,今この瞬間の安全は十分に担保されていると私は思っています。しかし,そもそもその思いが強すぎたのが理解を遅らせた原因でもあると思っていますので,今後はより一層注意をしていきたいと思います。

さて,それでは一年間常時摂取し続けても安心な値となる規制値はどのくらいがふさわしいのでしょう?先ほどのコラム中では「12 Bq/L」という値が紹介されていたように,もう一桁低い値を考える必要があるようにも思います。しかし,そういう方向で究極的に考えると当然WHOが出している通常時の値に限りなく近づいてしまい,緊急時の基準をどの程度に設定すべきかというそもそもの命題からどんどん逸脱してしまいます。しかし,基準値を設定すると言うことは,同時に摂取制限が解除されるタイミングを左右することになるわけですから,現在の規制値近傍の値が長く続くケースを考えると,このレベルの規制が必要になってくる必要性は十分に高いと思います。

ということで,正直どう考えるべきかという点についてはいろいろ考えましたが,よい考えがまとまりませんでした。現在の規制値が想定しているような爆発的に大規模流出が非連続的に起きているような状況であれば,現在よりも厳しい規制をしてもそれほど意味があるように思えません。ですから,規制解除のタイミングを上手く考慮する運用をすることで十分対応できるように思います。しかし,常時100 Bq/kg程度の汚染が続くような状況にどう対応すればよいのかというと,やはりその様な事態用の規制値を新たに設定するなり,その時々での状況を見つつ臨機応変に対応する以外の方法が私では思いつけませんでした。

蛇足にはなりますが,今回用いられている基準が「間違いである」という表現をしている方もいるようですが,それはちょっと違うのではないか,と思います。確かに基準値近傍の水「だけ」を一年間継続的に摂取すると,かなりダークなグレーゾーンに入る線量を浴びることになってしまいます。しかし,それは規制値が間違っているというわけではなく,何度も繰り返していますが,適用範囲というか,想定している状況が違うだけだと思います。そして,もちろん予断を許さない状況ではありますが,それでも現時点での状態であれば,今回の事故ではこの規制値が想定している範囲内の事象しか起きていないことも確かだと思います。

とは言え,何度も書いてあるとおり,残念ながら現在設定されている規制値は連続的に(3/15に起きたような)放射性物質の大規模流出が続くような状況に対応したものではなく,そのような状況に対応した規制値も存在しない状態であることは確かなようです。もちろんそのような状況が現実問題として起こりうるのか,という疑問もあるでしょうが,今回起きた様々な事象,特にあれだけ津波に対して警戒をしていた三陸沿岸の各地域が壊滅的な被害を受けてしまったという事実を見れば,ほとんど起きないと思われるような事象についても十分に起きうるものとして対応策を考えておかねばならない,ということの重要性や必要性は骨身にしみるものがあります。ですから,今後はこのような視点を持ってしっかりとした議論をしなければいけないと思います。

しかし,そうであったとしても,こういった規制値は無闇に厳しくすればよいと言うものでは無いのが難しいところです。

不必要に厳しい規制値は,不要な不安感を導き過剰な反応と経済的な打撃と,それより何より規制対象となる地域住民への過度の負担を強いることになります。なので,連続的な汚染イベントが発生した場合の規制値の決定には,これらの要因と健康被害の防止という,どちらもないがしろにするわけにはいかない極めて難しいバランスが要求されると思います。

今後のエネルギー供給をどのような戦略で進めていくのかという点も含め,関係機関には長期的な展望を持ってしっかりとした対応をしていただきたいと思います。

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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 11:48:36 | Trackback(0) | Comments(0)

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