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ぷろどおむ

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元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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放射線は何が怖いのか
最近書いているエントリに関してコメント以外でもいろいろとご指摘をいただいております。ご指摘を下さった皆さん,本当にありがとうございます。私自身に力不足な部分が多いため,皆様のこのようなご指摘は非常に助けになります。今後ともどうかよろしくお願いいたします。

さて,いろいろとお話を伺っておりますと,この辺の部分が曖昧のまま漠然とした不安感をもたれている方が非常に多いのかな?と言う印象を受けました。ということで,これまで書いた放射線に関する基礎的な知識などについてのエントリを引用しながら,放射線の性質について,放射線はどうしてどのように体に害を与えるのか,ということについてお話しをさせていただきたいと思います。一応できる限りわかりやすくと思っていますので,多少厳密さに欠ける表現になることをお許し下さい。

まず,最初に言葉の定義をもう一度おさらいしておきます。

放射線:原子核における放射壊変と共に放出されるものの総称。主にα線,β線,γ線の3種類に分類される。放射線の持つエネルギーはグレイ(Gy)という単位で表現される。
放射能:放射線を出す能力のこと。一秒間に一回放射線を出せる能力を1 ベクレル(Bq)と表す。
放射性物質:放射能を持つ物質の総称。より厳密には放射線を出しているのは「放射性元素」。放射性元素以外からは放射線は出ないので,放射性物質とは「放射性元素を含む物質(化合物)と考えても良い。
放射壊変:エネルギーが高く不安定な原子核が放射線を出すことで,より安定な原子核になる現象。崩壊の仕方により,α崩壊,β崩壊,γ崩壊などに分類され,それぞれα線,β線,γ線を主に放出する。
当量線量:線量(=放射線の持つエネルギー) Gy(グレイ)を元に計算される人体への影響を表す数値。単位はシーベルト(Sv)。線量の値に,放射線の種類や被曝の仕方などを考慮した放射線荷重係数をかけ算して求められる。



放射線が出る仕組みについては,以前三回シリーズで書かせていただきましたので割愛します。相当長いので読みにくいかもしれませんが,興味のある方はご参照下さい。また,放射線で使う単位についても簡単な説明をしたことがありますので,そちらのエントリにもリンクを張っておきます。

放射線が出てくる仕組み その1~原子と原子核
放射線が出てくる仕組み その2~放射壊変
放射線が出てくる仕組み その3~半減期

放射線に関する数字を読む~その強さをどう表すか(単位の話)



先ほどの定義のところでも赤字で書かせていただきましたが,

放射性元素以外からは放射線は出ない


というのは,ぜひ理解して下さい。「放射線に触れると放射能を持つ」とか,「放射線がどこかを漂っていたり貼り付いていたりする」とかそういうこともありません。これらについては,追って説明します。

まず放射性元素について理解を深めましょう。放射性元素が何故放射線を出すのかというと,それは「持っているエネルギーが過剰すぎて不安定だから」です。

こんな例えが適切かどうかわかりませんが,フラストレーションを抱えた思春期の子供がそのイライラを暴れたりすることで解消しているようなものです。思春期の子供もそのフラストレーションの度合いにより,校舎のガラスを割ったりバイクを乗り回したりする(発想が古いのはご容赦(^^;)子もいれば,親や友達に愚痴る程度で済む子もいるでしょう。放射性元素も似たようなものです。そして,暴れたりすることでフラストレーションが解消されればおとなしくなるのも同じような感じです。一回暴れればおとなしくなる分,思春期の子供より扱いやすいかもしれません<ぉぃ

というように,放射性元素は放射壊変をすることでエネルギー(貯まっていたフラストレーション)を外に放出して安定化(ちょっとすっきり)するのですが,安定化の度合いはそれぞれの放射性元素の種類によって違います。一回暴れれば満足して非放射性元素(安定同位体)になるものもありますが,まだ満足していないもの(別の放射性元素に変わったもの)は,もう一度別の放射壊変を行ってもう少しすっきりします。そんな感じで,十分満足する(安定同位体に変化する)まで放射壊変を繰り返します。

具体的に言うと,よう素131はβ壊変を行いキセノン131m(半減期11.8日)に変化し,γ線を出してキセノン131という安定同位体に変化します。セシウム137は,β崩壊によりバリウム137m(半減期2分)に変化し,γ線を出してバリウム137という安定同位体に変化します。安定同位体になれば,もう放射線は出しません。放射能が時間をおくと弱くなっていくというのは,このようにしてどんどん放射性元素がより安定な同位体に変化して放射線を出さなくなっているからです。

また,何度も放射壊変を繰り返すような場合でも,普通は放射壊変を繰り返す度に,出てくる放射線もどんどん弱いものになっていきます。なぜなら,外部からエネルギーを加えられない状態であれば,エネルギー保存則が成り立つからです。そして一個の放射性元素が元々持っていたエネルギーは当然有限ですから,放射線としてエネルギーを外部に放出すれば当然持っているエネルギーはどんどん小さくなり,外部に放出することのできるエネルギーも小さくなっていきます。なので,人体への影響はより小さくなります。


次に放射線そのものについて考えましょう。

放射線を考える上でややこしいけど重要なのが,放射線は3種類ある。ということです。これらはその正体も性質も全く違いますので,それぞれ区別して考えなければいけません。この辺りは先ほど紹介した三回シリーズにも書いてあるのですが,一番大きな性質の違いは大きさと重さです。α線(=Heの原子核)>>>β線(電子)>γ線(電磁波)位の差があります。

α線は大きく重いために大きなエネルギーを持ちます。その正体はHe(ヘリウム)の原子核で粒子としての性質が強いため,空気中ではほとんど飛ぶことができず,真空中でも紙一枚程度で遮ることができるので外部被曝はほとんど気にする必要がありません。しかし,前述の通りパワーが強いので,α線を出すような放射性元素を体の中に取り込んでしまった場合に起きる内部被曝には注意が必要です。

β線の正体は電子なので,α線よりは小さく軽いため空気などは通り抜けることができますが,やはり粒子としての性質を強く持つので,物質(数 mm程度のアルミ板やプラスチック板で十分)により遮ることが可能です。しかし,β線を出す核種が大量に含まれている水に触れたり,粉塵などが皮膚に付着したことによる外部被曝や,α線同様β線を出す放射性元素が体の中に入り込んだ時の内部被曝には注意が必要です。

これに対しγ線は電波などと同じ電磁波ですので,物質を通り抜ける力が強く,鉄や鉛,コンクリートなどを用いないと遮ることができませんし,空気中でも遠距離まで飛ぶことができますので,外部被曝のほとんどの原因はこのγ線です。ただし,人間の体をそのまま通り抜けていく力も強いのでα線に比べると人体への影響は小さく済みます。

厳密に言うと,この他にも中性子線などがありますが,これについては今のところ注意する必要はあまりないと思います。

さて,ここまでは良いでしょうか。

次に,放射線がどのように人体に影響を与えるかということについてですが,その前に一つ物質の運動エネルギーというものはどう表せるか思い出していただきましょう。たぶん高校の理科で習っているはずですが,運動エネルギーEは,物質の質量をm,速度をvとした時,

E = (mv^2) / 2


という式で表せます。つまり,重さが重ければ重いほど,スピードが速ければ速いほど大きなエネルギーを持つことになります。正確には位置エネルギーに相当するものもあるわけですが,すごく大ざっぱに言うとこのエネルギーがそのまま放射線が持つエネルギー(単位はグレイ)になります。

つまり放射壊変で発生したばかりの放射線は非常に大きな速度を持ち,そのまま何かにぶつかるまで進みます。そして何かにぶつかると弾かれたり何かする場合もありますが,放射線としては大きい方のα線(α粒子)でも原子核としては小さい方なので,普通は持っていた大きなエネルギーを相手に与えて止まります。つまり,スピードがゼロになります。この時相手に与えたエネルギーの大きさが衝突相手へのダメージとなるため,重たいα線の方がダメージは大きくなるわけです。しかし,当然衝突後の運動エネルギーはゼロになるので,それ以上何かに衝突することはできなくなります。つまり,α線はただのふわふわ浮かぶヘリウムの原子核になり,β線はただの電子になり,元々ただの電磁波だったγ線はエネルギーごと相手に吸収されて消えてしまいます。

これは要するに「一個の放射線が衝突相手にダメージを与えられるのは1回だけ」ということを意味しています。ですから,何かの理由で外部から放射線を一回浴びたからと言って,その放射線が体の中に残留することは無いのです。このことは最初にお話しした一個の放射性元素が放射線を出せるのも一回だけということと,セットで覚えておいて下さい。

現在福島や近県で空気中の放射線量が通常よりもやや高い値を示していますが,それは「放射線」が空気中を漂っているのではなく,「放射性元素」が空気中を漂いながら放射線を出しているだけです。そして,空気中を漂っている「放射性元素」は,放射線を出しながらどんどん壊れて安定同位体に変化します。

それでは出てきた放射線はどうなっているのでしょう?先ほどまで説明したとおり,放射線は何かにぶつかって止められると,「放射線」としての性質を失います。この時ぶつかる相手は,確率的には空気とか水とか壁の場合の方が非常に多いわけですが,もちろん人間の体にあたってしまうこともあるわけですが,もし人間の体にぶつかってしまった時には何が起きるのでしょうか?

と,ここまで書いたところで相変わらずかなり長くなってしまいましたので,とりあえず続きは次のエントリに回します。次回は,放射線がDNAをはじめとする人体に与える影響について書きたいと思いますが,もしリクエストなどがあればコメントにどうぞ。できる範囲で対応させていただきたいと思います。

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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 13:15:17 | Trackback(0) | Comments(0)

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