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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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メタ・アナリシスはなぜ必要なのか
前回のエントリは思った以上にご好評をいただいたようで,ちょっとかなりプレッシャーを感じていたりしますが,ご期待もいただいているようなので前回の続きです。

さて,前回も少しお話しいたしましたとおり,疫学は基本的にマクロな事象を取り扱う学問であり,そのための方法論です。このような方法論は他に変わるものがあまり存在しないため,得られた疫学データの信頼性を検証するには,

1) どのようにして得られたデータなのか
2) どのようにして解析されたことにより得られた結論なのか

の二点を検証する以外にありません。これはすなわち「適切な研究デザインが選択されているか」を評価していることに繋がります。

疫学における研究デザインについては,以前もご紹介させていただきましたが,その目的や状況に応じて適切なものを選ぶ必要があります。

一般的には「前向きコホート研究」と呼ばれるものの信頼性が高いとされることが多いですが,費用と時間がかかりすぎるという最大の問題点があるため,常に適切であるとは限りません。また,通常の場合サンプル数が多ければ多いほど,観察期間が長ければ長いほどデータの信頼性が高くなることが期待できるわけですが,こちらも無限に増やすことは出来ないわけです。

疫学が対象とする分野は原因と結果が多対多の関係を持つ複雑でマクロな事象であるにもかかわらず,実際に研究を進める上ではこのような足かせが生じてしまうため,どうしても一つの研究だけで因果関係を導き出すのは困難となります。そのため,良くできた研究でも相関関係を見いだすのが精一杯となることが多いです。そして,そのような状況を打破するための解決策として用いられ,磨かれてきた手法が「メタ・アナリシス」と呼ばれる方法論です。

「メタ・アナリシス」は,過去に行われた複数の研究を統合し,それらの研究成果全体を統計的に解析することで,より確からしい因果関係を導き出すことを目的とする手法です。

もちろん,その手法の中には「その研究を統合することが適切かどうか」という判定基準も含まれ,国際的な合意ルールも存在しています(参考:臨床研究と疫学研究のための国際ルール集)。

歴史的には19世紀末頃には疫学分野でもこのような考え方が用いられはじめたようですが,初期に「メタ・アナリシス」という用語と方法論が活躍し,発展したのは主に社会科学,特に教育学の分野だったようです。おそらく疫学以上に評価の難しい教育法の評価と言った場面では,統計的な解析を用いる客観的な評価が必要不可欠だったのでしょう。

疫学,というか臨床試験の評価にメタ・アナリシスを用いることが尊重されるようになったきっかけは,1985年にイギリスのRichard Petoにより報告された心筋梗塞後のβブロッカー長期投与による2次予防効果についてメタ・アナリシスを行った論文ではないかとされています。

この研究では個々の事例ではオッズ比の信頼区間が1をまたがってしまうために治療効果を評価することが難しいような15種類の無作為化比較試験(RCT)研究(15例中単独で有意差が認められたのは,わずか2例)について評価を行い,統合オッズ比として0.77(95 %信頼区間 0.70-0.85,p<0.0001)という結果を導き出しています。これは治療により死亡相対リスクが23%減少されることが期待できることを意味しており,個々の研究事例では明確ではなかった治療法の有効性が,メタ・アナリシスを行うことにより明らかになったのです。

このように臨床試験評価におけるメタ・アナリシスの利用は,EBM(根拠に基づく医療:Evidence-Based Medicine)という概念の必要性と共に高まっており,その方法論は疫学の分野でも利用されてきています。

もちろん疫学研究は臨床試験評価研究のように意図的にデザインされたRCTを行うことが非常に困難であり,こちらで示したような様々なバイアスを取り除くのも難しい場合が多いです。そのため,メタ・アナリシスを行う上でもより慎重に各研究を評価する必要があるわけですが,それ以上に単一の研究結果だけでは行いにくかったリスク評価を行えるようになると言うメリットは非常に大きいため,利用頻度は上がってきています。

最大のメリットは,先ほどのβブロッカー長期投与の話でも出てきたとおり,「個々の事例では判定できないような事例についても,判定が可能となる」ことです。

たとえば,先日コメント欄で話題になったタバコの受動喫煙に対する疫学調査ですが,JTにより公開されている資料のp.9-10にあるとおり,個々の疫学調査の結果だけ見ると,95 %信頼区間が1をまたいでいるものが多く,明確な有意差が得られている事例は非常に少ないものとなっています。しかし,これらの研究についてメタ・アナリシスを行うと,IARCの報告書(p.1263以降)にあるように,統合された結果として有害であることが導き出されたりするわけです。ちなみにこの報告書では,配偶者や職場で副流煙に暴露している人の肺ガンリスクが増大していることは認めていますが,子供が親から受ける副流煙の影響に関しては,明確な有意差がないとしています。どうせ陰謀を巡らすなら,子供への被害を訴えるのが一番情緒的に簡単なのに,その辺を外してくるのは詰めが甘いのか,それとも非常に姑息なのか判断に迷うところですね。

さて,メタ・アナリシスに特有なバイアスとして「出版バイアス(公表バイアス)」と呼ばれるものがあります。

これは,よりポジティブな結果が出たもののみが公表されやすいというバイアス(喫煙の場合は,喫煙が有害であるという結果が出たもの)です。つまり喫煙は無害であるという結果が出てしまった研究成果は,公表されていない可能性が高くなるのではないか。と言う可能性です。もちろん先ほどのIARC報告書でも,このバイアスについて検討されていますが,メタ・アナリシス最大の問題点とも言うべきこのバイアスについて,検出方法や影響を取り除くための手法など,今回はその詳細は省かせていただきますが,様々な手法が検討され検証されています。また,同様の検討や検証は他の様々なバイアスについても行われており,疫学もメタ・アナリシスも今なお改善され続けているのです。

というわけで,長くなりすぎましたから今回はひとまずこれまで。さすがにメタ・アナリシスの数理統計学的な部分についての解説を私に要求する人はいないと思いますが,求められても無理なので勘弁してください(ぉ 

というわけで,次回はさらに抽象的な話になります(^^;

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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

雑学 | 15:28:17 | Trackback(0) | Comments(0)

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