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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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ラウリル硫酸ナトリウム入り歯磨きは味覚を破壊するのか
とおりすがりさんからコメントをいただきました。ありがとうございます。またいつものように長くなったので,エントリを起こします。

> 私はラルリル硫酸ナトリウムが入っていないけども
> メントールは使っている歯磨き粉を使っています
> メントールが入っていますので、もちろん清涼感があります
> 口をゆすいだ後に飲食をしても味は全く変わりません
> 以前使っていたラウリル硫酸ナトリウムが入っている
> 歯磨き粉を使っていた時は、オレンジジュースを飲んだら
> 味が変わってしまい(苦くなる)感覚が戻るのに数十分かかっていました
>
> 現在の歯磨き粉に替えてからは、オレンジジュースを飲んでも
> 苦くなったりしません 
> その違いに驚いています
> 従って、私の感覚では
> メントールではなく、ラウリル硫酸ナトリウムによる
> たんぱく質変性作用(薬品やけど)だと思います

この手の業者が良く言っているように味覚の異常がたんぱく質変成作用が原因だとすると,数十分で回復するのはすごすぎると思うんですよね。そんなに急速に回復できるのに,長期的に利用すると味蕾が破壊されるというのは,にわかに信じがたいわけです。というわけで,とおりすがりさんがご利用になっているものについては,ちょうど良い量にメントールが調整されているのでは?と思いました。

ということでもう一度調べ直してみたら,そのものずばりの論文がありました。

味覚閾値に与える練歯磨及びその成分の影響
The journal of Wayo Women's University 24 pp.1-15 19830331
松下真実子,宮川豊美,川村一


というわけで,お詫びです。この論文の実験結果によると,確かにラウリル硫酸ナトリウムも味覚に影響を与えるようです。この論文の実験によると,甘味,塩味,苦味について約60 %,酸味でも25 %の人が味覚が鈍感になるという影響を受けています。

一応,味覚に一番影響を与えるのは含まれている香料(主にメントール)という結果が得られている(甘味と苦味については100%,酸味40 %,塩味20 %の人が影響を受けた)のも事実ではあるのですが,どうもその辺を間違って認識していたらしいです。大変申し訳ありませんでした。やはり記事を書く度に確認をしないといけませんね。反省します。

しかし,この論文の前半部分で1949年に行われた味覚閾値調査(味覚の鋭敏さを見る調査)と,今回行われた味覚閾値調査を比較しているのですが,その結果有意差が見られなかったとしております。

つまり,ラウリル硫酸ナトリウム入り練り歯磨きを長期間使用したことによる味覚異常の兆候は見られておらず,「現代人はラウリル硫酸ナトリウム入り歯磨きによって味覚が破壊されている」という一部業者の主張は明確に否定されていることになります。

また,練り歯磨きによる味覚閾値への影響のほとんどは閾値が高くなる=味覚に対して鈍感になる方向に働いています。それなのにとおりすがりさんのように「苦みを強く感じる」のはどうしてなのでしょう?

それはどうやら回復時間の差が影響しているようです。

論文中で行われた味覚回復時間についての結果によると,ラウリル硫酸ナトリウムによる味覚閾値上昇から回復する時間は,他の三成分が回復に15分~30分かかっているのに対し,酸味だけは3分以内に75 %の人が回復しています。つまり元々影響を受けにくい酸味が素早く回復するため,より酸味を強く感じすぎてしまうのではないでしょうか。そのために味のバランスが崩れ「変な味」と思ってしまう(なぜ「苦味」と感じるのはわかりませんが)のではないでしょうか。

香料による影響はどうでしょう?こちらは塩味と酸味が15分以内に100 %の人が回復していることから,酸味を強く感じすぎてしまうかもしれません。苦味への影響は15分以上続く場合もあることから,香料だけの使用では苦味を感じにくくなるのかもしれませんが,甘味の回復にも同程度の時間がかかっているので,やはり酸味を強く感じすぎる傾向になりそうです。とすると,やはり通りすがりさんが使われている歯磨きは,清涼感を感じつつも味覚に影響を与えにくい絶妙なブレンドがなされているのかもしれません。

では,最大の問題であるこの味覚の異常の原因はどこにあるのでしょうか。メントールを主成分とする香料が与える味覚への影響は,メントールそのものが持つ刺激性や冷涼感と嗅覚に与える影響で説明できそうな気がします。しかし,ラウリル硫酸ナトリウムはどうなのでしょうか?とおりすがりさんが仰るように,たんぱく質変成作用により味蕾が破壊されているのが原因なのでしょうか?

ここからはだいぶ推論が混じってきますので,突っ込み大歓迎なのですが,まず味蕾そのものが破壊されているという説には大きく異を唱えたいと思います。

理由の第一は,ラウリル硫酸ナトリウムが歯磨きに使用されていなかった時代と一般的に使用されている現代において味覚閾値に差が見られなかったことです。これにより,長期利用における味覚への影響は明確に否定することができます。

次に,味覚によって影響が異なっていることから,味蕾そのものではなく味覚を感じる受容体に個別の影響を与えていると推測できる点,また40 %もの人が味覚の異常を感じていないことから,それほど強力な作用が与えられるとは考えられないこと,さらに味覚の種類によっては短い時間で回復している点にも注目したいところです。

界面活性剤はこのブログでも何度か説明してきましたが,たんぱく質などの表面に吸着するという性質を持っています。ですので,この影響により一時的に受容体が妨害を受けているために味覚に変化が起きると考えるのが,一番筋が通っているように感じます。

ところで,人間はどのように味を感じているのでしょうか。こちらのサイトで詳しく説明されていますので,どうぞご覧下さい。

こちらの説明によりますと,塩味はナトリウムチャンネルが感じ,酸味はpHの影響(水素イオン濃度)を感じ,甘味と苦味についてはG蛋白共役受容体(G protein coupled receptor(GPCR))という部分が味覚成分をキャッチすることにより感じています。

ラウリル硫酸ナトリウム水溶液はほぼ中性ですので,pHにそれほど影響を与えません。そのため,酸味に強く影響を与えないという実験結果との間に大きな矛盾はないと思います。

また,ラウリル硫酸ナトリウムが舌表面に吸着していた場合,陰イオンである硫酸基を外側に向け,疎水性の高いアルキル鎖を舌表面にくっつけた形になっていることが想像できますので,陽イオンであるナトリウムと結びつき,塩味を感じにくくさせる効果が期待できます。水素イオンも陽イオンではありますが,硫酸基は強酸なので口中の条件下では解離しやすいため,酸味には影響を与えにくいのでしょう。

甘味や苦味はより嵩高い分子が味覚を感じる原因物質となることが多いので,純粋に立体的な妨害を受けていそうですし,疎水性総合作用による吸着をしているのであれば,味蕾表面から洗い流されるのにも時間がかかりそうです。

というわけで,歯磨きと味覚の関係についてまとめます。

1) ラウリル硫酸ナトリウム入り歯磨の長期使用による味覚鈍化などの影響は存在しない。
2) 歯磨き成分のうち味覚に最も影響を与えるのは香料(主成分メントール)。次がラウリル硫酸ナトリウム。
3) 香料は甘味と苦味,ラウリル硫酸ナトリウムは甘味,苦味,塩味を一時的に鈍感にする。
4) 一時的に味覚が鈍感になる理由は,香料の場合はメントールなどの持つ刺激作用と嗅覚に対する影響,ラウリル硫酸ナトリウムの場合は界面活性剤分子が味蕾表面に吸着するためと推測できる。



というわけで,個人的には長期的な影響は存在せず,短時間だけの影響と言うことであれば,オレンジジュースは歯磨き前に飲むようにするだけで,いろんな問題が解決しそうに思います。

まぁ,どうしても歯磨きをしてからオレンジジュースを呑みたいというのであれば別ですが,普通は飲食をする直前に歯を磨く人は少数派だと思いますので,実用上あんまり害は無いかと思います(^^) というわけで,あとはみなさまの趣味・嗜好とご予算にお任せします。

いつものようにこの件に関しても,ご意見・ご質問大歓迎です。どうかよろしくお願いいたします。

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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 18:07:22 | Trackback(0) | Comments(11)
ラウリル硫酸ナトリウムはどのくらい洗浄力が強いのか
浅葉さんからご質問をいただいたのですが,いつものように長くなったのでエントリにします。

> 最近こちらのブログにたどり着いたのですが、科学屋さんとして意見を伺えますか。

科学屋と言うほど知識の幅が広くない単なる化学屋ですが,がんばって回答させていただきます。

> シャンプー解析ドットコムの管理人さんは、ラウリル硫酸ナトリウムがベースのシャンプーは洗浄力が強すぎるのでよくないとおっしゃっています。これを示すような実験結果などはあるのでしょうか?

この手の話で「ラウリル硫酸ナトリウムは洗浄力が強い」根拠として良くあげられているのが,ラウリル硫酸ナトリウムが石油系の汚れを取り除くためにも使われている,と言う話です。こんな話を聞くと「そんなすごい汚れを取り除けるんだから,なんて強力な洗浄力を持っているんだろう。きっと皮脂なんてあっという間に全滅だ!」と思ってしまいそうになります。

しかし,忘れてはいけないのは

洗浄力は汚れと下地の性質により大きく異なる

という事実です。

ですから,一概に工業製品(=金属表面)に付着した油汚れを落とす能力が高いからと言って,皮膚上の汚れに対して高い洗浄力を発揮するとは言い切れないのです。この辺は,先日の歯磨きのケースでも出てきた「(伝える側にある何らかの事情により)あえて伝えられていない事実」です。

さて,このような事実をふまえた上で,一般的な洗浄能力についてもう少し考えましょう。洗浄という作業において界面活性剤が重要な働きをするのは,「浸透」「拡張」「分散・乳化・可溶化」などと言われております。今回の問題では皮膚上の汚れを落とす場合に皮脂を落としすぎるかどうかがポイントだと思いますので,主に汚れを固体表面(今回の場合は皮膚にあたります)から汚れを分離する「拡張」過程に焦点を置きます。ちなみに「浸透」は布の内部などに洗浄液が染みこんで内部の汚れに接触する過程,「分散・乳化・可溶化」は一度固体表面から引きはがした汚れを洗浄剤ミセル中に取り込んで再付着させない過程を指します。

さて,本題に戻ります。「拡張」過程とは具体的にどういう状況かというと,下地と汚れの間に界面活性剤が入り込み,汚れと洗浄液の間の界面張力を低下させる過程です。界面張力というのは,それぞれの物質の間に存在する「接触面積を小さくしようとする力」を指します。つまり,二相間の界面張力が小さくなるということはその両者が「よりなじみやすくなる」ことになり,この界面張力を低下させる働きが強いことを「界面活性能力が強い」と表現します。

洗浄液と汚れとの間に存在する界面張力が,汚れとその汚れが元々ついていた下地との間の界面張力よりも小さくなると,汚れは下地上から引きはがされて洗浄液の方に引きずり出されます。引きずり出された汚れは,界面活性剤が作るミセルの中に取り込まれ,洗浄液中に拡散されます。これが,大ざっぱな洗浄のシステムです。

さて,ここでラウリル硫酸ナトリウムとステアリン酸ナトリウム(石鹸の主成分)界面活性能を比較してみましょう。いろいろな条件にもよりますが,実は界面活性剤単独を比較すると,ラウリル硫酸ナトリウム水溶液よりもステアリン酸ナトリウム水溶液の方が小さな表面張力を持ちます

ついでに言うと「拡張」過程の次のステップである「可溶化」の能力もアルキル鎖の長いステアリン酸ナトリウムの方が大きいことが期待できますし,可溶化に必要なミセルのでき易さを示すCMC(臨界ミセル濃度)もステアリン酸ナトリウムの方が圧倒的に低い値(ラウリル硫酸ナトリウム 7~8 mM, ステアリン酸ナトリウム 0.34 mM)を示します(参考資料:新版 界面活性剤ハンドブック)。ということで,ステアリン酸ナトリウムの方がラウリル硫酸ナトリウムよりも,秘める可能性としてはより強い洗浄力が期待できるのです。

もちろん,これらのパラメータはかなり理想的な条件での測定値であり,実際洗浄が行われる場面でこのような能力をフルに発揮できるかどうかはわかりません。また,共存する「ビルダー」と呼ばれるものの存在により,洗浄力が飛躍的に増大することも良くあります。というか,様々な状況に置ける洗浄力の強弱はビルダーの種類や量に依存すると言っても過言ではありません。

たとえばこのような実験結果があります。こちらでの結論は「合成洗剤と石けんの比較は無意味。異なる種類の合成洗剤の間の洗浄力の差や異なる種類の石けんの洗浄力の差の方が、合成洗剤の平均的な洗浄力と石けんの平均的な洗浄力の差よりも大きいため。」というものです。ここで使われた合成洗剤の成分について詳細はわかりませんが,中性の合成洗剤であればラウリル硫酸ナトリウムが使われている可能性は高そうです。

つまり,これはどういうことかというと

主原料の界面活性剤の種類だけで製品全体の洗浄力は類推できない

ということです。

ラウリル硫酸ナトリウムを使用した洗剤の方が石けんよりも広く利用されているのは,「洗浄力の強弱が水の状態に依存しない」ことが大きな理由となります。ご存じの通り石鹸は硬水中ではほとんど洗浄力を発揮しないのに対し,ラウリル硫酸ナトリウムなどは硬水中でも十分な洗浄力を発揮します。また前述の通り金属表面の油汚れに対してもラウリル硫酸ナトリウムは大きな効果を発揮するでしょう。

しかし,人間の皮脂汚れであれば,条件さえ整えば石鹸の洗浄力も充分大きいです。特にタンパク質汚れなどは場合によってはアルカリ性の石鹸の方が強いかもしれません。要するに洗浄力の強弱なんて言うものは使い方しだい,対象しだいと言うことです。

もしどうしても気になるようであれば,シャンプー解析ドットコムの管理人さんにそのような記述をした根拠を伺った方が話が早いかもしれません。もし教えていただけた場合には,私にもその内容を教えていただけると助かります。

私の力不足で,大した回答が出来ずに申し訳ありません。他にも何かあればお気軽にどうぞ。

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気になる化学リスク | 16:00:56 | Trackback(0) | Comments(4)
美味しんぼvsコンシェルジュ
おもしろい比較をしているページを見つけたのでご紹介

★★はたしてどっちが正しい?


まぁ,無農薬野菜の危険性がはっきり指摘されはじめたのは比較的最近の話なので(その筋では昔からあったけど),美味しんぼの初期の頃であれば,知らなくても仕方がないかなーとは思いますが,コミックのような媒体ではっきりこういう話を紹介してくれるようになったというのは,ずいぶん認識が広がってきたのかな?と思います。

ちなみにこの手の話は「目からウロコの化学物質30話」の第16話「無農薬を求めることは……」や,ブログ「やさしいバイオテクノロジー」の「農薬栽培野菜・減農薬遺伝子組換え野菜・無農薬栽培野菜・有機栽培野菜 どれを選びますか?」に詳しく書かれていますので,そちらをご覧いただく方がよいかな?と思います。

余談ですが,先ほど紹介したブログ「やさしいバイオテクノロジー」の書籍版もお薦めです。値段もわりと安いので,興味のある方はぜひどうぞ。

テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 12:30:23 | Trackback(0) | Comments(3)

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