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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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リスクを知ると言うこと
かずさんからいただいたコメントへのお返事です。重要な話なので,あえてエントリにしました。

> あと、ラウリル硫酸について気になるホームページを見つけました。
> 「医薬品情報21」というページの医薬品情報Q&A にラウリル硫酸の項がありました。

早速調べてみました。医薬品情報21の「ラウリル硫酸ナトリウムの性状」というページですね。

> 作者の方に悪意は無く、あくまでインターネット上の報告として記載したと思うのですが。まあ、いろんな人がいろんな目的で利用するかもって感じでした。

他のページもいろいろ拝見させていただきました。トップページにはすごい経歴が羅列していますね。私みたいなぺーぺーが文句を言ったらすごく怒られそうです。が,それでも,このように真剣に作られているページだからこそあえて苦言を言いたくなるほどの微妙な偏りがあるために,ちょっと危険なサイトに仕上がっているように感じました。

一番気になったのは,リスクに関する考え方ですね。たとえば,マコモについての記述(「マコモの薬効について」)では,世間で言われているような薬効について「マコモ耐熱菌については、未だ科学的に解明されていない」としつつも,「芽胞中に自身が生きるための栄養を蓄え、1000℃の高熱にも死なないマコモ耐熱菌は、三つの形に変化し、体内から代謝物質を排出するが、この代謝物質が人体に有効ではないかとされている。」と宣伝側の情報を垂れ流し,あまつさえ取扱業者の名前や連絡先まで載せるサービスぶりです。

それに対し,パラベンの項(「パラベン類の安全性」)では,パラベン類のMSDSを列挙し,これらについて行われた安全性実験の結果を事細かに専門用語を羅列して,非常に淡々と説明されています。随所で著者自身の言葉と思われるものが散見していたマコモの時とは対象的です。

しかし,そのあとの解説では俄然著者の主張が入ってきます。私から見れば,これらの結果は「これらのパラベン類には通常の使用方法の範疇内では害が出ないという結論の証拠」であるわけですから,当然このようなことが解説されるべきだと思う訳です。でも,残念ながらこのあとの部分でその様な解説は一切ありません。

逆に「化学的な物質の安全性の検討については、通常、動物実験によって行われるが、その結果が直ちにヒトに外挿できるわけではない。」「化学物質の安全性は、99.99%が安全であるとされても、残りの0.01%に過敏症等の発現する可能性は残されており、paraben類の安全性についても『ほぼ安全に使用できる範囲』と理解しておくことが必要である。」などと,一般消費者の方々の不安を煽るような内容の解説が付いています。確かにこの説明は一般論として正しいのですが,このパラベンの結果について適用できるかどうかなんてのは,それなりの情報と専門知識を持っている人にしか,普通はわからないわけです。確かに嘘は言ってません。嘘は言ってないんです。でも明らかにミスリーディングしやすい文章構成であり,あのようなすごい経歴の持ち主が書かれたとは思えない悪文です。

せめて一般の方に最もわかりにくいと思われる「イヌに2.0 mg/kgを静注した場合、脳には4種のエステルの未変化体、脾臓にはエチルとブチルエステルが検出された。」という記述に対する解説くらいしてあげるべきでしょう。

たとえば,2.0 mg/kgという濃度は静中=静脈に直接注射している時点で,製品中の使用濃度と直接比較できる量ではないこと。また,たとえ比較したとしても体重50kgの人を考えた場合,同じ量のパラベンを含む化粧水(パラベン含有率0.2%として)は単純計算で50 mL相当であること。さらに,静脈注射では全量が体内に吸収されるのに比べ,皮膚に塗った場合はもちろん経口摂取(口から飲む)した場合でも,体内への吸収率は非常に小さくなること。「検出された」という一文があるが,検出された量についての説明がないことから,きちんと量が量れるようなレベルではなく,ギリギリ検出できる程度のごく少ない量であったと推測できること。もちろん一般の方々に正確な情報を伝達し理解してもらおうと思えば,もっと細かい部分まで解説して然るべきです。

ついでに言うと,前述のラウリル硫酸ナトリウムに関する記述(ラウリル硫酸ナトリウムの性状」)でも,MSDSの羅列とインターネット上に流れている根拠もあやふやな情報を垂れ流しているだけで,一般の方の誤解や不安をぬぐい去ろうという意図は全く見えてきません。

正直このような書き方では,マコモをはじめとする「科学的な薬理作用もリスクも明らかになっていないような商品」については「販売側のセールストークを尊重」し,パラベンやラウリル硫酸ナトリウムのように「科学的な生理作用やリスクが明らかになっている一般的な商品」については「ハザードだけを強調している」ように見えてしまいます。そして,このような記述があまりにも散見されていると,「意図的にこのようなミスリーディングを導いているのでは?」と邪推してしまいたくなります。

このような邪推は「『医薬品情報21』は、薬の情報について総合的に検討し、薬の情報理解の一助として 利用して頂くために開設するものです。トップページ)」という非常にすばらしい理念の元に作られているサイトに対し非常に無礼ではあると思いますが,少なくとも今回紹介させていただいたページのような記述から,このようなすばらしい理念の達成が導かれるとは到底思えません。

下手をすると,ここに出されている情報を専門知識無しで斜め読みした時に得られるものは,「現代科学技術への不信感」と「様々な代替医療に関する『根拠のない』信頼」だけではないでしょうか。

先日ご紹介させていただいた目からウロコの化学物質30話 -安全?危険?リスクの真相から,第15話「ハザード(毒性)が明らかになった物質こそ使うべき!」に書かれていた,私がとても大切だと思った以下の部分を引用させていただきます。

まったくハザードがわからない物質をむやみに使用することと,ハザードがわかっている物質をそのハザードの程度に応じて使用することの,どちらがリスクを管理できるのか,ちょっと考えれば誰でもわかることである。(96ページ)」



正当なリスク管理を行ってより多くのベネフィットを得るためには,まず何よりもその対象が持つ正確なハザードとリスク,そして正確なベネフィットに対する知見が必要です。

リスクどころか,きちんとしたハザードすらわからず,あまつさえベネフィットの存在すらあやふやなものにあなたの健康をまかせても良いのですか?

ぜひ皆さんもよく考えていただきたいと思います。

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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 12:19:56 | Trackback(0) | Comments(0)

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