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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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六ヶ所から排出されているトリチウムはどのくらい多いのか
いただいたコメントから,ちょっと思いついたので久々に計算をしてみました。そのきっかけとなったコメントはこちら。

六ヶ所再処理工場からは、総量としては膨大な量の放射性物質が海へと棄てられます。
例えば2008年11月27日には、トリチウム380億ベクレルが海へ棄てられました。
これは半減期が12.32年です。


「380億ベクレル」なんてきくと,ちょっとドキドキしてしまうような量ですね。こんな量を海に流し込んでしまったら,ものすごい勢いで海中の放射能が増えてしまうんではないでしょうか??

というわけで,計算してみました。

まず,トリチウムの壊変定数を求めましょう。
トリチウムの半減期は,12.32年です。崩壊定数と半減期の間には「崩壊定数×半減期=0.693(=ln2:lnは自然対数)」という関係があります。これを用いて計算しましょう。すると,

崩壊定数=0.693÷(12.32y x 365 day/y x 24 h/day x 60 m/h x 60 s/m)
= 0.624÷3.89E+8 s = 0.178E-8


という値が得られます。

次は海水中にトリチウムがどのくらい含まれているかです。

海水の体積は約1370E+6 立方キロメートルと言われておりますので,リットルに直すと1.37E+21 Lになります。

トリチウムはだいたい水分子の形で存在していると言われておりますので,今回もトリチウムは水の形で存在しているものとして考えます。

水 1L中に含まれる水分子は1000 g/18 g/mol=55.6 mol(水の分子量は18)です。また水分子中に水素は2個含まれていますから,水中に水素原子は,111.2 mol含まれていることになります。

このことから,海水中に含まれる水素原子のモル数は

1.37E+21 L x 111.2 mol/L = 1.52E+23 mol


となります。

現在自然界における水素に対するトリチウムの存在比は1E-18(10^18分の1=100京分の1)と言われておりますので,海水中に含まれるトリチウムのモル数は

1.52E+23 mol x 1E-18 = 1.52E+5 mol


と推定できました。

次にこのトリチウムの持つ放射能の強さを求めましょう。「放射能の強さ(単位:ベクレル)=原子の数×崩壊定数」という関係がありますので,今まで求めてきた値を使って計算します。すると,

海水中のトリチウムが持つ放射能
=1.52E+5 mol x 6.02E23(アボガドロ数) 1/mol x 0.178E-8
=1.63E20 Bq =1.63垓ベクレル


となります。

これと最初に出てきた380億ベクレル=3.8E10 Bqを比較すると,(1.63E20/3.8E10)=4.29E+9,つまり海水全体と比較すると約43億分の1にすぎない量であることがわかります。これはかなり少ないと言わざるを得ないでしょう。

さらに計算を進めます。

自然界のトリチウムの存在量は大体安定していると言われています。半減期にしたがって,トリチウムはどんどん壊れているはずなのに,どうしてなのか。それはつまり,壊れている分だけ生成されていると言うことです。

では,一年間にどのくらいの量のトリチウムが生成しているのでしょうか。

先ほど海水中のトリチウムが持つ放射能は,1.63E20 Bqと計算しました。これはどういう意味を持つかと言いますと,1秒間に1.63E20個のトリチウムが崩壊していると言うことです。ということは,1年間ではどのくらいの数のトリチウムが崩壊していることになるのでしょう。

というわけで,計算してみると

1.63E20 x (1y x 365 day/y x 24 h/day x 60 m/h x 60 s/m)=5.14E27個


自然界における存在量がほぼバランスしていると言うことは,単純に考えれば崩壊した量と同じくらいのトリチウムが新たに生成していると考えられます。ということはつまり,年間 5.14E27÷6.02E23=8.54E3 mol のトリチウムが生成していると考えられると言うことです。

ちなみに380億ベクレル相当のトリチウムについてモル数を計算すると35.5E-6 molとなりますので,今計算した量と比較すると年間生成量の2億4千万分の1という非常に小さな値であることが求められます。

このことから,現在のペースでの排出であれば,天然の変動よりもはるかに小さい影響しか与えられないと言うことがわかるわけです。

というわけで,久々に計算してみましたがいかがでしたでしょうか?いつものように間違いがありましたら,コメントなどでご指摘いただければと思います。

日常生活で扱う桁からすると「380億ベクレルの排出」などと言われると,非常にひどい汚染が繰り返されているように感じてしまいます。しかし,元々化学反応や放射壊変などは1 mol=6.02E23個(約6000垓)などという非常に大きな数を単位として考えなければならないような世界です。なので,より一層数字のマジックに踊らされないように気をつけなければいけないと思います。

一部の人たちがいくらアジテーションを繰り返そうと,三陸の海は,まだまだ十分にきれいなままなのです。

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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 19:47:37 | Trackback(1) | Comments(12)

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