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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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380億ベクレルのトリチウムはどのくらいの量なのか
というわけで,コメントへのお返事の続きです。

今度は380億ベクレル分のトリチウムを持つ海水の体積はどのくらいかを計算してみましょう。

前のエントリでも使った「放射能の強さ(単位:ベクレル)=原子の数×崩壊定数」と言う関係から,次の方程式を解きます。

3.8E10 Bq = (海水の量: X L) x (水1L辺りの水素: 111.2 mol/L)
x (水素に対するトリチウムの存在比: 1E-18)
x (アボガドロ数: 6.02E23 1/mol)
x (トリチウムの崩壊定数: 0.178E-8)



すると求める海水の量 X = 3.19E11 L ,つまり3190億リットルとなります。

しかし,1立方キロメートルは1E12 L=1兆リットルですから,単位を換算すると0.319立方キロメートル,具体的に言いますと,2 km x 2 km x 80 m 分の海水が元々持っていたトリチウムの量と等しいと言うことになります。

前のエントリで行った計算によると,だいたい存在量の1/18程度のトリチウムが1年間の生成量にあたりますので,8.4 km x 8.4 km x 80 m分の海水に対する年間生成量とほぼ同値と言うことになります。また拡散する深さが100 mになると約7.6 km x 7.6 kmの範囲になります。

ちなみにこちらのエントリでご紹介させていただいているブログでは

放出ロから約150km南の宮古から釜石にかけてのりアス式海岸も深刻な放射能のたまり場となる

として,非常に広い範囲まで拡散すると訴えていらっしゃいます。

この主張を全面的に支持し,拡散する幅を10 km,深さを80 mとして計算すると,最終的に拡散する海水の体積は150 km x 10 km x 80 m = 120立方キロメートルと考えられることになります。すると,380億ベクレルのトリチウムは,

その範囲の海水が元々持っていたトリチウムの380分の1
トリチウム年間生成量の20分の1以下

に相当する量であることがわかります。

現在反対派,特に「三陸の海が汚染されている」というアジテーションを繰り返している方々の主張には,この計算でもわかるとおり一つのパラドックスを内包しています。つまり,「拡散することにより被害地域が拡大する」と訴える一方で,「薄められて被害が出なくなるなんて言うのは嘘だ」と訴えるという,自己矛盾です。

このような自己矛盾を抱えた主張を元にした反対運動は,推進派に反論の隙を与えるだけではなく,共に考え戦っていってもらわなくてはいけない現地の農家や漁師の方々に対し,いわれのない風評被害という無駄な負担を負わせることになります。

「三陸の海が汚染されている」という一文は,確かにセンセーショナルで,知らない人の興味を引きやすい文言かもしれません。しかし,私のような半可通がちょっと計算しただけで数多くの矛盾が出てくるような綻びの多い主張で,いったい誰の心を動かし,どこへ向かおうと言うのでしょうか。

私はこれまでどおり,原子力関連事業の拡大中止と削減をこれからも訴えていきたいと考えていますが,それ以上にありもしない汚染をあると主張し,風評被害を広げていくような反対運動には断固抵抗し続けたいと思っています。

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気になる化学リスク | 20:51:01 | Trackback(0) | Comments(0)
六ヶ所から排出されているトリチウムはどのくらい多いのか
いただいたコメントから,ちょっと思いついたので久々に計算をしてみました。そのきっかけとなったコメントはこちら。

六ヶ所再処理工場からは、総量としては膨大な量の放射性物質が海へと棄てられます。
例えば2008年11月27日には、トリチウム380億ベクレルが海へ棄てられました。
これは半減期が12.32年です。


「380億ベクレル」なんてきくと,ちょっとドキドキしてしまうような量ですね。こんな量を海に流し込んでしまったら,ものすごい勢いで海中の放射能が増えてしまうんではないでしょうか??

というわけで,計算してみました。

まず,トリチウムの壊変定数を求めましょう。
トリチウムの半減期は,12.32年です。崩壊定数と半減期の間には「崩壊定数×半減期=0.693(=ln2:lnは自然対数)」という関係があります。これを用いて計算しましょう。すると,

崩壊定数=0.693÷(12.32y x 365 day/y x 24 h/day x 60 m/h x 60 s/m)
= 0.624÷3.89E+8 s = 0.178E-8


という値が得られます。

次は海水中にトリチウムがどのくらい含まれているかです。

海水の体積は約1370E+6 立方キロメートルと言われておりますので,リットルに直すと1.37E+21 Lになります。

トリチウムはだいたい水分子の形で存在していると言われておりますので,今回もトリチウムは水の形で存在しているものとして考えます。

水 1L中に含まれる水分子は1000 g/18 g/mol=55.6 mol(水の分子量は18)です。また水分子中に水素は2個含まれていますから,水中に水素原子は,111.2 mol含まれていることになります。

このことから,海水中に含まれる水素原子のモル数は

1.37E+21 L x 111.2 mol/L = 1.52E+23 mol


となります。

現在自然界における水素に対するトリチウムの存在比は1E-18(10^18分の1=100京分の1)と言われておりますので,海水中に含まれるトリチウムのモル数は

1.52E+23 mol x 1E-18 = 1.52E+5 mol


と推定できました。

次にこのトリチウムの持つ放射能の強さを求めましょう。「放射能の強さ(単位:ベクレル)=原子の数×崩壊定数」という関係がありますので,今まで求めてきた値を使って計算します。すると,

海水中のトリチウムが持つ放射能
=1.52E+5 mol x 6.02E23(アボガドロ数) 1/mol x 0.178E-8
=1.63E20 Bq =1.63垓ベクレル


となります。

これと最初に出てきた380億ベクレル=3.8E10 Bqを比較すると,(1.63E20/3.8E10)=4.29E+9,つまり海水全体と比較すると約43億分の1にすぎない量であることがわかります。これはかなり少ないと言わざるを得ないでしょう。

さらに計算を進めます。

自然界のトリチウムの存在量は大体安定していると言われています。半減期にしたがって,トリチウムはどんどん壊れているはずなのに,どうしてなのか。それはつまり,壊れている分だけ生成されていると言うことです。

では,一年間にどのくらいの量のトリチウムが生成しているのでしょうか。

先ほど海水中のトリチウムが持つ放射能は,1.63E20 Bqと計算しました。これはどういう意味を持つかと言いますと,1秒間に1.63E20個のトリチウムが崩壊していると言うことです。ということは,1年間ではどのくらいの数のトリチウムが崩壊していることになるのでしょう。

というわけで,計算してみると

1.63E20 x (1y x 365 day/y x 24 h/day x 60 m/h x 60 s/m)=5.14E27個


自然界における存在量がほぼバランスしていると言うことは,単純に考えれば崩壊した量と同じくらいのトリチウムが新たに生成していると考えられます。ということはつまり,年間 5.14E27÷6.02E23=8.54E3 mol のトリチウムが生成していると考えられると言うことです。

ちなみに380億ベクレル相当のトリチウムについてモル数を計算すると35.5E-6 molとなりますので,今計算した量と比較すると年間生成量の2億4千万分の1という非常に小さな値であることが求められます。

このことから,現在のペースでの排出であれば,天然の変動よりもはるかに小さい影響しか与えられないと言うことがわかるわけです。

というわけで,久々に計算してみましたがいかがでしたでしょうか?いつものように間違いがありましたら,コメントなどでご指摘いただければと思います。

日常生活で扱う桁からすると「380億ベクレルの排出」などと言われると,非常にひどい汚染が繰り返されているように感じてしまいます。しかし,元々化学反応や放射壊変などは1 mol=6.02E23個(約6000垓)などという非常に大きな数を単位として考えなければならないような世界です。なので,より一層数字のマジックに踊らされないように気をつけなければいけないと思います。

一部の人たちがいくらアジテーションを繰り返そうと,三陸の海は,まだまだ十分にきれいなままなのです。

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気になる化学リスク | 19:47:37 | Trackback(1) | Comments(12)
放射線が出てくる仕組み その3~半減期
さて,長い間ほったらかしにしてしまいましたが,こちらの続きです。

ずっとコメントをいただいていた方からは,

これでやっとヨーロッパだろうがアジアやオーストラリアだろうがそこの物が不安なく買えると思います。ありがとうございます。


というコメントをいただきましたので,たぶん悩みは解決したのかな?と思っていますが,乗りかかった船ですので,最後までやろうかと思います。

というわけで,今回は半減期の話です。

前回のまとめとして,

放射壊変の起きる確率(=放射線の出てくる頻度)と出てくる放射線の種類は,
それぞれの放射性同位体によって決まっている


という話をしました。

放射壊変という現象は量子力学の世界での出来事ですので,不確定性原理によりある一個の放射性元素の挙動を予測することは不可能です。しかし,数百万個などの集団になった放射性元素がどのくらいの割合で放射壊変を起こしていくか,と言う問題に関しては厳密に求めることが可能です。これは純粋に確率の問題になるからです。

そのため,各放射性元素固有の「壊変定数」と言うものを求めることが可能となります。そのため,t=0の時の全体の数が半分になるまでの時間,つまり半減期も厳密に求めることが可能となるわけです。

ところで,この場合の半減期は「物理学的半減期」と呼ばれる場合があります。それは他のものとの相互作用などを一切考えず,その放射性元素固有の性質のみを考えた半減期だからです。

これに対し,「生物学的半減期」と言う言葉があります。

生物学的半減期とは,生体(主に人体)中にある放射性元素が取り込まれた場合,人体中におけるその放射性元素の量が生体中の作用により半分になるまでの時間のことです。

厳密には,生物学的半減期における放射性元素の減り方に物理学的半減期の要素は組み込みません。生物学的半減期と物理学的半減期の両方を組み合わせ,実際に人体の中に存在する放射性元素の量が半分になるまでの時間は実効半減期と呼ばれます。実はこれこそが,一連のコメントの中でずっと気にされていたものの正体です。

さて,一旦話を生物学的半減期に戻します。

生物学的半減期は生理的な作用により,ある放射性元素が体外に半分排出される時間のことです。生理現象は,大胆な言い方をすれば,すべて体内で起きている化学反応の結果です。つまり,その放射性元素が体外に排出される速度というのは,その放射性元素の化学的性質に依存することになります。

ということは,どういうことかと言いますと

同じ元素で同じ化学形態を持つもの同士の場合,
放射性同位体と非放射性同位体の生物学的半減期はほとんど同じ


ことが期待されるわけです。

なのでトリチウム(3H)ですとか,カリウム40(40K)のように,体内での代謝が早い元素は,他の安定同位体である水素(1H)やカリウム39(39K)と一緒に迅速に体外に排出されます。しかし一方ではストロンチウム90(90Sr)のように,骨組織の中に浸透して体内に長く保存されてしまったり,脂溶性化合物の中に炭素14(14C)が含まれている場合などは,同じ化学形態を持つ他の安定同位体(88Sr,12C)と共に比較的長い間体内にとどまることになります。

そして,一番重要なポイントなんですが,この生物学的半減期(物理学的半減期も同様です)は,最初の量に左右されません。つまり

1万個の放射性元素が5千個に減る時間と
50個の放射性元素が25個に減る時間は等しい


のです。

ですから,人体への影響を考える場合には生物学的半減期を含めた実効半減期について考慮することはもちろん大切なのですが,それより何より

量的な関係を第一に考える


ことが最も大切なことです。

現在報告されている環境放射能の測定値によれば,現在日本で健康上問題になるどころか,自然界における通常の変動幅以上のレベルで放射能が増大しているという測定結果は存在しません。ですから,三陸の魚介類も,青森県を初めとした原子力関連施設のある地域の農作物はもちろん,自然放射線の高い地域の生産物も全て安全であると言えるわけなのです。

もし明らかに自然界ではあり得ないような放射能が農作物や魚介類から検出されたという事例をご存じの方がいらっしゃいましたら,ご一報下さい。そんな大問題が起きていたら大変です。その様な情報は隠さずに大々的に共有していくべきだと思います。

というわけで,とりあえず「放射線が出てくる仕組み」シリーズについては一旦終了させていただきます。もちろんわかりにくいところや間違っているところがありましたらご指摘下さい。

あと,できればせっかくのブログという形でやらせていただいておりますので,コメントを残される場合には,「管理者のみ閲覧可能」ではなく,ぜひ公開指定で御願いいたします。その方が,より多くの方との情報共有が可能ですから,より広い範囲の方との議論が可能だと思います。ぜひご協力をよろしく御願いいたします。

テーマ:環境・資源・エネルギー - ジャンル:政治・経済

雑学 | 19:34:21 | Trackback(0) | Comments(8)

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