■プロフィール

ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

■最近の記事
■最近のコメント
■最近のトラックバック
■月別アーカイブ
■カテゴリー
■FC2カウンター

■ブロとも申請フォーム
■ブログ内検索

■RSSフィード
■リンク
環境放射能が強い地域の作物はどのくらい危険なのか(コメントへのお返事シリーズ)
さて,再びコメントをいただきましたのでお返事します。順番その他については,いつも通りということでご容赦下さい。

イチゴを選ぶ時、「佐賀は西で自然放射線も高く原発もある。それなら”さがとよのか”より栃木産の”とちおとめ”の方が放射線が少ないから、そっちを買おう。」とか、「エクアドル産やブラジル(イランの次に放射線が高く軽く日本の最高地域より10倍以上の数値)産のバナナやイランのラムサール(年間260ミリシーベルトで日本の最高地域より約260倍)産の農作物や、水鳥は放射線が高いから他所の産地の物を食べたい、羽毛布団もイランのラムール産のものは放射能を出し続けたら困るからやめたい。」とする必要が(不自由極まりありませんが)あるのか、、、うーん。


そのような心配や配慮をする必要は全くありません。環境放射能が高い地域に住んでいる方々への健康については,これまでも様々な疫学調査が行われています。私がぐだぐだと説明するよりも,非常に明快に調査結果を説明してくださっているサイトがありましたので,そちらをご紹介します。

(参考)世界の高自然放射線地域の健康調査より

こちらではご指摘にあったイランのラムサールにおける疫学調査などの結果についても解説されています。こちらの研究結果に寄れば,他の地域との間でガンや白血病などの発生率や死亡率に有意な差は無いことがわかります。

また,地域住民の遺伝子を解析した結果についても報告されています。中でも「二動原体」と呼ばれるものを解析した結果,この地域の住民は他の地域の住民に比べ,高齢になればなるほど二動原体が発生する頻度が上昇していることがわかりました。これは,この地域の人が他地域の人に比べ高レベルの放射線にさらされていることを意味しています

遺伝子異常が存在しているというと非常に恐怖感を感じるかもしれませんが,全変異原の影響がどれ位体内に蓄積されているかを意味する転座の頻度については他地域の住民との間に差が生じていないことから,高レベルの環境放射線にさらされているにもかかわらず遺伝子異常は蓄積していないは遺伝子異常の蓄積度にほとんど影響を与えないこと。それ故に,健康に対する影響もほとんど見られていないことがわかるわけです。

(081207追記)もう一点だけ強調しておきたいポイントは,その地域で産まれた子供の遺伝子を解析しても,二動原体や転座などは他の地域の大人よりも少ないどころか,他の地域の子供との間にも有意差はないという点です。これはつまり,親が受けた遺伝子変異が子供に受け継がれていないことを意味しています。(追記ここまで)

(081208追記)転座の出現頻度による遺伝子異常の蓄積度の推定の部分で,表現がおかしいところがありましたので訂正しました(ご指摘くださったmobanamaさんありがとうございます)。これはどういう事かというと,以前にも書いたのですが,現代社会では環境放射線を初めとする低線量放射線などよりもはるかに高いリスクを持つ要因が多すぎるため,環境放射線の影響などという微細なファクターは無視されてしまうということなのです。何度も同じたとえを使いますが,ご飯一膳あたり10粒ほど取り除いたとしても,ダイエットの役には立たないのです。(追記ここまで)

このように,その地域に長年住んでいても全く健康に影響がないのに,遠く離れたところでそこの産物を食べたり使ったりした人に健康影響が出るわけはありません。どうか安心してください。

人体はカリウムなどで一定に10という放射能を持つ(保つ)と仮定すると、新たに2という放射性物質を食べても、12にすることなくその2の分は消化排泄で調節する。放射性物質であっても人体に必要不可欠であり、カリウムは新たに摂れば古いものは体外に出す。それは必要な循環で人体が持つ放射能は一定である。


この辺,どうも微妙に誤解がある気がしてなりません。まず,カリウムの中に一定量の放射性同位体が存在することはご理解いただいたようで何よりなのですが,それがどういう事かというと,カリウムを摂取し体の中にカリウムが存在する限り,常に人体は一定の割合でカリウム40由来の放射能を持っていることを意味しています。そして,後からいくらカリウム(当然カリウム40を含む)を摂取しても,体外にカリウムは一定の割合で排出され(当然そこにもカリウム40は含まれる)ていきますので,体内のカリウム40濃度はほぼ一定になるわけです。しかし,カリウム40の割合が極端に高いカリウムを摂取したり,他のカリウム以外の放射性同位体元素(たとえばほとんどありえませんがウラン238とか)を摂取したりすれば,体内全体の放射能は当然(一時的にせよ)高まるのです。放射性物質が放射性物質を体外に押し出すわけではありません。ですから,健康影響を考えるためには量的な問題が非常に重要になってくるのです。

そして,もう一度念を押しておきますが,現在の日本で健康に影響を与えるような量の放射能を持つ食品が検出された例はありませんし,原子力発電所の近辺など問題が起きる可能性が存在する地域では定期的に環境や農作物についてのモニタリングが行われております。そして,それらの測定データは一般にも公開されており,誰でも閲覧することが可能です。

(参考)環境放射能調査報告(ようこそ「日本の環境放射能と放射線」へ)

どうぞご安心下さい。

さて,それでは最後に,投稿してくださった方が「過去、これまで自称専門家という方に驚かされた事」について,それぞれコメントさせていただいて,このエントリを終わりにさせていただきたいと思います。「実に全くのウソだった」という感想を持たれたようですが,正確には正しい部分と間違っている部分が混在していますので,さらにご理解を深める参考になればと思います。

「煙探知器のそばによったらα線被曝があって口に触れたり吸い込んだら大変な被曝。特に肺に入ったら取り返しがつかない。」


(評価 △)一部のタイプの煙探知機で,過去にα線を出すアメリシウム241(241Am)が使われていたものが存在するのは事実ですが,現在販売されているものは同形式のものでも放射性同位体が用いられていないタイプのものです。また,使われている場合でもごく微量であり,法的にも放射性物質としての登録・管理する必要もありません。また,肺に入ったら問題が大きいのも事実ですが,分解して直接手に触れたり無理矢理吸い込んだりでもしなければ被曝の怖れはありません。

「満員電車は人体のカリウム放射被曝で極めて危険。」


(評価不能)言った本人は,ちょっと気の利いた理系ジョークを言ったつもりなんだと思います。

「青森県六ヶ所村再処理工場が一日に捨てている放射性物質は他所の一年分、半減期が長いものが口から体内に取り込まれたら、10万年でやっと半分のものもあり、それでも半分でゼロにはならない。かといって半減期が短いと毒性が強い。三陸沖の海産物特に海藻は放射能が堆積、農作物も汚染、微量だからとよく言う人がいるが、大丈夫ではない。(これをいう方かなり多数。)」


(評価 ×)他所=他の原発とすれば,排出量が一年分というのは事実です。でも,それは日本の原発から排出される放射性物質が極めて微少であるということを意味しています。後半が単なる煽り以外の何者でもないことは,本ブログの他エントリをご参照下さい。

「特に放射性物質が肺から入ったら排泄する方法を持たない。(これも数名。)」


(評価 △)痰などの形で排出することは可能ですが,完全に取り除けるわけではないのは事実です。

「西日本は花崗岩が多かったりと環境放射線は多い。」


(評価 ○)事実です。

「普通に売っている天然水でも全て放射性物質を含む。飲料水でもある地下水は花崗岩を通るため放射性物質を含み、放射線を出す、ラドン水、バナジウム水、ゲルマニウム、ラジウムなどラドン温泉等で売っている鉱泉水は放射能が高い。」


(評価 ○)こちらも事実です。特にラドン温泉は比較的高い放射能を持っていますし,天然水には普通カリウムが含まれていますね。それどころか普通の水の中にもごくごく微量のトリチウムが含まれていますので,厳密に言えば放射能を持つ(=放射性物質を含む)ことになります。

スポンサーサイト

テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 01:00:38 | Trackback(0) | Comments(3)
「危」の標識が意味するところ
半減期の話がまだですが,ちょっとした小ネタを一つ。

最近このブログに「プロピレングリコール」というキーワードで検索されてたどり着く方が増えています。どうもGoogleで検索すると「プロピレングリコールはどのくらい怖いのか」が,5番目くらいに出てくるようなんですね。さて,来ていただいた方にとって有益な情報たり得たのでしょうか。

で,他にはどんなところが出てくるんだろうと見てみましたところ,やはり経皮毒としてプロピレングリコールを紹介されているページがありました。で,そのページで話をされている内容で「ああ,そうやって誤解をされているんだ」と思った内容があったので,そのお話を。

ここでもやはり「ドイツなどでは、日用品への使用が禁止されている発がん性物質です。」と解説されているんですが,この点についてそんな事実は無さそうだというお話はすでにしたとおりです。でも,今回の主題はそのすぐ後。トラックの写真とともに

シャンプー工場もこの化学物質成分が危険なことは知っています。
この写真を見てください!
シャンプー工場に入っていくトラックには、危険物のマークが付いています。


というコメントが書かれています。これが今日の本題です。

確かにそこに写っている写真のトラックには,黒字に黄色で「」と大きく書かれたパネルが貼ってあります。やはりこれはプロピレングリコールにものすごい毒があるからなのでしょうか。

この標識,実は

危険物の規制に関する規則で規定された表示


なんです。なので,この標識の正しい意味は

運搬中の物質は消防法上規制されている危険物である


ということになります。

では,消防法上の危険物というのは何かと言いますと

危険物とは、別表第1の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。(消防法第2条


と定義されており,問題の別表第1には,主に火災などの災害原因となりうる物質が指定されています。つまり,問題とされているのはその物質の可燃性爆発性などであり,その毒性とは無関係な標識なのです。ちなみに,プロピレングリコールは危険物第4類(引火性液体)に分類されていますが,この中にはエタノールや酢酸なども含まれており,そのことからも物質の毒性とは無関係な分類であることがよくわかります。

ちなみに毒性があるとして取り扱いに注意を求められるような物質を運搬する際には黒字に白で「毒」と書かれた標識を掲示することが義務づけられています(参考(PDF))ので,プロピレングリコールに毒性があるというのであれば,こちらの標識がつけられているはずなんですね。

もちろん製品中に含まれる量の数百から数千倍の濃度を扱い,それ以外にも様々な薬品を扱う工場で防護服を着るのはごく当然のことです。工事現場でヘルメットをかぶり作業着を着て安全靴を履くのと全く同じ,安全に配慮したごくごく基本的なレベルの対応です。別にシャンプーの工場だけが特別なわけじゃありません。

というわけで,ちょっとした小ネタでした。くれぐれも「危」パネルのそばでは火の気に充分注意してくださいね。

テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 16:33:37 | Trackback(0) | Comments(1)

FC2Ad