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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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電磁波の話:いきなり結論?
予告通り,電磁波の話です。表題にも書きましたが,この騒ぎに関していきなり結論っぽい話を見つけてしまいましたので,さっくりと文献から引用します。これ,近所の図書館から借りてきた本なのですが,定価10,500円と非常にお高い本です(^^; が,1500円とお安い要約版も出ているようです。

電磁界の健康影響―その安全性を検証する
要約版 電磁界の健康影響―その安全性を検証する

もし,興味があるという方はとりあえず要約版を手に入れて,物足りない場合は図書館などで要約版ではない方を探してみる,なんてのをお勧めします。

さて,今回私が借りてきたのはもちろん要約版ではない方です。ちょっと長いですが,そのP.8~9から引用します。

我が国では,アメリカにおける社会的な関心が雑誌や単行書で紹介され,高圧送電線の建設計画への反対が1990年代の初めからしだいに高まってきた。その中でも1993年に放送されたテレビ番組「ザ・スクープ,高圧送電線の電磁波」は大きな反響を呼び起こした。番組では上述のSavitz,Ahlbom両博士へのインタビューや,アメリカのテレビ番組でクリントン大統領が電磁界の健康影響についての研究を約束する場面などが紹介されて,一貫して極めて危険であることが強調された。しかしながら,Savitz,Ahlbom両博士の発言は実際に聞こえる英語と日本語字幕が違っていて,正しく伝えられていないなど,公正さを欠いた番組であった。Savitz博士は「小児白血病の10~15%は送電線からの電磁波によると考えられます」と字幕に出ているが,英語では”might be caused …”(かもしれない)といっている。しかしSavitz自信の研究結果とは異なるので,後に著者が直接本人に確かめたところ,そんなことはいった覚えがないという。いやはっきり英語で聞こえたというと,それは自分の意見ではなく,ある人はそう言っていると引用したのだが,その部分をカットしたのだろう,どうせテレビのインタビューなんてそんなものだ,と一笑に付したAhlbom博士は,私たちの研究結果(小児白血病が送電線近くで増加している)はとうてい証明されているとは言えません(far from being definitely proven)と明言しているが,字幕では「まだまだわからないことがあります」と見当違いの訳文でごまかしているとしかいいようがない



え~………,前回のエントリで私が腰砕けになったと言った気持ち,おわかりいただけますでしょうか(^^;;;;; まぁ,ようするにアレですよ。マスコミがいつものようにやらかしてるというのが結論のようです。

とは言え,それだけではこの本を見つけるまでの私の努力が悔しすぎて何なので,しばらくこれ関連のエントリを続けようかと思っています。

ところで,どうしてこんなことになってるのでしょうか?

電磁波に恐怖感を抱いている人たちの書かれたWebや本などをざっと見てみると,先日話題にした経皮毒なんかと違って,意外と(といっては失礼ですが)その根拠にちゃんとした学術論文が使われているケースが多いことに気がつきます。

最初は大変失礼なことに,いろんなバイアスの可能性を見落としているんじゃないか?とか思って,ここまでのエントリでもバイアスの話を中心にしていたのですが,よく引用されている論文をかき集めて読んでみたところ,どれも発生しそうなバイアスについてきちんと検証している論文ばかりでした。それに危険の根拠とされている数字自身も論文から正しく引用されているものがほとんどでした。

しかし,なぜか「結論とその解釈だけが著者と異なっている」のです。どういうことなのでしょうか?

おそらく一番問題としてみなければいけないのは,バイアスがどうこうとか研究デザインがどうこうなんてそんな難しい問題ではなく,そもそも「相関関係と因果関係の区別が付いていない」ことにあるのではないだろうか?と推測するに至りました。

先ほどの本では「『association』という単語の意味を正しく理解してないのではないか」という指摘があったのですが,英語圏で同様の活動をしている人たちも数多くいることを考えると,英語から日本語に訳する時の問題ではなく,そもそもこの「association」という単語を「疫学独特のニュアンス」で用いることに対するコンセンサスが取れていないことが原因なのではないかと思っています。

「association」を日本の疫学では「相関関係」と訳すのが一般的なようです。しかし,「因果関係」は「causality」などと対応させていることからもわかるように,根本的に違う概念です。っていうか,本来日本語でも「相関関係」と「因果関係」は違う概念のはずなんですが,どうも意図的なのか無意識なのかこの辺を混同している人が多いように感じます。

つまり,「相関関係」というのは,「見た目上同じように変化している」ことを示しているだけであって,「原因と結果の関係(因果関係)とは全く別のもの」のはずなんですね(^^; 

疫学において,直接見えてくるのはこの「相関関係」です。しかし,元々の目的はもちろん「因果関係」を立証することにあります。なので,その立証を目指していろいろと傍証を集めたり検証をしたりするわけなんですが,当然どのような手順を踏めば因果関係があると見なせるか,という部分について一定のコンセンサスが存在します。

(1) 関連の強固性
 要因と結果の間に密接な関係が認められること。すなわち、相対危険比あるいはオッズ比が高いこと、統計的検定において有意(95%信頼区間の下限値が1以上)であること、量-反応関係が認められることなどにより、観察された関係がより強固であること。
(2) 関連の一致性
 異なった研究方法、研究者、研究対象者で行われた疫学研究で、全て同じような結果が認められること。
(3) 関連の特異性
 要因と結果の間に特異的な関係が認められること。すなわち、ある一つの要因がある時、疾患の発生をある程度予測できること。
(4) 関連の時間性
 要因が作用してから結果が現れるまでの時間的関係が妥当であること。すなわち、疑わしい要因の曝露が疾患発生前に存在し、その間隔が疾患の潜伏期間に相当するものでなければならない。
(5) 関連の整合性
 要因と結果の関係が、生物学的研究による科学的な知見など、従来の理論や経験と矛盾しないこと。すなわち、要因と疾患に関する現在の知識に照らし、その関係が矛盾なく説明できれば、因果関係が強固となる。

(参考:因果関係の判断基準

現段階では,電磁波に関する疫学研究は(1)をクリアしたものがいくつかあって,それらの事例について(2)に該当する追試や検証が行われています。そして,現時点では相関関係が肯定された研究と,否定された研究の両方が同様に存在し,どちらか一方に結論づけられる段階ではないというのが現状だと思います。(3),(4)についても様々な面から検証が行われており,その解釈も(2)同様賛否両論入り交じっていますが,(5)だけに関しては,非常に高レベルの電磁界中で細胞分裂などに異常が起きる現象は観察されておりますが,送電線や家電から発生するレベルの電磁界については,少なくとも現段階までの研究ではほとんど全否定されております。

また,相関関係が認められたとされている疫学調査の結果についても,その評価法を巡って様々な意見が交わされており,因果関係が明らかであると認めている疫学研究者は,原著論文の著者を含めて存在しないのではないかと思われます。ただし,相関関係の存在については認めている人が一定以上の数いるため,電磁波に恐怖感を抱いている人たちがよく根拠として上げている「EMS-RAPIDプログラムに基づくNIEHS(アメリカ国立環境研究所)作業部会における中間報告」において低周波磁場(Magnetic fields (extremely low-frequency))が「Group2B, possibly carcinogenic to humans(ヒトに対する発ガン性の可能性がある)」に分類される(ちなみに低周波電場(Electric fields (extremely low-frequency)は,「Group3, Not Classifiable as to its Carcinogenic(ヒトに対する発ガン性が分類できない)」に分類されています)ことになりました。

ちなみに,このIARCが発表したこの発ガン性のカテゴリーわけの詳細についてはこちらに詳しく掲載されていますので興味のある方は参照ください。様々な物質環境などが列挙されていますが,Group2Bは他にどのようなものが載っているかというと,一番身近なものではコーヒーだったり,原油だったりです。………,なんとも判断に迷いますね(^^;;;;;

というわけで,だいぶ長くなってしまいましたが,次回以降のエントリでは,よく引用されている代表的な疫学調査の論文について,本当はどういう読み方をすべきなのか。ということについて紹介していこうかと思います。また,私自身も多少不安な部分がありますので,ご指摘やご質問など大歓迎です。もちろん「つまんないから,もう止めろ」という意見もお待ちしております(^^;;;;

では,また次回

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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 19:21:11 | Trackback(0) | Comments(6)

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