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ぷろどおむ

Author:ぷろどおむ
元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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誤解なのかミスリードなのか その3~セラフィールドの反省は生かされているのか

だいぶ間が開いてしまいましたが,その間も検索などでたくさんの方にきていただいているようでありがとうございます。また,ブログなどでも紹介してくださったり,拍手コメントなどもいくつかいただいたりと,非常にありがたいことだと感謝しております。 ということで,とりあえず続けてきた反再処理工場のデマシリーズも,今日でとりあえず一区切りです。


 ミスリード?その3:イギリスのセラフィールド再処理工場周辺では、全英平均の10倍以上の小児白血病が発生しています。(推進派は、「そんな事実はない」と宣伝していますが、以下の詳細の終わりの方に書いてあるように、イギリス政府は「10倍以上の白血病が発生している事実は認めているが、再処理工場との因果関係は認めていない」だけです)(引用元) 


セラフィールドにおいては,確かに様々な問題が生じているようです。今のところ,疫学的に再処理工場との因果関係を明らかにするほどのデータが集まっていないというのが現状のようですが,一日も早く明らかにしていただきたいところです。 しかし,セラフィールドで起こったことが六ヶ所でも起こるのでしょうか?セラフィールドの反省は六ヶ所では生かされていないのでしょうか?セラフィールド再処理工場の影響と,小児白血病の関係が明らかになっていないのをいいことに,原燃が強行突破をはかろうとしているのでしょうか?


 もちろんそんなことはありません。


そして,何より重要なこととして,セラフィールド再処理工場の海洋放出に関する1970年代の放出状況は,当時の放出基準は満足していたものの,現在の放出基準と比べて数十倍~百倍程度高いものであったことを忘れてはいけません。その後,イギリスでも80年代に入り,放射性物質の除去技術の開発が進められ,海洋への放出量の低減化が図られており,全α線核種の放出量だけでも現在はピーク時の数百分の1になっています。 当然六ヶ所の放出基準は,現在の最高水準の除去技術を元に設定されていますので,推定年間放出量は現在の海外再処理工場の放出基準と同レベルとなっています。


また,よう素の大部分を海洋放出している英仏の再処理施設の方式に対し,六ヶ所では処理工程での溶液中のよう素を気体中へ追い出したあと,よう素フィルター(銀系吸着剤)でほとんどを除去することで,放射性よう素の海洋への放出量は,英仏の再処理工場の1 /10以下となっています。さらにその他核種(αおよびβ・γ)についても,主に化学処理(凝集沈殿等)してから,ろ過後海洋放出している英仏の再処理施設と比較して,六ケ所工場では蒸発缶で蒸発濃縮し,その凝縮水を海洋放出するという方式をとっているために,これらについても海洋への放出量が,英仏の再処理施設と比較して1 /100以下となっています。


このように,原燃側としてもセラフィールド再処理工場などの既存施設における基準や反省などを考慮して,最大限の努力をしようとしているわけです。それにもかかわらず,そのようなことには一切ふれずに,「小児白血病の発生率が10倍」などとセンセーショナルな点だけを紹介するというのは,あまりに情報提供のやり方が偏っているとしか思えません。


当然,このような対策が十分に取られているかどうかを監視しなければいけませんが,あたかも無対策であるもしくは,対策など取りようがないというような印象を与えた文章を公開するのは,知っててやってるとしたらとんでもなく卑怯な行為といわざるを得ませんし,知らなかったとしたら勉強不足の誹りは免れないでしょう。


何度も書きますが,今の原子力行政や再処理工場の意義について異論を唱えるのは大切ですし,必要なことだと思います。しかし,その目的を達成するためだからと言って,嘘やミスリーディングを誘発するようなまねをすることは,無用な風評被害を巻き起こし,こちらの信用を失墜させるだけで何のメリットもありません。ぜひ,このようなやり方は考え直していただきたいものです。


次回は,原発に対する私の基本的な考えなんかをまとめてみようかと思います。



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気になる化学リスク | 15:48:03 | Trackback(0) | Comments(3)
「食べたら死ぬ」ほどの放射能とはどのくらいなのか

懸念していたとおり,新潟産の魚介類に対する風評被害が広がっているようですね。個人的にはそこまで気にするのであれば,ラドン温泉の利用は全国的に停止した方がいいと思います。


ところで,「食べたら死ぬ」くらいの放射能を日常食べている程度の量の食品から得るためには,どのくらいの放射能が含まれた食材を食べればよいのでしょう。また,その規模の被害が起きるためには,どのくらい大きな放射能漏れが起きる必要があるのでしょうか。多少不謹慎な気がしますが,がんばって計算してみましょう。


最初,「食べた瞬間に死ぬ」くらいの放射能を持っている食材について計算しようと思ったのですが,そんなにすごい放射能を持った状態(100%致死量が7 Svと言われています)で,お米(稲)や野菜,魚,肉(豚,牛)などが生きて収穫され,食卓にやってこれるとは到底思えないことに気がつきました。


なので,今回は慢性的に放射能を摂取し続けた場合について考えてみます。


とりあえずお米。だいたい1合が150gで、一膳が0.5合くらい。ということで,一日に1.5合=225 g食べるとすると,一年間では約82 kg。原発や再処理工場からの影響ということで考えると、混入してくる核種で一番実効線量が高いのがセシウム137の1.30E-05 mSv/Bq。


原子力関係の仕事に従事していない一般人の年間線量限度が1 mSvなので,ここに達するために必要な放射能は


1 mSv / 1.30E-05 mSv/Bq = 7.69E04 Bq


この線量をお米 82kgから得るとすると,お米1 kgに含まれる必要のある放射能は


7.69E04 Bq / 82 kg = 938 Bq / kq (ただしセシウム137として)


この状態のお米は,常に1秒間に938回も放射壊変をして放射線を出します。お米10 kgなら,その10倍ですから9380回。ガイガーカウンターを近づければ間違いなく検出できます。


しかし,セシウムの環境から植物への移行は開花期に処理した場合0.74%、実がついてからでは0.42%移行することがわかっていますし,葉等から転流により放射能が移行する確率は低いと考えられています。(参考


お米の平均収穫量は10アール(=1000平方メートル)あたり512 kg(平成12年)というデータがありますので,10アールのお米を汚染するために必要なセシウム137は


938 Bq / kg x 512 kg / 0.74 % = 64.9 MBq (M=メガ=1E06=1,000,000)


となります。ちなみに一人が食べるお米82kg分に必要なセシウム137は,放射能にして10.4 MBq分です。これだけの放射能を持つ放射性物質が,特定の田んぼに集中して漏れる必要があります。この時に発生する線量は,10アール汚染された時で843 mSv,一人分でも135 mSvです。


環境モニタリングシステムが測定している空間線量率の単位がnGy/hですので,γ線として考えると通常の100万倍以上の放射線が観測されるはず,ということになります。比較的長時間にわたって漏れ続けたとしても,通常の1万倍以上の放射線が検出されるでしょう。


しかも,これだけの放射能漏れ,正確には放射性物質漏れが起き,その漏れた放射性物質がすべて特定の水田に注ぎ込んだというあり得ない条件を与えて計算し,なおかつこの大量の放射線を浴びた稲が生き残って収穫され,すべての検査をかいくぐって食卓に運ばれ,その汚染されたお米だけを選択的に一年間食べ続けたと考えても汚染した食材から得られる放射線量はたったの1 mSvです。


「たった」などというと,眉をひそめる方もいるかもしれませんが,日本の場合、医療で受ける放射線の量は、国民一人当たりにすると年間で平均約2.4 mSv程度。自然放射線から受ける線量の年間平均(世界平均)が2.4 mSv(日本では0.99 mSv,ブラジルのガラバリでは10 mSv)などという事実を考えると,1 mSvという値は決して大きくはありません。なので,これだけがんばっても


この程度の線量であれば死なずに済みそうです


ということで,食材からの放射能汚染だけの影響で命に危険をもたらすのがどれだけ難しいかイメージしていただけたでしょうか。


しかも,今回風評被害に遭っている新潟産の魚介類の場合,大量に存在する海水による拡散の影響まで加味しなければいけません。ですので,今回お米で計算した場合よりもさらに100万倍以上の放射能漏れが起こらない限り,ちょっとやそっと食べたからと言ってどうなるという程度の影響を出せそうにありません。そして,そんなレベルの放射能漏れが万が一起きてしまった場合,残念ながらその時点で,原子力発電所の敷地内にいて生き残ることのできる人は皆無なのではないでしょうか。


放射線というと,ごく微量でも命に関わると思っている人が非常に多いのが現状ですが,こうして一つ一つ面倒がらずに考えていくだけで,そう簡単にどうこうなるものではないことがよくわかると思います。そして,我々の健康に被害が及ぶレベルでの放射能漏れが起きたりしたら,どんなにがんばっても隠蔽できるような代物ではないことも覚えておいた方がいいと思います。


「東電のモニタリングシステムが,地震直後データの提供が止まっていた。あれは事故の影響を隠蔽しているのだ。」という話がネット上の至る所で散見されています。


事実,地震直後東電が提供しているモニタリングシステムは停止していました。しかし,原子力発電所近傍に設置されている新潟県提供のモニタリングシステムは正常に稼働を続け,周辺環境に異常がないというデータをリアルタイムで送り続けていました


原子力発電がもたらす危機に関する警鐘を鳴らすことは絶対に必要なことです。しかし,事実をゆがめてまで世論を自分たちの思うがままに操作しようなどというのは,単なる卑怯者です。


放射線の発生と,その影響は純粋な物理学の分野の話です。正しいデータと知識をもたずに,イメージだけで判断するのは大きな間違いを生むだけです。原子力発電に反対する側こそ,このことを肝に銘じて行動しなければいけないと思います。



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気になる化学リスク | 18:13:26 | Trackback(0) | Comments(4)
誤解なのか,ミスリードなのか その2 ~農作物中の放射性物質について

ミスリード?その2:青森県のりんご、長いも、ニンニクは全国一の生産高で、ゴボウ、ダイコン、サクランボもたくさん生産されていますが、こうした農産物が放射能によって汚染されます。青森県は「県産米は他県の米に比べ2倍の放射線が出る」と予測しています。(引用元


とりあえず,参考リンク先で様々な食品に放射能が含まれることを指摘しているようですが,元々再処理工場や原子力発電所の有無にかかわらずある一定の割合で放射能が含まれていることを知らせないのはフェアではありません。


今回問題視されているのは14炭素ですが,食品中に含まれる放射性物質で代表的なものに40カリウムがあります。もちろんお米の中にも含まれており,日本の場合平均30Bq含まれていますし,他の食品にも普通に40カリウム由来の放射能が含まれています。(参考:http://www.atomin.gr.jp/atomica/pict/09/09010405/02.gif


また,14炭素は弱いベータ線しか出すことのできない核種ですし,自然界の炭素1g中に元々0.25Bq程度の割合で含まれています。なので,もちろん他の炭素とともに普通に代謝されるため体内への蓄積もありませんし,人体への影響を表す実行線量も実は40カリウムの1/10程度です。ですから,実はたとえ90Bqの14炭素が青森県産のお米に含まれていたとしても,元々入っている30Bqの40カリウムから受ける影響の方がずっと大きいのです


それでは,いつものように計算してみましょう。


14炭素が経口で体内に取り込まれたときの変換係数は,いつものようにこちらの表を用いると5.8×10−7 mSv/Bqですので,最大90 Bqの放射能が含まれているお米1 kgから受ける影響は


5.8E-07 x 90 = 52.2E-06 mSv = 52.2 n(ナノ)Sv


となります。


14炭素の年間摂取限度という値を見つけることができませんでした(というか,普通に代謝されて蓄積しないので気にする必要はなさそうですが)ので,年間の自然放射線変動幅である0.35 mSv分と比較します。この年間変動幅と同等の影響を,青森県産米中に含まれる再処理工場稼働により増加した放射能から受けるためにはどのくらいのお米を食べる必要があるか,と言うと増加分は90 Bqの半分だそうですので,


0.35E-03 Sv / (52.2 E-09 Sv/kg / 2) = 13410 kg = 13.4 t


ということになります。


正直,私もお米が大好きな方ですが,たった一年でこんな量のお米を消費しろと言われても(たとえ液体の形にしたとしても)とても無理です。


このような極微少の放射能の影響を針小棒大に取り扱い,何も知らない人たちに「青森県産の農作物を食べたら死んでしまう!」などと叫ばせるほどの風評被害を広めた罪は


間違いなくこのようなミスリーディングを煽った側にあります。


まじめにがんばって農業を営んでいる無実の農家の方々に,無責任な風評を広めることで被害をもたらすような反対運動は断じて許してはいけません。


嘘や偽りやイメージ優先の反対運動は,推進派のつけ込む隙を与え,一般の方々からの反対派に対する信頼を損ねるだけで百害あって一利なしです。もし,このような数字以上に明確な被害が出ていることを知っているのであれば,あるいはそのようなデータが存在しているのであれば今すぐ公にして知らせるべきです。しかし,このようになんの影響も与えないことが分かり切っているような数字を使い,イメージだけで恐怖感を煽るような行為は今すぐにやめるべきです。


このような卑怯な真似をしてまで,人々の恐怖感を煽り,無用な風評被害を「意識的に」広めている人がいるのだとすれば,私は心から軽蔑します。もし,これらの値の本当の意味を知らずに風評の流布に荷担してしまった人は,今すぐその態度を改め,あなたが広めた間違った情報やイメージを訂正する活動を始めるべきだと思います。



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気になる化学リスク | 18:42:29 | Trackback(0) | Comments(1)
誤解なのか,ミスリードなのか~大気中に排出される放射性物質について

今朝の朝刊各紙に掲載されていた週刊現代の広告を見て目眩を起こしました。いったい,彼らはどこのどういうデータを使って柏崎近辺で捕られた魚介類が危険だと判断したというのでしょうか。このブログをお読みいただけた方々であれば,すでにご理解いただけていると思いますが,あのような根拠のない風評をまき散らすだけの報道は,原子力発電の今後を真摯に語ろうとする側からも百害あって一利なしです。断じて許してはならないと思います。


さて,今回のは,前回のものや週刊現代のように明らかにデマを流しているわけではないです。しかし,間違った印象を持ちやすい文章という意味では非常に注意が必要です。とはいえ,この文章が単なる誤解や無理解の結果ならあれ何ですが,読み手側のミスリードを誘発しようとしているのであればかなり悪質です。


ミスリード?その1:大気中には希ガス放射能のクリプトン85が放出され、その年間放出量は、スリーマイル島原発事故時に放出された全希ガス放射能量の3.6倍になります。(引用元


スリーマイル島で起きた原子力発電所でのメルトダウン(炉心融解)事故は,世界中で話題になり興味のある方は名前くらい知っているでしょうし,中にはチェルノブイリ並みの大事故であったと記憶している方もいるかもしれません。


でも,よく考えてみるとその被害規模について意外とよく知らない人が多いんじゃないですか?


きっとこれを聞いて意外に思う方は多いと思いますが,実は


スリーマイル島の事故では,放射性物質はそれほど外部に漏れていない


んです。(参考:Wikipediaスリーマイル型気体放出事故(文科省原子力安全課))


この事故で一番問題になった炉心融解,いわゆるメルトダウンにより発生した大量の放射性物質は,確かに今現在も原子炉の隔壁内部に残っております。しかし,これらは外部に漏洩してはいませんし,半径50マイル(80km)の住民の平均被ばく線量は0.01mSv(最大でも1mSv)程度で,チェルノブイリとは異なり健康上問題となるような量ではなかったのです。


また,それ以前の問題として


希ガスの放射性同位体による健康被害はほとんどあり得ない


という事実があります。現実にスリーマイル島の事故においても,発電所の補修作業員や近隣住民などにおきた軽微な被曝の原因となった核種は131ヨウ素や60コバルトであり,気体として放出された希ガスではありませんでした。


これは,希ガス自身が持つ「他の物質との反応性が著しく低い」という特徴と,元々それほど強い放射線を発生しない核種であるということが原因です。他の物質との反応性が著しく低いと言うことは,高校の化学などでも希ガス類の特徴として一番強調されている部分ですので,ご存じの方も多いかもしれないですが,この特徴があるため人体や他の生物の中に入ったとしても,何かと反応して蓄積されるようなことなく,速やかに体外に排出されてしまいます。


さらに,六ヶ所の再処理工場から排出される85クリプトンが放出するγ線は特に弱いものなので,Bqとして表現される放射能としては非常に大きな値を示していますが,人体に与える影響はほとんど無視してかまわないレベルでしかありません。


この文章は,イメージ的には非常に深刻な事故として記憶されているスリーマイル島の事故を利用して,六ヶ所再処理工場から気体としてとんでもないものが排出されているような誤解を招きやすいものであり,「悪文」と評価して差し支えないものであると断じてもかまわないと思っています。


しかし,この文章で一番最悪なのは,本来この文章で問題にされている85クリプトンとは全く関係のない農作物中の放射能の話へそのまま続けていることです。前述したとおり,85クリプトンをはじめとする希ガス類,さらに85クリプトンと同じく気体排出成分の大部分であるトリチウムも生体中に濃縮されることはほとんどあり得ません。それにも関わらず,このような文章の後に農作物中の放射能に関しての一文を書き加えるなどと言う段落構成にしてしまうというのは,


全くの無理解無配慮か悪質なプロパガンダ


のいずれかではないかと,疑ってしまいます。


このような悪文が原因で,本来発生する必要のない風評被害が蔓延していることに,この文章の作成者は深く反省すべきです。このような悪質な印象操作とも受け取れるような悪文をこれ以上広めることは,厳に慎まなければならないと思います。


次回は,今回も最後で少し取り上げた農作物中の放射性物質についてお話ししようと思います。



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気になる化学リスク | 15:21:08 | Trackback(0) | Comments(5)
続・デマその1:再処理工場廃液の生体濃縮について

それでは,お約束通り生体濃縮された場合について検討します。


自然界,特に海水中には様々な重金属が溶け込んでいることが知られています。その中にはもちろんウランなどの放射性元素も含まれていますし,海水からウランだけを抽出して原子力発電所の燃料として使うための研究が行われるほどふんだんに含まれています。


さて,その海水中に住む魚や貝,海藻などは当然海水を様々な形や手段で体内に取り込みながら生活していますが,当然その取り込まれる過程においてそれぞれの生物種に特有の選択性で重金属を体内に残留させます。


ある種の海藻類などのように,直接重金属を体内に取り込む場合もありますが,魚や貝類などの場合は何らかの有機化合物の形(有機重金属錯体と呼ばれます)で取り込み,体内の脂肪分などに蓄積します。当然,元から有機金属錯体の形になっていれば取り込まれやすくなります。これを生体濃縮と言います。


通常,濃度の薄い環境中に加えられた濃厚な物質は,エントロピー増大の法則に従い必ず濃度が薄くなる方向に拡散します。しかし,生体濃縮の場合は生体自身の生命活動の一環として体内に取り込まれていくので,環境中より高い濃度が生体内に存在することになります。


さらに,このような形で微量の重金属を取り込んだプランクトンを大量に摂取した小魚,その小魚を大量に摂取したより大型の魚,その大型の魚を大量に摂取したさらに大型の魚………,というように食物連鎖に組み込まれていくことで,食物連鎖的により上位の生物中により高い濃度で濃縮されていくことが知られています。そのため,有害な成分が生体濃縮されて食物連鎖に取り込まれた場合,環境中では薄い濃度であったとしても,人間に多大な影響を与える場合があります。その顕著な例がメチル水銀の形で水銀が濃縮されたことによって引き起こされた水俣病です。


当然,放射性元素も元を正せば金属の一種であることに違いはありませんので,その種類によっては生体濃縮が起こります。ですから,このような環境問題を考えるときに生体濃縮について考慮するのは,当然のことです。


しかし,少し前でも述べたとおり,その放射性元素が生体中に濃縮されるかどうかは,どのような化学構造を持った化学種の形で取り込まれるかに依存しており,通常水の一部となって取り込まれるトリチウムなどでは,代謝が早いために生体濃縮はほとんど起こりません。


また,次回お話をする予定の85クリプトンなどのような希ガスと呼ばれる種類の元素は,通常の条件で他の化合物と反応することがほとんど無いため,やはり生体中に濃縮されることはほとんどあり得ませんので,今回の場合この二種類については考慮する必要はありません。


ということで,今回は何度も取り上げているこちらのページでも「日本原燃は、「ヨウ素は海水濃度に対して魚で30倍、ワカメやコンブなどの海藻類で2000倍」に濃縮されると述べています。」として警鐘が鳴らされているヨウ素について検討しましょう。ただし,このページで紹介されている公式見解の「魚で30倍」という濃縮係数には異論を唱えているページも散見されますので,そのようなページで紹介されている180倍という濃縮係数で計算します。


普通生物濃縮の濃縮倍率を表現するときには,その生物が採集された近傍での濃度と比較しての倍率で表現されます。なので,この場合普通は近傍の海水中の129ヨウ素濃度と比較するのが一般的な表現です。


では早速,前回の計算結果から濃度の一番濃いところにおける129ヨウ素の濃度増加分は7 μBq/cm3 ,7.7E-10 mSv/cm3 を使います。ここから魚1kgあたりで増加した放射能から人間が受ける影響の増加分は濃縮係数を180とすると



7 μBq/cm3 x 1000 cm3 x 180 = 1.26 Bq
7.7E-10 mSv/cm3 x 1000 cm3 x 180 = 0.00014 mSv



となります。シーベルト換算した増加分は,自然放射線の年間変動値0.35 mSvの2500分の1です。また,この魚から129ヨウ素の年摂取限度である9.1.E+03Bq/年分の129ヨウ素を摂取するためには,このような環境に生息した魚を年間約7,200kg以上食べる必要があるということになります。もし濃縮係数が公式発表通り30倍程度であったとすれば,この6倍の43,200kg=43.2トンもの魚が必要になります。


同様に海藻類についても同様に濃縮係数を高めに見積もって,2,000x6=12,000倍の濃縮係数で計算しましょう。すると,それぞれ



7 μBq/cm3 x 1000 cm3 x 12000 = 84 Bq
7.7E-10 mSv/cm3 x 1000 cm3 x 12000 = 0.0092 mSv



となりますので,同様に自然放射線の年間変動値の約40分の1,年摂取限度の129ヨウ素を摂取するには年間約100kg以上のコンブやワカメを食べる必要があることがわかります。もちろん,こちらも公式発表通りの濃縮係数2,000倍程度であったとすれば,その6倍の600kg以上の海藻を食べる必要があることになります。


ちなみに,これも次回の話と関係してくるのですが,元々コンブなどの海藻類にはカリウムが大量に含まれているため,天然に存在する放射性核種の代表格40カリウムも大量に含まれており,乾燥重量なので簡単に比較はできないのですが,干し昆布中には40カリウム由来の放射能が2,000 Bq/kg含まれていることが知られています。ちなみに魚の中にも40カリウム由来の放射能が100 Bq/kg含まれており,それだけを考えても再処理工場から排出される廃液の影響がどれだけ微少なものかと言うことがよくわかると思います。


以上,結論として,これだけ極端に濃縮されたケースを考えた場合でも,このような微少な影響しか与えることができないと言うことを考えれば,今現在青森県産の魚介類に年間の自然放射線変動誤差以上の影響が再処理工場の通常稼働によってもたらされることは考えられないという結論以外導き出せません。しかし,もし青森県産の魚介類から,有意な差を持つ放射能が検出された事例をご存知の方がいらっしゃいましたら,非常に重要なことですので隠さずにその詳細を教えていただければと思います。


放射性元素に関する生体濃縮の実例はほとんど報告されていません。しかし,金属の生体濃縮に関する研究は数十年以上の歴史を持つ古いテーマであり,様々な元素の様々な化学形態について詳細なデータが蓄積されています。過去のデータを盲信しろとは言いませんが,その詳細もチェックせずに破棄するのはそれ以上に意味のない行為です。せめて,そのデータの整合性,正当性と適用範囲くらいはチェックしておくべきだと思います。


次回は大気中に放出される放射性物質の話と,できれば農作物への影響までお話ししたいと思います。



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気になる化学リスク | 20:13:49 | Trackback(2) | Comments(12)
デマその1:再処理工場は一年間に47,000人分の致死量の放射能を海に排出する

デマその1: 青森県の六ヶ所再処理工場が動き出すと、プルトニウムが分離され、高レベル放射性廃液が海に大量に放出されます。放出される放射能は、1年間で3億3000万ミリシーベルト。これは47000人の経口致死量に相当します。)(引用元


解説: 
高レベル放射性廃棄物の定義が微妙に一般的なものと違っています。後述しますが,今回再処理工場から排出される廃液は全然高レベルではありません。


おそらく,この数字は原燃が出した事業計画書が元になって算出されたものと思われます。シーベルトへの換算や経口致死量の計算自体はこちらのページと同じものでしょう。


まず,この表を読むときに気をつけなければいけないのは,これが「年間でのトータル量」であるということです。つまり,トータルではこれだけの量が排出されるけど,これらの放射性物質は海水によりどんどん薄められていくと言うことです。


ですので,排出口から出てきた排水を全量採取して煮詰めて放射性核種だけをかき集めるなんてことをしない限り,トータル量だけを取り上げて致死量がどうのなどと言うのは全く意味がありません。


また,この表を見てもわかるとおり3億3000万ミリシーベルトのうち,3億2400万ミリシーベルトはトリチウム由来のものです。


トリチウムの出す放射線は非常に弱いベータ線ですので,外部被曝を起こすことはほとんどありません。また,トリチウムが体内に取り込まれたときの代謝についてもすでに研究がなされており,結論から言うと外部から摂取したトリチウムは人体の中にとどまることなく極めて迅速に体外に排出され,元々体内に持っているトリチウム量が変化すると言うことはほとんどありません。


ですので,確かに一度に大量のトリチウムを摂取した場合には健康被害を起こすおそれはありますが,低濃度のトリチウムを長期間摂取し続けたからと言ってどうということはないわけです。


では,次にこれらの放射性物質がどのように拡散するかを見てみましょう。「三陸の海が再処理工場により汚染されている!」という主張の元に反対活動を続けている「美浜の会」というところが,試料としてチラシで配布している海流による放射能の拡散予想図を使って計算します。


この図では毎秒1Bqの放射能が一年間放出された場合,排出された放射能分布がどうなるかを予想しています。図が二種類ありますが,こちらのブログの解説によると,図2の方がより確からしい予想だそうですので,そちらを元に計算します。


まず先ほどの原燃からの申請値1.8E+16Bq/年を365x24x60x60=31536000秒で割ってあげると,毎秒5.7xE+8 Bqの放射能が放出されることになります。先ほどの海洋拡散図から判断して,一番濃度の濃いところでも1Bqあたり25E-10Bq/cm3です。なので,一応多めに見積もってその倍の50E-10Bq/cm3までしか薄められなかったとしても2.85Bq/cm3の割合で放射能が増えた水ができるにすぎないことがわかります。図2では八戸近辺の様子が出ていないのですが,もし図1の通り水色の領域であったとすれば,この1/10である0.29Bq/cm3,黄色だったとしても1/5の約0.6Bq/cm3ということになります。


次に一番人間に大して影響が大きく,先ほどの表でもトリチウムの次に影響が大きく半減期も長いヨウ素について計算しましょう。ヨウ素131も影響が大きいように見えますが,半減期が8日と短いので,年間レベルでの影響を考えても意味がありません。なので,今回は129ヨウ素についてのみ計算します。


先ほどの表から129ヨウ素の排出量は4.30E+10Bqですので,トリチウムと同様に計算すると毎秒あたり約1400Bq放出されていることになります。この時点でこれ以上計算する意味があるのかどうか疑問になってくるわけですが,一応がんばってトリチウムの場合と同様に1Bqあたり50E-10Bqまで薄められたとして計算します。すると,7 μBq/cm3 = 0.000007 Bq/cm3まで薄められていることになります。つまり,実際に129ヨウ素の年摂取限度である9.1.E+03Bq/年分をこの水から摂取するためには1.3E+09cm3,つまり130万リットル飲まなくてはならないということになります。


ついでに,これらの値をシーベルトに換算してみましょう。ベクレルからシーベルトへの換算は(先ほどの表の中にも引用されているようなんですが)文部科学省で出している平成十二年科学技術庁告示第五号(放射線を放出する同位元素の数量等)の別表第1を使いました。


ということで,ここに掲載されているヨウ化メチル以外の化学形態における経口摂取した場合の実効線量係数1.10E-04mSv/Bqを用いて計算すると,0.000007 Bq/cm3 x 1.10E-04mSv/Bq = 7.7E-10 mSv/cm3 という値が出てきます。1立方メートル(=1,000リットル)分かき集めても,0.00077mSvにしかなりません。これは,自然界に通常存在する自然放射線量やその変動誤差とは,正直比べるのもばかばかしいくらいに小さな値です。


排出量の大きいトリチウムの場合でも,先ほどの計算結果から一番濃いところでも増加分は2.85Bq/cm3ですので,1Lあたりの増加分は2.85 Bq/cm3 x 1,000cm3 x 1.80E-08 mSV/Bq = 0.05μSv。つまり,365日毎日この海水を1Lずつ飲み続けてもトータルで0.019mSvにしかなりませんし,そもそもトリチウムが人体中に蓄積されないというのは,前述したとおりです。


もちろんこの値は再処理工場が申請通りの排出量で通常操業を行い,事故などを起こさなかった場合の計算値ですので,申請通りの操業を行っているのか,万が一の事故が起きていないか,事故が隠蔽されていないかどうかなどを監視する必要があります。


しかし,現在様々なサイトで紹介されている数字を元に計算しても,三陸沿岸が放射能で汚染されていると言うことはできません。あまつさえ,三陸産の魚介類がすでに放射能で汚染されているかのような文言を並べ立てるなど言語道断です。このような数字の遊びで,不要な危機感と全く不要な風評被害を増大させるようなやり方は決して許していてはいけないと思います。


本当は生体濃縮についても書こうかと思っていたのですが,長くなりすぎましたのでその辺は次回で。



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気になる化学リスク | 13:04:12 | Trackback(0) | Comments(10)
続・私たちの周りの放射能

自然放射線の話で忘れてはいけない国際線飛行機に搭乗した場合の話を忘れていました。


航空機に搭乗した場合,当然ですが日常生活では考えられないほど高いところにある一定時間滞在することになります。


宇宙から地球にやってくる宇宙線は,大気によって吸収されたり散乱されたりして地上に到達しておりますので,当然ながら高度がより高ければ高いほど「あまり弱められていない宇宙線」の影響にさらされることになります。こちらのページによれば1万メートル以上の高度では、地上(海面)の約150倍の宇宙線が降り注ぐそうなので,特に高度の高いところを長時間飛ぶ国際線の飛行機に搭乗した場合の影響はあまり無視するわけにはいきません。


特に非常に長時間このような環境にさらされる航空機の乗務員の場合は深刻で,国際線航空機に頻繁に搭乗しなくてはならないパイロットや客室乗務員が航空機搭乗時に受ける年間の被ばく線量は、一般公衆の線量限度として示されている1mSvを超える場合が考えられます。さらに航空機乗務員における皮膚がん(黒色腫と非黒色腫)は、いずれの種類についても死亡率や罹患率が一般集団と比べて高いことが知られています。


では,実際に国際線に搭乗するとどの程度の放射線を浴びることになるのでしょうか。それを計算してくれる便利なサイトをご紹介します。


JISCARD Mobile(放射線医学総合研究所)

こちらのサイトでは,PCや携帯電話から簡単に国際線に搭乗した場合に浴びる放射線量を計算してくれます。


ちなみに,2007年の7月に成田からロサンゼルスまで往復すると96μSvの放射線を浴びることになるそうです。μSvはなじみが薄いのでmSvに直すと,0.096mSv。つまり,六ヶ所村の再処理工場から発生が予想される放射線量,年間0.022ミリシーベルトの約4.4倍に当たる放射線を一往復の間に浴びてしまう計算になります。


客室乗務員の方の健康を守るために,もうちょっと何とかして欲しいものではありますが,航空機内で浴びる放射線で最も多いのが透過性の非常に高い中性子線であるということなので,防護策を講じるのもなかなか難しいのかもしれません。


このように,実は我々が生活している中には放射線が思った以上に満ちあふれています。放射線は確かに過剰に浴びれば危険なものではありますが,その性質や特性を理解することで無駄におびえたり忌避することを防ぐことができるのも事実です。


今回の地震で,原子力発電や再処理工場の是非がさらに問い直されている今,できるだけ正しい知識と理解の元に,我々に何ができるのか,何をなすべきなのかを議論していきたいものです。



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気になる化学リスク | 18:08:23 | Trackback(0) | Comments(0)
私たちの周りの放射能

解説を始める前に,まず知っておいていただかなくてはならない一番大切なことを説明するのを忘れていました。それは,


私たちは,常に一定レベル以上の放射線にさらされ続けている


ということです。


よく「どんなに微量の放射線でもさらされたくない」と訴える人たちがいますが,我々自身がすでに放射能を持っている(40カリウム由来などにより,約7,000Bqと言われています)という現実の前には,(気持ちはわかりますが)どう考えても無理な話です。


また,我々は太陽というこのあたり(一番近い恒星でも4.4光年離れている)では最大級の放射線発生源のごく近傍に居住せざるを得ませんので,太陽由来の放射線を大量に浴び続けています。その他にも,地殻内部に存在する放射性物質由来のものや,日常的に周りに存在するもの,あるいは食品などに含まれる放射性物質由来の放射線などを含めると,日本では年間で平均2.4mSvの放射線を浴びざるを得ません。世界では平均して年間2.4mSv,日本の場合平均0.99mSvの放射線を浴びざるを得ません(参考:全国の自然放射線量)。


もちろん太陽や地中に含まれるラドンなどの放射性物質から発生している放射線を浴びても,遺伝子が破壊されたり,突然変異といった形で子孫に変化が現れる可能性があります。これは,原発やその関連施設で発生する放射線と何の違いもありません。  


ただし,我々の体の中では放射線以外の影響でも日々遺伝子は破壊されていますので,ちょっとやそっとの細胞の遺伝子が破壊されたからと言って,そう簡単に影響が出ないような修復システムがあります。それに太陽によるエネルギー供給がなければ地球に生命は誕生しませんでしたし,突然変異がなければ進化もどのような形になっていたかわかりません。ですので,太陽からの自然放射線は,我々が地球上で生きていくために甘んじて受けざるを得ないリスクなのです。


また,この自然放射線は常に変化し続けています。


たとえば,日本の各県それぞれの自然放射線の平均値についてその最大値と最低値の差を見ると,その変動量は六カ所にある再処理施設から排出されるとされている放射線量0.022mSvより高い年間0.4mSvという値になっています(参考:全国の自然放射線量)。ですから,岐阜県の人は神奈川県の人よりも,六ヶ所村で再処理施設が稼働した場合の増分0.022mSvより20倍以上も強い放射線を浴びていることになりますが,神奈川県の人に比べ岐阜県の人たちに癌や白血病が発生する割合が極めて高い,などという話を聞いたことがありますでしょうか?つまり,このくらいの増減はその程度の影響しか与えないと言うことになのです。


次に年間の変動幅についても考えてみます。調べてみたのですが,ダイレクトに値を出しているようなところが見つけられませんでしたので,今回は静岡県浜岡原発の近くにある静岡県環境放射線監視センターのデータを元に計算してみました。


こちらでは過去十年間の実測値を元に,自然放射線の変動幅を表示しています。原発の近くではあることに難色を示される方もいるとは思いますが,いくら探してもこういう場所以外でまじめに環境放射線を測定している場所を見つけられませんでした。原発を運用している国や電力会社が放射線データを隠蔽している,という意見を仰る方が多いわりに,このような基礎データ集種活動を怠っている状況であると言うことは,大いなる反省点として今後検討すべき課題だと思います。


今求めたいのは年間の変動幅ですが,念のため浜岡原発からもっとも離れている大東支所の値を参考にします。こちらによると,だいたい80nGy/h(ナノグレイ毎時)という変動幅が観測されていることがわかります。 ですので,年間値に直してみると,80nGy/h x 24h x 365d = 0.70mGy/year ということになります。


グレイ(Gy)をシーベルト(Sv)に換算するには,放射線荷重係数と呼ばれる値をかけます。この値は放射線の種類により異なり,γ線やβ線は1,α線は20です。先ほどの場所での年間変動幅はγ線換算で0.7mSv,α線換算で14mSvとなりますので,±にするとそれぞれ±0.35mSvと±7mSvということになります。α線は空気中ではほとんど前に進めない貫通力の弱い放射線ですので,自然放射線の年間変動量を考える場合にはγ線由来の±0.35mSvとなります。これは先ほど示した日本全国の平均値の差(最大値 岐阜県と最低値 神奈川県の差 0.4mSv)とほぼ同じ値です。このことから,年間の通常変動幅だけでも,再処理工場から排出される予定の放射線量に対して15倍以上の値ですので,今年に比べて来年は再処理工場や原発の有無にかかわらずそのくらい余計に放射線を浴びなければいけない可能性があると言うことです。


このように我々は好むと好まざるとに関わらず,ある一定レベル以上の放射線にさらされ続けています。そして,地球上で普通に生活する以上これを避けることは事実上不可能です。


放射線と私たちの生活をきちんと考えるためには,この部分は確実に理解しなければいけません。


というわけで,次回こそ例の主張がデマだという理由について解説したいと思います。


*コメント欄にてご指摘を受けましたので,一部の値や表現について訂正・追記を行いました。(07/07/18 16:35)



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気になる化学リスク | 15:47:58 | Trackback(0) | Comments(3)
青森県産品は本当に放射能で汚染されているのか~風評被害を無くすために

私が参加しているmixiのコミュでも,盛んに「六ヶ所村再処理工場の稼働により,青森県産品が放射能に汚染されている」と主張する人たちがいます。こちらのページでも,声高にそのような主張がされており,アンケートに回答した方々のほとんどが青森県産品を「なるべく食べない」どころか「絶対に食べない」「食べたら死ぬ!」などと叫んでいます。


では本当に,青森県産品は放射能に汚染されているのでしょうか?そのように危険な農作物が我々に何も知らされずに普通に流通しているのでしょうか。


結論から先に言います。少なくとも現時点において


これらの主張はすべて悪質なデマです。


青森県産品から異常な放射能が検出されたという事実はありません。


もし,そのような報告があると主張される方がいらっしゃいましたら,ぜひコメント欄でもメールでもご連絡いただければと思います。現在まで私が調べた範囲においては,そのような異常事態,つまり健康被害が予想されるレベルの放射能が検出されたなどと言う事実は全く報告されていません。


また,先ほど紹介したページでなされていた主張も,あまりにも過度に不安を煽りすぎています。確かに六ヶ所の再処理工場で深刻なトラブルや事故が発生した場合にどんなことになるか,想像するだに恐ろしいことです。しかし,


起こりうる可能性のある被害と現実に起こっている被害は明確にわけて議論すべき


である,ということを強く提案したいと思います。意識的に行っているのか,それとも単に無配慮なだけなのかはわかりませんが,あまりにこの両者を混同した議論がまかり通りすぎていると思います。


このような議論の仕方では,現地で真面目に活動している方々にとって多大な不利益を生じさせるだけではなく,このような主張を続ける側にとっても「不誠実である」というレッテルを貼られるだけでなんのメリットもありません。


それでは,先ほどの主張の何が問題なのか。


長くなりますので,次回以降一つ一つ説明していきたいと思います。



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気になる化学リスク | 19:21:01 | Trackback(0) | Comments(0)
柏崎刈羽原発放射能漏れ事故について

このところ日本海側で立て続けに大きな地震が起きているわけですが,原発反対派と呼ばれる人々が危惧していたとおり,柏崎刈羽原子力発電所において地震の影響による放射能漏れ事故が発生したようです。


柏崎刈羽原子力発電所6号機の放射性物質の漏えいについて


このプレスリリースによりますと,「漏れた水の量は、約0.6リットル(3階、放射能量は約2.8×10ベクレル)、約0.9リットル(中3階、放射能量は約1.6×10ベクレル)」そして,この漏れた水が一般排水と混ざり海洋に投棄されてしまった分に関しても「放出された水の量は約1.2mで、放射能量は約6×10ベクレル」ということでしたので,それほど大規模な放射能漏れではなかったようです。


火災が発生したと言うことで,かなり驚いたのですが,そちらの方も原子炉とは全く関係ない変圧所で起きた火災と言うことで,放射能漏れとは全く関係がなかったということに安堵しました。これは,震度6クラスの地震を二度も喰らったこと,さらにその揺れが設計時に想定されたレベルを超えた振動であったと言う事実を考慮に入れれば,まさしく僥倖であったと言うべきではなかったかと思います。(もちろん原発関係者の事前の,あるいは日頃からの努力もあったのでしょうが)


火災発生直後の報道で,この変圧所は「原子炉を冷却するために必要な電気を外部から受け取るために必要な施設であり,ここが火災にあったと言うことは非常停止した原子炉が冷却されないことになるので非常に危険だ」ということを原子力情報資料室の方が熱く語っていたので心配していました。


しかし,実際のところあの施設は,原子力発電所で発生した電気の一部を内部で利用するための施設であり,また冷却に関しても施設内に二台設置されているディーゼル発電機が利用可能であること,また万が一その発電機に不備があった場合でも蒸気を利用したシステムにより,数時間の間なら制御できるようになっていることが後に報道され,原子力情報資料室の方が危惧されていたようなことは全くの杞憂であったことがわかり安堵しました。同時に,我々素人が考える程度の事態には結構備えられているんだな,と素直に感心しました。


ただ,火災についてはまだ原因などに関して詳しい発表がされていないようなのでコメントできませんが,水漏れに関しては使用済み核燃料冷却用プールの水が漏れたという話ですので,その辺はもうちょっと何とかならなかったのかと言う気になります。それほど放射能が強くないですし,あれだけ横揺れが激しいというのも想定外だったのかもしれませんが,ぜひ今後の教訓にしていただきたいところです。


さて,今回漏れた放射能ですが,推定60,000 Bq。一般紙の報道によりますと「ラドン温泉6リットル」分だそうですので,今回漏れ出した水の量が1.2mすなわち1,200Lですから,健康によいと評判のラドン温泉の200分の1しか放射能を持っていなかったと言うことになります。これだけうすければ,海水中に放出された瞬間にあっというまに拡散しバックグラウンド以下のレベルに落ち込むことが簡単に予想できますので,少なくとも今回の問題に関しては問題はなかったのだろうと思います。しかし,まだ漏出した核種についての情報がありませんので,そのあたりについての情報公開も強く求めていきたいところです。


さらに,せっかくのリアルタイムモニタリングシステムが稼働していなかったり,(こちらの不勉強もあるわけですが)原子力発電所内部の構造が知られていないために無用な不安をかきたてたり(変圧所がどういう機能を持っているのかについて,かなり専門家に近い人もわかっていなかったわけで)という部分もあったので,その辺の広報活動にも今後力を割いていただきたいと思うわけです。


特に,リアルタイムモニタリングシステムに関しては,かつて東海村でおきた臨界事故の際には,周辺における放射線量の異常な状況が逐一報告され,ある意味公開情報の信用度を上げる一助にもなっていたわけです。こういう「いざ」という時に機能しないのでは,一般市民の信頼度を上げることができません。現在(7/17 16:00)もまだ復旧せず一時間に一回ずつPDFファイルの形で測定値が公表されるというスタイルになったままです。信頼回復のためにも,一刻も早いシステムの復旧と原因,もしくは細かい状況の発表を希望いたします。



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気になる化学リスク | 16:15:01 | Trackback(0) | Comments(0)
放射線に関する数字を読む~その強さをどう表すか

ちょうど今現在mixiの某コミュでも意見を書き込んでいる最中だったりする訳なんですが,様々な測定データをどう判断するかという点について,放射線がらみの話は非常に興味深い事例だったりします。


放射線がらみの数字は,どうしてこう意味を誤解されやすいのか。そして,間違った解釈ので得られた結論が一人歩きしやすいのか。問題点は様々ある訳なんですが,ざっと考えてみると以下のようなことが原因じゃないかと思います。



  1. 社会的に関心が高い割に,放射線に関する正確な知識が広がっていない

  2. 出てくるデータが,単位の種類がやたらに多くてわかりにくい

  3. 政治的・思想的な意図でデータの持つ意図をゆがめようとする勢力が多い


今ちょうど書き込んでいるトピックでも出てきた話題ですが,「青森県産(厳密には六ヶ所村近辺)の米は,再処理工場稼働の影響により,最大通常の2倍の値となる1kg辺り90ベクレル(Bq)の放射能を持つ可能性がある。」ということを青森県側が公式に公表しており,これを根拠に「青森県産の農作物は非常に危険だ」と叫んでいる人たちがたくさんいます。


しかし,実際この90 Bqと言う値は非常に小さいもので,たとえば国内で普通に栽培されているほうれん草1kgは,天然の40カリウム由来の放射能を200 Bq持ちます。また,干し昆布に至ってはやはり40カリウム由来の放射能を2000 Bqも持っています。 (参考:http://atomica.nucpal.gr.jp/atomica/pict/09/09010405/02.gif


しかし,実はそもそも汚染核種がなんなのかと言う議論なしにこんなことを言ってもなんの意味もありません。1 Bqのトリチウムと,1 Bqのプルトニウムの出す放射線が人体に与える影響は大きく違います。


ということで,とりあえず今回はこのベクレルをはじめとする放射線関係の単位の意味や,用語についてごくごく基本的な部分について解説をしようと思います。


まず,先ほどから何度か出てきたベクレル(Bq)という単位は,放射性元素が一秒間に何回放射壊変を起こすかを表す時に使う単位です。「放射能が強い」とか「弱い」というのは,その放射性物質が放射線を単位時間あたりにどのくらい放出するかということを表しますので,そのような議論をするときにのみBqは意味を持ちます。

しかし,放射壊変と呼ばれる物理現象によって発生する放射線は放射性元素の種類によって持っているエネルギーが違います。放射改変によって発生する放射線にはα線とβ線,γ線などがありますが,実は同じγ線やβ線でも発生源となる放射性元素の種類によって持っているエネルギーが違います。当然,そのエネルギーの量によって人体などに与える影響は大きく異なってきます。

もちろんこのような放射線の持つエネルギーの量を表す単位も当然あります。


放射線が物質に当たったとき,どのくらいのエネルギー(線量)がその物質に与えられたかを表す単位がグレイ(Gy)と呼ばれる単位です。これは1kgの物質にどのくらいのエネルギーを与えたかということを示す単位です。なので,たとえばトリチウムの場合,半減期が短く短時間に激しく放射壊変を行うのでBqとしては大きい値を持ちますが,出てくるγ線は皮膚すら通過できないような極めて微弱なものなので,Gyとして評価すると非常に小さいものになります。

これとは逆に,半減期が長く放射壞変がそれほど頻繁に行われなくてもエネルギーの高い放射線を放出するような放射性元素の場合には,Bqの値が小さくてもGyとして大きな値を持つ場合があります。なので,本来人体への影響を考える場合に気にしなければいけないのは,このようなタイプの放射性元素の方です。

もちろん一般的にエネルギーが強い方が人体に対するダメージが強くなります。また,人体の内部に取り込まれた放射性元素による内部被曝の影響などを考えると,貫通力は弱いがエネルギーの強いα線と貫通力は強いがエネルギーはそれほど強くないγ線では人体に与える影響の仕方が全く異なります。そのため,人体への影響を考えるためには,その辺も考慮しなくてはなりません。


そこで,「人間に与えるダメージを数値的に表現する」ためだけに作られたのがシーベルト(Sv)という単位です。SvはGyに放射線の種類により異なる放射線荷重係数と呼ばれるものをかけて算出されます。

ちなみにこの放射線荷重係数は,内部被曝をした場合にのみ必要な係数なので,外部被曝の場合にはこの係数はすべて「1」となります。しかし,通常Svで値が出されている場合にはだいたい放射線荷重係数がかけられた内部被爆時の値が用いられるのが一般的な使い方のようです。

放射線を表す単位はいろいろあるので混乱しやすく,目的に適した値を使って考えないといらぬ誤解をしてしまうことになります。

ですから,人体に対する影響を考えるために放射線の強さを評価する時には,できる限り「シーベルト」で考え,比較することが大切だと思います。


次回は,冒頭で話題にした「米1 kgが90 Bqの放射能を持つ可能性がある」ということが,実際人間の体にどのような影響を与えるのかについて,ちょっとした計算例を示しながらお話ししようと思います。



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気になる化学リスク | 17:40:52 | Trackback(1) | Comments(0)
基準値の○倍!:食品安全基準の決め方
お約束通り,ポジティブリスト制における安全基準の決め方を説明しようと思ったのですが,ちょうどタイムリーなことにこんなニュースが出てきていたのでご紹介。 



残留農薬:輸入食品の違反8倍 新制度導入から1年(毎日新聞)



(前略)厚生労働省の統計によると、新制度導入の翌月の06年6月から今年5月までの間、輸入食品の検査で、残留農薬検出による食品衛生法違反で廃棄などの措置が取られたのは761件。前年同期の91件から670件増えた。生産国は26カ国・地域に上り、うち中国が250件で最多。ベトナム(143件)▽エクアドル(93件)▽ガーナ(77件)▽台湾(47件)と続く。(後略)




今朝の朝刊の見出しでは「中国・ベトナム産多く」とか書かれていましたが,ほぼダブルスコアの大差がついているにもかかわらず同列に置かれたベトナムがちょっと気の毒です。でも,輸入される絶対量を考えれば,ちょっと頻度が高そうなベトナム産にも注意が必要かもしれません。


また,このようなニュースもありました。




 


中国産ウナギ:米での抗菌剤検出で丑の日前に販売減(毎日新聞)



禁止されている抗菌剤が検出されたとして米食品医薬品局(FDA)が中国産のウナギなどを輸入規制した影響が、日本市場にも広がっている。一部のスーパーでは先月28日のFDAの発表後、国産も含めたウナギの販売が減少。土用の丑(うし)の日(今月30日)を前に日本鰻輸入組合は危機感を強めており、「日本に輸入される中国産ウナギは安全」と訴える緊急記者会見を10日午後に開く。(後略) 




この記事中でも「今回米国で検出され問題となったのは抗菌剤のマラカイトグリーン。日本では05年に検出されたため既に中国産ウナギの全貨物を検査対象にしている。06年5月には残留農薬の規制も強化された(ポジティブリスト制度)。」と書かれているポジティブリスト制ですが,前回のエントリでもご紹介したとおり,この制度のおかげで,私たちはこのマラカイトグリーンのようなよく知られた禁止薬物だけではなく,国内での使用基準が制定されていないようなマイナーな薬物などによる危険からも防がれておりいます。


しかし,この制度もやはり万能というわけではなく時々市場に出てきた商品からも禁止薬物が検出され「規制基準の○倍量が検出された」などと,ショッキングな見出しが出てくることがあります。先日も「給食に使うキクラゲから基準値の2倍量の農薬が検出された」という報道が出たばかりです。このような報道が出たとき,我々はどう反応すべきでしょうか。


基準値の2倍」というキーワードをどう理解すべきか,ポイントはそこにあります。


そのためには,まずこの「基準値」がどのように設定されているかを理解しなければいけません。


現在ポジティブリスト制における基準値は,国際的に集められた研究データを元に算出された一日の許容暴露量(ADI)を基準に定められており,だいたいADIの80%以下となる値に設定されているようです。(参考資料:食品に残留する農薬等に関するポジティブリスト制度における暫定基準の設定について


このADIという値は,「一生涯摂取し続けても健康被害をもたらさない量」として設定されています。(参考資料:ADIの考え方)つまり,この値以下の量を含む食品を毎日摂取し続けても健康には問題ないということになります。ですから,この基準をたかだか数倍程度オーバーしたものを,数回食べた程度では健康に影響はないわけです。


もちろん,だからといって日常的にこの基準値をオーバーするような食品の流通を認めてしまえば健康被害に繋がるおそれが大きくなります。ですから,基準値が守られているかどうか厳しく検査し,各関連業者にも基準値を守るように指導しているわけです。


我々の健康を守るために,様々なものについて「基準値」というものが設定されており,その基準値を超えたものに対しては,罰則を与えるなどの指導が行われています。しかし,この基準値というものは普通はかなり安全側に振った値が設定されていますので,極端な話,違反が即座に発見されて指導されていることを前提とすれば,基準値の数百倍とか数千倍を超えるような違反でもない限り直接的に健康被害に繋がることはありません。ですから,実は


基準値を数倍超えた程度なら怖がる必要はない


のです。でも,重ねて言いますが,「怖がらなくても良い」のと,「違反をしても良い」「違反を見逃しても良い」というのはイコールではないことは忘れてはいけません。基準を守らないことと,基準値を超えたものを怖がらないことは違うことなのです。


しかし,我々が報道などを目にした際に「基準値の○倍」あるいは「通常の○倍」などと言われると,やはりドキッとしてしまいます。そして,困ったことにこの「ドキッ」としてしまうことを利用した悪質なプロパガンダが日常的に行われているのも事実であり,それによる風評被害が後を絶たないのも悲しい事実だったりします。


次回は,その辺についてお話をしようかと思います。



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気になる化学リスク | 18:17:12 | Trackback(1) | Comments(0)
食の安全はどう守られているか

前々回のエントリでも書いたとおり,毒入りキャットフード事件や工業用成分入りシロップ事件などを契機に,中国産製品の安全性が世界規模で疑問視されるようになってきました。


また,当初大部分の製品には問題ないと抗弁していた中国政府も「約2割の製品から問題が見つかった」ことを明らかにせざるを得ない状況になってきています。


しかし,こちらのブログで書かれているような状況を見るにつけ,「本当に8割も合格しているのか?」という疑念は捨てきれません。


ちなみに輸入作物についての安全検査の結果が公表されているのがこちらのページです。



厚生労働省:輸入食品監視業務ホームページ



こちらを見ますと,中国産の製品以外の国の製品も意外と多く引っかかっているのがわかります。それでもやはり(この辺は輸入量の多寡による部分はあるのかもしれませんが)中国製品が目立ちます。スーパーでよく見かける野菜,うなぎなどは本当に大丈夫なのか。とても心配になってきます。


ところで,これらの輸入食品はどういう基準で規制されているのでしょうか。


現在日本では,これらの食品に残留している化学物質については,輸入品・国産品にかかわらず全てにおいて「ポジティブリスト制」と呼ばれる制度を使って規制を行っています。


ポジティブリスト制というのは昨年の5月29日から適用されている新しい規制制度で,それ以前は「禁止薬物のリスト」が作成され,これらの化合物が基準値以上検出された場合に処罰されるという制度だったのですが,ポジティブリスト制においては「使用が許可される化合物」の名前と許容量のリストが作成され,それ以外のものが一定以上検出された場合,あるいは許可化合物においてもその許容量以上が検出された場合に処罰が行われます。


ポジティブリスト制の肝となる思想は「疑わしきは罰する」というものです。現在のところ,基本的にこれが世界の流れとなっており,安全性が確認されたもの以外,食品に一定以上の量が混入していることは許されていません。


では,このポジティブリスト制において用いられている安全基準はどのようにして求められているのでしょうか。その辺については,また次回のお話にいたします。



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気になる化学リスク | 21:05:53 | Trackback(0) | Comments(0)
続・化学物質によりガンは増えている?

次の記事を準備するためにごちゃごちゃ調べていたら,以前の記事で紹介したデータよりももっとわかりやすいグラフが出ていたのでご紹介。



三大死因(悪性新生物、心疾患、脳血管疾患)による死亡の状況
       (―平成17年都道府県別年齢調整死亡率の概況― より)



ここの図7-1を見ると,前の記事で私がぐちゃぐちゃ言っていたことが一目でよくわかるんじゃないかと思います。この統計データを見る限り,日本の医療はガンすら克服し始めています。


統計って,きちんと見ないと間違った情報を読み出してしまう恐ろしいものなんですね。特に,わざと間違った解釈へとミスリードして,自分の主張を無理矢理通そうとする人たちもいるので最新の注意が必要です。


幸い,現在は高度情報化社会となっておりますので,自分で一次情報に当たることができるようになっています。プロパガンダに流されず,自分の手で情報を精査する心構えを持つだけで,いろんなものが見えてきます。


ほんと,今の日本ってすごい平和で豊かな社会だと思いますよ。世界中で,日本が一般の人が住みにくい強者だけが楽しい国だ,なんて評価をしているのはたぶん日本人だけです。


贅沢を言えばきりがないですが,「足るを知る」ことこそ平和で安定した社会を築くために一番必要なことなんじゃないでしょうか。



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気になる化学リスク | 16:11:00 | Trackback(0) | Comments(0)
隣は何をする人ぞ……

だいぶ間が開いてしまいましたが,以前に予告しておいた「ちょっとしゃれにならない事態が起こっていそうな国」の話をしましょう。 少し前のニュース記事なんですが,まずこちらをご覧ください。


 中国、がん死因1位 環境汚染が影響?



中国でがん患者が急増している。衛生省が発表した統計によると、昨年の中国人の死亡原因で、がんが初めて脳血管疾病をこえて1位となった。都市部での死亡原因はがんが27・3%、農村でも25・1%と全体の4分の1以上。背景には深刻な環境汚染などが指摘されている。



前々回の話で,日本の死因の第一位がここ何年もガン(悪性新生物)であることをお伝えし,その原因に化学物質による汚染などがあげられることが多いが,実際には急速に進む高齢化と,ガン以外ではそう簡単に死ななくなった医療の進歩があるとしました。


では,中国でも似たような状況になっているのでしょうか。記事中でも「深刻な環境汚染が原因」などと書かれていますが,こちらもやはり虚報なのでしょうか。


こちらのページは,世界各国の平均寿命とその国の所得水準(人口1人あたりGDP)との関係をグラフにしたものです。おおむね所得水準が高いほど,平均寿命も高いように見えますが,中国は所得水準の割には高い平均寿命を持っていると言えそうです。これは,このページにも書かれていますが,共産主義国の特徴的な姿とも言えるでしょう。


ここだけ見れば,確かに中国でも高齢化が進んで日本と同じような状況になっているように思えますが,今度はこちらのページをご覧ください。こちらは中国と日本の人口ピラミッドを比較したものです。一目で違いがわかると思いますが,比較的高い平均寿命を持っている中国ですが,65歳以上の人口比率はわずか7%程度で,同時期の日本と比べても10%以上小さな値となっています。


つまりこれはどういうことかと言いますと,「本来高齢者の病気であるガンが比較的若い世代でも発生している可能性が高い」という推論がたてられるということです。


特に,都市部と比較すると医療体制が悪く,平均寿命も短いことが予想される農村部においても,都市部にやや低い程度の死亡率を示していること,こちらのブログなどでも紹介されているとおりあちらの食物への安全や環境汚染に対する認識の甘さ,対策の悪さなどを考えると,「限りなくクロに近い」のではないかと考えざるを得なさそうです。


最近ではアメリカでは毒物ペットフード騒ぎに端を発し,中国製品に対する警戒感が高まっており,それに併行して禁止成分の検出も増加しているようです。


現在,日本でも野菜をはじめとする中国製食材の輸入量は非常に大きなものとなっています。スーパーの野菜コーナーも中国産野菜が多くを占めていると思いますし,外食産業で用いられている食材の多くも中国産の安い食材が占めていることは容易に想像できます。


香港あたりでは,「徹底的に水で洗浄してから使うこと。」と行政から通達が出ているほど信頼性の低い中国産野菜。日本における現状はどうなっているんでしょうか。次回はその辺についてお話ししようかと思います。


 



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気になる化学リスク | 16:51:53 | Trackback(0) | Comments(0)

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