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ぷろどおむ

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元サッカー少年。今はしがない化学屋です。

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BSEはどのくらい怖いのか

当初の予定ではラウリル硫酸ナトリウムの話をしようかと思っていたんですが,リスクマネジメントにより近い話と言うことで,BSEがらみの話を先にすることにしました。


さて,もはやあまり話題に上ることもなくなってきたBSEの話題ですが,BSE発祥の地イギリスにおいてBSE牛を食べたことが原因で変異性クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)を発症して亡くなった方ってどのくらいいるかご存じですか?


参考までに現在まで日本では32頭しか確認されていないBSE牛が,イギリスでは184,508頭(参考:http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/bse/count.html)も確認されています。さすがに発祥の地だけあって,イギリスは問答無用のぶっちぎりで世界No.1のBSE大国です。しかも,イギリスでは伝統的に危険部位の代表格である牛の脳みそを食べる食文化がありましたので,BSE牛の脳なども当然のように食べられていたわけですから,BSEが猛威をふるい始めた前後における危険度は今の日本とはとても比較になりません。


という事実をふまえた上で,再度質問です。


さて,イギリスでは何人の方がvCJDで亡くなっているでしょうか。数千人?数万人?数十万人????


正解は


161人(2007年6月4日現在)です。


驚きました?そう,実はものすごく少ないんです(参考:http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/bse/cjd_uk2.html)。なぜかマスコミではこういう情報は全く報道されないんですね。とても不思議です。なぜなんでしょう?こうやって公式の統計記録までwebで公開(しかも毎月データが更新されてます)されているんですけどね。


同時期に散発的CJD,つまりこれまでも知られてきた原因不明のクロイツフェルト・ヤコブ病で亡くなった方の数が705人(1995~2007.6月)いらっしゃること,2006年のデータだけを見ると散発的CJDで亡くなった方が60人に対し,vCJDで亡くなった方が5人しかいないと言うことを考えると,vCJDだけにおびえたり,注意を払ったりすることにはあまり意味がなさそうです。


また,vCJDで亡くなった方の年間変動数を見ると明らかにピークが過ぎ去っていますので,今後数十年先までを考えても,BSE牛がらみで命を落とされる方は200人前後ではないかと推測できます。


イギリスではBSE牛の危険が認識されるまで,市場に相当数のBSE牛が混入していた(当然危険部位という概念も当時はなかったわけですし)ようですが,日本では発生したBSE牛が市場に出回ったという報告はなく,さらに現在は輸入品も含めて危険部位が除去されています。もちろん人間の関わる仕事には必ずエラーが含まれていますが,イギリスの人口は日本の半分の約6千万人,BSE牛の発生数は約5,800倍。そしてイギリスにおけるこの12年間でのvCJDによる死亡者数は約160人と言うことを考えると,今後日本においてvCJD患者が発生する確率は極めて低いと考えられます。


BSE発祥の地,イギリスでは「肉骨粉の飼料への配合禁止」「危険部位の除去」の二点を軸にした対策を講じることで,BSEの発生およびvCJDの発生を抑制することに成功しています。つまり,いまだBSEからvCJDへの移行システムは解明されてはいませんが,現時点でその対策法は確立していると言っても過言ではありません。


というところで,強引にリスクマネジメントに話を戻しますと,BSEがらみのハザードは「vCJD発症により死に至る」という非常に大きなものです。しかし,前述したとおりその発生確率は極めて低いものであることが確かめられていますので,全体としてのリスクは非常に小さいものであると言えます。


ちなみに,過去に一応今後日本においてどの程度の被害が発生するかについて極めておおざっぱに計算された例があります(http://www.fsc.go.jp/senmon/prion/p-dai12/prion12-siryou.pdf)。大ざっぱとはいえ,この計算ではイギリスの変異型CJD病の患者が将来最終的に5000人まで増えたと仮定していますので,この計算が行われた平成16年以降のvCJD患者数の推移も含めて考えると,ちょっと到達し得ないほど悲観的な予測の元に計算されています。そして,このような極めて悲観的な予測の元に行われた計算でも,日本全人口に対する将来的な発症者数の推定値は「0.891人」です。つまり,将来に渡って日本国内からBSE由来によるvCJD患者は一人発生するかしないか程度のリスクしかない,というわけです。
#ちなみに私が勝手に予測した「200人」という数字を使うと,0.036人です。


正直これほどリスクが小さい問題だったと言うことが,意外だった方は多いんじゃないでしょうか?


BSE問題は,たとえマスコミやなんかでものすごく騒がれている問題でも,よくよく調べてみるとそんなに気にすることはない問題だったということがよくわかる典型的な例です。


断片的な情報に惑わされるのではなく,きちんとした情報と確定している事実を元に考えることで,無駄なコストを払うことを避けることが,リスクマネジメントがもたらす大きな利益です。


有限なコストをいかに効率よく配分して全体のリスクを下げるか。リスクの低い項目にかけるコストを減らすことにより,よりリスクの高い項目にかけるコストを増やすのはリスクマネジメントの基本です。そのためには,より正確にリスクを評価することが絶対に必要です。


ちなみに私は,安いアメリカ産牛肉を避けて国産牛を奮発するよりも,中国産野菜を避けて国内産の野菜を購入する方がコストの有効利用だと思っていたりしますが,その辺の話はまた後ほど。


参考: BSE及びvCJDについて(食品安全委員会)



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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる化学リスク | 17:48:57 | Trackback(0) | Comments(1)

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